確定拠出年金(iDeCo、企業型)掛金の限度額と決め方・変更方法
確定拠出年金(個人型iDeCo、企業型)の掛金は、属性(自営業、会社員、公務員、専業主婦)ごとに限度額がいくらか決まっています。
■この記事で学べること
【1】確定拠出年金(個人型iDeCo、企業型)の掛金の限度額
【2】掛金の所得控除
【3】掛金の変更方法とタイミング
【4】掛金支払方法の年単位化の追加
【5】掛金の決め方と考え方
iDeCo(個人型)、企業型の確定拠出年金の掛金について、その上限や限度額、実際の平均、変更方法、掛け金の決め方についてFPがまとめます。
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この記事のもくじ
確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)の掛金の限度額はいくら?
確定拠出年金には、個人型(iDeCo)と企業型がありますが、個人型の掛金は加入者負担、企業型は勤務先で退職金の位置付けとして会社負担になっているのが一般的です。
確定拠出年金の掛金は加入者すべて一律ではないので、自分の場合は掛金の上限額がいくらなのか知っておく必要があります。
また転職などで勤務先や仕事が変われば、掛金の上限額も変更となります。
実際には国民年金の第何号の被保険者(第1号被保険者~第3号被保険者)かで属性をみます。
各属性ごとに確定拠出年金の掛金の限度額の詳細についてみていきましょう。
第1号被保険者(自営業、フリーランス)の掛金限度額
個人型 月々68,000円
※国民年金基金に加入している場合は、確定拠出年金と合算して月々68,000円
第2号被保険者(会社員4パターン、公務員)の掛金限度額
会社員の場合、勤務先の企業型の確定拠出年金、そしてそれ以外の企業年金(確定給付企業年金など)の導入状況によって、限度額が変わります。
会社員①(企業型の確定拠出年金・無し、確定給付企業年金等・無し)
個人型(iDeCo) 月々23,000円
会社員②(企業型の確定拠出年金・有り、確定給付企業年金等・無し)
企業型 月々55,000円
※勤務先で規約変更をすればマッチング拠出か個人型(月々2万円)上乗せ可能
会社員③(企業型の確定拠出年金・有り、確定給付企業年金等・有り)
企業型 月々27,500円
※勤務先で規約変更をすればマッチング拠出か個人型(月々1.2万円)上乗せ可能
会社員④(企業型の確定拠出年金・無し、確定給付企業年金等・有り)
個人型(iDeCo) 月々12,000円
注意が必要なのは企業型の場合、掛金の上限額は月々55,000円か27,500円の2パターンです。
掛金は会社負担のケースがほとんどですが、これはあくまで上限、限度額です。
当然この上限額一般まで会社負担していないケースも多いので、枠が余ることもあります。
その場合には会社がさらに制度を導入することで、後で説明するマッチング拠出かiDeCoに上乗せで掛金を支払えるケースもあります。
公務員
個人型(iDeCo) 月々12,000円
第3号被保険者(専業主婦等)の掛金
個人型(iDeCo) 月々23,000円
※専業主婦の場合、掛金を支払っている間の所得控除のメリットはほとんどありませんので注意してください。
その分受取り時には課税の心配が少なくなります。
確定拠出年金の掛金の下限はいくら?
個人型の確定拠出年金(iDeCo)については、掛金の下限は5,000円です(1,000円単位で決定)。
企業型の確定拠出年金の場合はその企業の規約によって変わってきます。
そのため企業型の確定拠出年金についての掛金は、加入者自身では掛金のコントロールができません。
但し勤務先の会社が企業型に上乗せするかたちでマッチング拠出あるいはiDeCoのいずれかを導入した場合には、任意加入で掛金は自己負担です。
その場合には掛金をいくら支払うかは自分で決定できます(上限額あり)。
確定拠出年金(個人型iDeCo)の掛金の平均はいくら?
iDeCoは自分で掛金を支払うため、家計で可能な範囲になるとはいっても他の人がどのくらい支払っているか平均などが気になるでしょう。
2017年1月にiDeCoの加入対象者が拡充、その後確定拠出年金の掛金の平均(個人型iDeCo)は次のような状況になっています。
【加入者の毎月の掛金額・平均】
◆第1号平均 | 27,329円 |
◆第2号平均 | 14,172円 |
うち企業年金無 | 16,161円 |
うち企業年金有 | 10,605円 |
うち共済組合員 | 10,986円 |
◆第3号平均 | 15,437円 |
全体平均 | 15,868円 |
出典:iDeCo公式の統計より筆者作成 2019年1月末現在
第1号加入者(自営業・フリーランス):iDeCo掛金の平均
第1号の人は公的年金(国民年金のみ)の上乗せが少ないこともあり、掛金の平均が一番高くなっています(27,320円)。
余談ですが自営業や中小零細企業の経営者などの場合、小規模企業共済というのも考えてみてください。
第2号加入者(会社員・公務員):iDeCo掛金の平均
会社員・会社役員
これは個人型iDeCoの統計ですから、会社員の場合、普通に加入できる人(企業年金がない人)と会社の制度導入状況(企業年金がある人)によって加入の有無が分かれます。
それぞれ月16,161円、月10,605円です。
企業年金がないケースは公的年金(国民年金+厚生年金)の上乗せがないので、掛金を高めに設定する人も自然に多くなります。
なお企業型の確定拠出年金の上乗せは個人型iDeCoとマッチング拠出の選択適用になります(会社が選択)。
企業年金連合会の確定拠出年金実態調査結果(2017(平成29)年度決算)によると、加入者の毎月の掛金(加入者の自費)の平均は7,636円です。
なお、詳細な分布は次のとおりです。
- 5,000円未満 25.3%
- 5,000円~10,000円未満 50.7%
- 10,000円~15,000円未満 19.7%
- 15,000円~20,000円未満 3.0%
- 20,000円以上 1.3%
公務員
公務員の場合、掛金の限度額は12,000円です(公務員の場合はiDeCo)。
公務員も世代によって年金制度が大きく変わっていますから、若い世代ほど必要性が高い制度です。
なお公務員の平均は月10,986円という結果になりました。上限額を考慮すると比較的これに近い金額で設定しているようです。
第3号被保険者(主婦):iDeCo掛金の平均
第3号は専業主婦や配偶者の扶養に入っているパート主婦などです。加入はiDeCoになりますが、掛金の平均は月15,437円になりました。
確定拠出年金の特徴の一つは、専業主婦でも自分専用の年金口座(配偶者とは別に区分される)が持てることです。
また資産形成という意味合いからも余裕がある人は掛金を増やすというのは他の属性の人と同様です。
自分で負担した掛金は所得控除の対象で税金がお得
確定拠出年金の掛金を自分で負担した場合には、「小規模企業年金等掛金控除」として所得控除の対象となります。
企業型の場合は会社負担のケースが多いので対象外ですが、企業型の上乗せでマッチング拠出やiDeCoを導入した場合には所得控除の対象です。
自営業やフリーランス、公務員などのようにiDeCoに加入している場合には、掛金は自費になるためこちらも全額が所得控除されます。
所得から差し引ける金額は、掛金の全額です。
小難しいルールや計算をしませんので、自営業者が68,000円の掛金を毎月支払えば、年間816,000円を所得から引いてよいということです。
わかりやすいですね。
確定拠出年金(個人型iDeCo)掛金の変更方法と変更のタイミング、停止の可否
確定拠出年金は、年金資産を作る制度です。
安易に資金の引き出しができると資産形成ができないため、一度はじめると原則として途中で資金の引出をすることができません。
しかし加入者個人の資産として保護もされますので、借金の担保にされることもありませんし、他人に年金資産を譲渡したり、差し押さえを受けることもありません。
企業型では規約で掛金が決められていますので、変更にするには規約の変更から必要です。
そのため加入者個人で掛金の変更をするということはありません。
なお、企業型の加入者が転退職しても年金の引き出しが原則できないことには変わりありません。
60歳までは資産を引き出すことはできませんが、iDeCoであれば上限・限度額の範囲内で掛金を引上げたり、引下げたり変更することができます。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金変更方法
個人型iDeCoの確定拠出年金の掛金は変更可能です。iDeCoなら月々5,000円までは掛金を引き下げることができます。
長い積立期間中には家計が厳しいときもあるでしょうから、掛金が変更できることを覚えておいてどうしても厳しければ柔軟に対応してください。
掛金の変更方法は、加入手続きをした金融機関から加入者掛金額変更届を取り付けて手続きします。
掛金変更にはタイミングがある
掛金額の変更は年に1回(1月-12月)可能です。転職などで種別が変わる場合には別の扱いになりますが、複数回変更することはできません。
一度変更するとしばらく待たなければならないので、その意味では掛金変更のタイミングに注意してください。
掛金の変更をしないで停止することはできる?
確定拠出年金は、一度はじめて加入者になると解約することができません。その代わり掛金を変更して減額したり、掛金の支払いを停止することができます。
その場合には掛金の支払いをせずにこれまでの運用のみを行います(加入者から運用指図者に変わります)。
確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)の掛金が年単位化に改正(2018年1月~)
確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)の掛金が年単位化とは?
各属性ごとの掛金の上限・限度額はすでに解説済みですが、実は2018年からこの限度額が月ではなく年単位化もされています。
例えば専業主婦の掛金の上限が月々23,000円だったものが年間276,000円を基準にすることになったということです。
毎月23,000円支払うのが難しい人でもボーナスや繁忙期に売上が上がる人にとっては年単位になっている方が効率的に掛金・限度額一杯まで利用できるわけです。
納付方法の幅が広がり極端な話ですが、一括払いも可能です。なお企業型の場合には、勤務先の決定や規定に基づきます。
掛金の年単位化、メリット・デメリット
確定拠出年金の掛金が年単位化されたことは選択肢が増えるのでいいことですが、メリット・デメリットは理解しておかなければなりません。
- 月々の掛金を平均して支払えない人は上限・限度額をフルに利用しやすい
- 支払い回数を少なくすると事務コストを減らせる
※iDeCoでは毎月最低171円の事務手数料が必要ですが、このうち105円の収納手数料を削減できる為
- 支払い回数を少なくすると、資産運用における分散投資(ドルコスト平均法)の効果が薄れる
考え方としては月々支払うかたちにしたまま、限度額を使い切れない部分をボーナス月や収入の多い月の掛金を増やすことを検討する方向でいいでしょう。
確定拠出年金の掛金はいつまで支払う?
確定拠出年金の掛金は60歳まで支払います。つまり原則60歳を過ぎると掛金を支払いたくても支払うことができないのです。
この段階で加入から運用指図者(運用だけする加入者のこと)となります。
しかし確定拠出年金の加入期間が最低10年はないと年金の受給ができません。
加入期間が満たない場合には、その期間に応じて例えば8年以上10年未満は61歳から、1ヶ月以上2年未満は65歳から年金受給となっています。
50歳以降から確定拠出年金の加入を検討する場合には、こうしたことも覚えておきましょう。
※確定した事項ではありませんが、2018年8月末に厚生労働省が確定拠出年金の掛金納付を現在の60歳までから延長する検討を始めたという報道がありました。
今後どのような動きがでてくるか分かりませんが、このような動きもある程度の認識は持っておいてください。
確定拠出年金の掛金の決め方
確定拠出年金の掛金はここまで見てきたようにそれぞれ違います。掛金について自分でコントロールのできるところとそうでないところがあります。
自分の加入する確定拠出年金の特性を活かせる掛金について考えてみましょう。
企業型の確定拠出年金の加入者(上乗せ加入を利用する)
企業型の場合、労使合意のもとに加入のルールが決まってしまうため自分でコントロールできる部分はあまりありません。
但し企業型の掛金の上限(月5.5万円or月2.75万円)目一杯利用していないケースがほとんどです。
規約の改正をしてマッチング拠出か個人型のいずれかに選択で上乗せ加入することができることがあります。
上乗せ加入(マッチング拠出か個人型)は任意加入ですが、会社負担で加入している企業型と月々の同額までは上限を超えなければ加入できます。
企業型の掛金がベースになりますので、これに近い金額まで負担が可能かが企業型に上乗せするときの掛金の決め方のベースになります。
個人型(iDCo)の確定拠出年金加入者
個人型の場合には、掛金はすべて自分の裁量で決めることができます。
そもそも確定拠出年金をはじめるかどうか迷っている人は月々5,000円でもいいのではじめてみましょう。
できれば1万円くらいの掛金は支払った方が資産は殖やしやすいのでそれも参考にしてください。
例えば大卒で60歳までの37年間加入する場合
- 月々5千円 ×12ヶ月×37年間=222万円
- 月々1万円 ×12ヶ月×37年間=444万円
- 月々1.4万円×12ヶ月×37年間=621万円
- 月々6.8万円×12ヶ月×37年間=3019.2万円
確定拠出年金の掛金を単純に年数で計算すると、運用利率を無視しても元金部分だけでこれだけ変わります。
いくら資産運用で殖やせるかは考慮していませんし、何で運用するかも個々で違いますから簡単に比較はできません。
但し長い期間に渡って資産の積み上げをしていくとこれだけ違うということは感覚的なもので構いませんので理解してください。
さらに運用してでた利益は税金がかからないため、そのままさらに運用に回すことができます。
家計に無理のない範囲でできるだけ頑張ってみて、厳しいなら後で掛金の変更もありです。
まとめ
確定拠出年金(iDeCo、企業型)掛金の限度額と決め方・変更方法、についていかがでしたか。
企業型の加入者は運用する商品以外は自分で選べることがあまりありません。また個人型の加入者は、選べることが多いので最初に手間がかかります。
掛金をいくらにするのかもその一つですが、資産を積み上げていくなら非課税の恩恵が多い、確定拠出年金やつみたてNISAなどは積極的に活用していくことを検討してください。
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