確定拠出年金(個人型・企業型)と退職金、退職したらする1つの手続き
確定拠出年金には個人型のiDeCo(イデコ)や企業型がありますが、一時金として受け取るとき、定年退職・転退職したら必要な手続があります。
■この記事で学べること
【1】確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)の一時金と退職金の違いと税金
【2】確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)で退職したら(退職時・退職後)必要な確認
【3】退職時に確定拠出年金を解約してやめられる?
【4】確定拠出年金の退職所得控除で知っておくべき重要なこと
【5】確定拠出年金、退職して専業主婦になるとき
確定拠出年金と退職金について、自営でも会社員でも退職したらする手続き、それを放置するとどうなるかについて解説します。
この記事のもくじ
確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)の一時金と退職金の違いと税金
確定拠出年金と退職金を比べるということは、会社から退職金をもらえる会社員か公務員の人が中心になります。
加入する確定拠出年金は個人型のiDeCoあるいは企業型になりますが、そもそも確定拠出年金と退職金の違いがよく分からない人も多いでしょう。
まずは基本的なところを確認します。
確定拠出年金と退職金の違い
- 確定拠出年金 老後の資産形成のための年金制度で、60歳以降に一時金や年金でお金を受け取る
- 退職金 会社を(定年)退職するときにまとまったお金を一時金で受け取る制度。定年退職前提であれば、老後の生活保障などが目的
老後保障という点では実はいずれもそんなに変わりません。
そもそも退職金の前払いの位置付けで確定拠出年金を導入しますので主旨は大きく変わりません。
会社によってこれれらを併用しているケースもあれば、いずれか一方であったり、また別の制度(確定給付年金や厚生年金基金などの企業年金)を導入しているケースもあります。
確定拠出年金と退職金の主な違いは次のとおりです。
確定拠出年金
- 会社が倒産しても年金資産は保護される(個別管理)
- 将来もらえるお金は、個々の運用実績次第(不確定)
- 掛金負担は会社・個人、もしくは共同
退職金
- 会社が倒産したら社内積立の場合、保全されないことがある
- 将来もらえるお金は、社内規定で予め決められている(確定)
- 掛金負担は会社
老後保障という点では共通しているものの、制度の中身はこのように違いがあります。
もらえるお金が不確定・確定と書きましたが、資産が保全されているかもポイントです。
大手企業が倒産した際に、退職金の減額や企業年金が減額されたケースもあります。
確定拠出年金が個別管理・保護されているというのも大事なところです。
確定拠出年金と退職金の受け取りの際の税金の取扱い
- 確定拠出年金 退職所得控除(一時金受け取り)もしくは公的年金等控除(年金受け取り)
- 退職金 退職所得控除
確定拠出年金を一時金で受け取る場合には、退職金と同様に退職所得控除の対象になります。
年金で分割する場合は、公的年金の受給と同じ公的年金等控除の対象になります。
確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)で退職したら(退職時・退職後)必要な確認
勤務先などを退職したら退職時なり退職後に必要な手続きがあります。
転職などによる退職、結婚による退職で主婦になる、また定年退職で少し扱いが違いますので個別にみていきます。
転職・結婚などによる退職
確定拠出年金は原則60歳までは加入することができます。これは転職や退職した場合でも同様です。
そのため転職などにより勤務先や属性(会社員→専業主婦、公務員、自営業、別な企業の会社員など)が変わったら、それまで貯めた年金資産を次の新しい口座に移す必要があります。
例えばA企業からB企業へ転職したら、A企業が導入している確定拠出年金に続けて加入する資格がないので、B企業へ年金資産を移す必要があります。
以前は自分で手続きするのが必須でしたが、いまは本人情報がマッチするなど条件を満たせば移されます。
但し絶対ではないため会社を退職したら放置せず必ず自分で年金資産がどうなっているか確認してください。
定年退職した場合
この段階で選択は2つあります。60歳から資産の受け取りを始めるか、しばらくそのままにしておくかです(最長70歳まで)。
受け取る場合には、一時金受け取り、年金分割、もしくはこれらの併用の3つから選択できます。
会社からの退職金があるならそれがいつ、いくらでるのか、老後再雇用などで働くのか、その他の収入(不動産収入やその他年金)の状況などによって決めるといいでしょう。
確定拠出年金は60歳以降は新たに掛金の支払をすることができません。受け取りをしない場合には、「運用指図者」となって資産の運用のみを行います。
転職・退職で放置して自動移換されないように注意!
先ほども説明しましたが、転職・退職後に年金資産をそのまま放置しておくと、半年で自動移換されることになっています。
それまで積立てた年金資産は現金化され、勝手に自動移換されます。年金資産を自分の車だとするとレッカー移動されたようなものだと思ってください。
運用できない(車に乗れない)、余計なコストがかかる(罰金取られる)などデメリットしかありません。
確定拠出年金は自分の専用口座に自分のためだけに資産を貯めて、自分で殖やし管理します。退職したら自分で手続きが必要です。
※確定拠出年金の転退職時の「自動移換」については一定の要件を満たしていれば、転職先などへ年金資産を移動してくれるようになりました。
本人情報がマッチングされているなど要件があるので注意は必要ですが、年金資産が新しい確定拠出年金の口座に移ったかの確認は必ずしてください。
定年退職なら受け取りをどうするか方針を決める
定年退職したときには、お金を受け取るか、しばらく運用を続けるか決めなければなりません。
後で説明しますが、退職金や一時金、勤労収入など所得が集中すると税金がかかります。
また確定拠出年金で価格変動の大きい商品で投資していると、定年退職段階で相場の動き次第で資産が殖えている、減っているなど関係することもあります。
退職したら必要なことは、きちんとその旨の連絡をすること、手続きすることを怠らないということです。
まずはコールセンターなどに連絡してください。
退職時に確定拠出年金を解約してやめられる?
確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)をはじめたけれど、やっぱりやめたい、退職を機にやめることはできないか考える人もいるようです。
結論から言うと、確定拠出年金は一旦始めるとやめることはできません。掛金の減額や支払を止めるなどの選択は可能です。
解約できませんが、掛金を減額したり、先ほど説明した定年退職などの場合のように運用指図者になることは可能です。
定年退職した場合(60歳以降)は、確定拠出年金の加入者(掛金を新たに支払う人)でなくなります。
この場合には年金を受け取るか、運用のみを続けるかになります。
60歳以降については、続けたくても掛金の支払は原則できません。運用のみですので、ある意味自動的にやめることになります。
確定拠出年金の一時金は退職所得控除の対象
確定拠出年金を一時金で受け取った場合には、会社からの退職金と同じように「退職所得控除」を利用して税金の負担を軽減することができます。
退職金と同じですので、基本的な考え方は同じです。
勤務年数(確定拠出年金では加入年数)が長いほど退職所得控除の金額が大きくなります。
退職所得控除の年数がキモ
退職所得控除は、確定拠出年金の加入期間が長ければ長いほど有利です。一つのポイントとしては20年以下は20年超かです。
期間に端数がある場合には切り上げます。例えば20年4が月なら21年とします。
退職所得控除・退職所得の計算
退職所得控除額の計算は次のように計算します。
- 勤続年数20年以下 退職所得控除額40万円 × A(80万円に満たないときは80万円)
- 勤続年数20年超 退職所得控除額800万円 + 70万円 × (A – 20年)
※Aは確定拠出年金の加入年数(退職金の場合は勤務年数)
例)退職手金:2,000万円(源泉徴収前)、勤続年数:29年2ヶ月
- 収入金額
収入金額は、源泉徴収前のものとなりますので、2,000万円となります。
- 退職所得控除額
加入年数(勤続年数) 29年2ヶ月 → 30年(端数を切り上げ)
800万円+70万円×(加入年数30年-20年)=1,500万円
- 退職所得の計算
退職所得の金額 (2,000万円-1,500万円)× =500万円
500万円×1/2=2,50万円(退職所得)
収入金額から退職所得控除額を引いたものを最後に1/2したものが退職所得となります。
この退職所得に所得税率(下記リンク参照)を掛けたものが、税金を計算します。
加入年数が長いほど引ける金額が多くなるのがよく分かると思います。
確定拠出年金の退職所得控除で知っておくべき重要なこと
確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)を一時金で受け取る場合、同じ年あるいは前後数年に会社からの退職金を受け取ったときなどは、退職所得控除の取扱いに注意が必要です。
簡単に言うと、確定拠出年金の一時金、会社からの退職金をそれぞれ別に退職所得控除の計算をするのではなく、一つにまとめて退職所得控除の計算をされたり、重複期間を引かれたりすることがあります。
確定拠出年金の受け取りは、どのように運用するか以上に、最後の最後にでてくる重要なことです。
勘違いしている人が多いのですが、確定拠出年金は「無税」ではなく「課税の繰り延べ」です。
受け取るときに何らかの税金がかかることがあります。
一時金受け取りの場合は退職所得控除などで緩和されますが、いつ、どのように受け取るかは非常に慎重に戦略を立てる必要があります。
会社からの退職金が多い人ほど注意が必要なのです。
退職所得控除で控除できる金額を会社からの退職金で使い切ってしまうことがあるからです。
だからこそ定年退職時に、会社からの退職金やその他の収入があって所得がこの時期に集中する人ほどじっくり戦略を練ってください。
確定拠出年金、退職して専業主婦になるとき
2017年1月から専業主婦の人は、個人型の確定拠出年金(iDeCo・イデコ)に加入できるようになりました。
寿退職で主婦になるときも確定拠出年金の移換手続きが必要
ここまで解説したように、例えば勤務先で企業型の確定拠出年金に加入していて退職して主婦になる場合、「自分で」手続きが必要です。
自分で良いと思う金融機関を選んで申し込みをして、今まで積み上げてきた年金資産を移換する必要があります。
会社が自動的に手続きしてくれることはありません。放置しておくとやはり自動移換されてお金が減っていくだけです。
専業主婦の個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型のiDeCo(イデコ)の場合、掛金は全額所得控除の対象になるのですが、もともと配偶者の扶養の範囲の収入しかないパートなどの専業主婦は、納めている税金がないため所得控除のメリットはありません。
その代わりに年金資産を受け取るときは、先ほどと逆に他の所得が集中しないため、退職所得控除がフルに使える可能性が高いのです。
専業主婦は加入時に所得控除が使えないからメリットなしなどと言っている人もいますが、そうではありません。
運用して殖えた分が非課税であることも含めて、どこで得をするのがいいのか考えてください。
確定拠出年金は老後保障の話ですから総合的な観点からみておくといいでしょう。
まとめ
現役時代に転職などで退職した際には、何らかのかたちで確定拠出年金を続けるための手続きが必須になります。
ここを疎かにすると、日頃の節約が吹き飛ぶくらいの損をすることがあるので注意してください。
また定年などで60歳以降の退職は、繰り返しますが所得が集中する人ほど、きちんと戦略を練る必要があります。
せっかく自分の運用指図で殖やした資産を、受取時の税金で損をしないように、きちんとシミュレーションして方向性を決めてください。
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