住宅ローンを組んだら地震保険は必須?地震保険活用のための4つの方法
この記事のもくじ
住宅ローンを組んだら地震保険は必須?
金融機関によりますが、住宅ローンを組むと火災保険に質権設定(保険金の支払いを金融機関への返済に優先する仕組み)を付けるケースがあります。
以前はほぼ義務付けられていましたが、いまは担保の取り方も金融機関によってさまざまで質権設定付きの火災保険は必ず求められるものではありません。
地震保険ならなお更です。また加入先も金融機関やその紹介先である必要もありません。
どんな種類の保険でも必要か必要でないかは、損害が発生したときに自分の資産でカバーできない大きさのものほど必要性が高いと考えてください。
地震保険の加入率と付帯率
地震保険については世帯数からみた加入率と火災保険の契約に地震保険を付けている付帯率(火災保険に必ず付帯して契約するため)の統計がでています。
- 地震保険の加入率:33.1%(2019年度)
- 地震保険の付帯率:66.7%(2019年度)
いずれも年々上昇しています。
住宅ローンを組んだら地震保険の必要性が高い理由
地震保険は、政府がその仕組みに関与する官民一体の保険です。必ず火災保険に付帯して契約するため、地震保険の話をするときには火災保険を一緒に考えてください。
住宅ローンを利用すると購入した住宅は資産ですが、返済が始まった時点ではほとんど負債です。
地震や台風、火災などで購入した住宅が全壊・全焼すると住む家はなくなり、代わりに住宅ローン(借金)だけが残ります。
住宅ローンを組んで間もない時期なら、無くなった住まいの返済が数千万円単位になります。
仕事柄、地震保険の必要性についてよく聞かれるのですが、以前から筆者がお話している地震保険の必要性が高くなる人は以下に該当する人です。
- 住宅ローンの残債がある人
- 資産が少ない人
- 被災後に収入が途絶える可能性の高い人
住宅ローンの残債についてはいまお話したとおりです。資産の多い少ないについては、住宅購入した人は頭金などで資産を使ってしまっています。
手元になる資産は何かあったときのために数か月~1年程度くらいの生活資金などでしょう。
最後の収入の途絶える可能性の高い人というのは、例えば家業でお蕎麦屋さんをしているとします。地震で自宅兼店舗が全壊したら家族全員誰も収入が取れなくなります。
資産が少ないのも大変ですが、毎月の稼ぎが止まることは大変な状況です。
敢えて必須とは言いませんが、これらに該当する人は地震保険の必要性は高くなると考えてください。
火災保険と地震保険の違い、加入金額の制限
地震保険は仕組み上、火災保険に付帯して契約すると言いました。地震保険は損保各社で共通した内容ですが、火災保険の商品性はそれぞれです。
また火災保険は被災した建物を保険を使って再築・再購入するのが目的であるのに対して、地震保険は生活再建を目的にしています。
これは地震災害の特性上、多くの人が被害に遭う地震では助け合いの仕組みが成り立ちにくいことに起因しています。火災保険にはない制限が地震保険にはあるのです。
具体的には次の制限があります。
- 単独で加入できず火災保険に付帯する。居住用の住宅(併用住宅含む)が加入対象
- 契約金額は火災保険の金額の30%~50%で設定(建物5,000万円、家財1,000万円が上限)
- 保険金の支払いは実際の損害ではなく、全損・大半損・小半損・一部損の4段階
地震保険は一番損害の程度が軽い一部損にも認定されないと保険金は支払われません。つまり損害があっても保険金ゼロがありえます。
掛金(保険料)は、建物構造と地域によって変わります。地域や構造によっては火災保険の倍近くになることもあります。
全国的に自然災害や水濡れ事故が多くなっており、火災保険料や地震保険料は改定続きで保険料は上昇傾向です。
地震保険に加入する前にこれらのことをよく理解しておくことが重要です。
タイプ別(一戸建て、マンション)の地震保険の特徴とポイント
住宅購入といっても例えば一戸建てとマンションではその特性が異なります。地震保険の観点からそれぞれをみていきましょう。
はじめてに共通したことをお話すると、一戸建て・マンションともに耐震性や免震性の高い住宅があります。
耐震性あるいは免震性が高いからはじめから地震保険が必要ないとは考えないでください。地震が原因で近隣で出火することもあり、火がでたら耐震性や免震性は関係ありません。
地震が原因の火災は火災保険では補償されないため、地震保険が必要です。自分の住環境をよくチェックして判断するようにしてください。
一戸建てと地震保険
地震保険の保険料は構造別に2段階に分かれます。
- イ構造:火災保険の構造区分がM・T構造、A・B構造または特・1・2級構造(主に鉄骨・コンクリート造)
- ロ構造:火災保険の構造区分がH構造、C・D構造または3・4級構造の場合(主に木造)
※木造でも建築基準法に定める耐火建築物・準耐火建築物、省令準耐火建物に該当するとイ構造
※火災保険の構造は2010年1月以降を目途に住宅はM・T・H構造、店舗併用は1・2・3級です。それ以前はそれぞれABCD構造(4区分)、特1234級(5区分)です。
一戸建ての場合はイ構造、ロ構造いずれもあるので複雑ですが、いわゆる昔ながらの木造住宅は掛金(保険料)がそれなりにすると考えてください。
特に地震保険料の高い地域だと、補償は火災保険の半分ですが、掛金は倍近くになるケースもあります。
地域にもよりますが、一戸建ての場合はロ構造に該当すると一番の問題は掛金です。この後地震保険の改定も予定されているので改定動向に注意してください。
マンションと地震保険
マンションの場合、火災保険も地震保険も木造よりもはるかに安く掛金が設定されていますが、近年災害や水漏れ事故の多発などを原因に上昇傾向です。
掛金については改定動向に注意が必要なのは一戸建てと同じです。
それ以上にマンションで気をつけたいのが、専有部分と共用部分に分けて火災保険・地震保険を契約することです。
古いマンションなど管理組合が機能していない一部のケースを除くと共用部分の保険はマンション管理組合が契約します。
地震保険に加入するかは決議次第ということになります。
マンション管理組合で共用部分にも地震保険に加入するべきだと考えても、他の所有者が掛金負担が大きいから反対ということなら加入しない可能性もあります。
つまり自分の意思でコントロールできない部分があるのがマンションの特徴です。
地震災害に不安な人は建物だけでなく、家財にも地震保険を加入しておくなども検討してみてください。
中途加入・中途解約、その他住宅ローン利用者が地震保険を活用する4つの方法
住宅ローンを組んだら地震保険は必須かどうかで記事を進めてきましたがもう少し柔軟に地震保険の加入と活用について考えてみましょう。
地震保険は中途加入・中途解約ができ、いつでも見直し可能
地震保険の加入期間は1年から最長5年間です。火災保険は1年から最長10年間になっており、仮に火災保険の期間が10年間なら地震保険は1年の自動継続か5年契約になります。
地震保険を加入するかしないか、必要か必要でないかの〇×だけで議論されるケースが多いのですが、もう少し柔軟に考えてみてください。
地震保険は中途加入も中途解約も可能です。途中でやめれば残りの期間分は返金されます。
またずっと地震保険に加入し続ける必要はありません。
住宅ローンの返済がかなり進んで、残りの返済分くらいは地震保険がなくても何とかなると思える金額ならその時点で加入しなくてもいいのです。
住宅ローンの返済状況、そのときの家族の状況や収入の得かた、資産の保有状況などをみて適宜見直しを考えてください。ここ凄く重要です。
災害で被災した場合、公的な支援制度がある
生命保険や医療保険は、公的な保険をベースに不足する分を民間の保険でカバーするのが基本ですが、これは地震保険でも同様です。
地震だけでなく他の自然災害なども対象ですが、損害の程度と住宅の再建方法によって最高300万円の支援を受けることができます。
例えば火災保険に建物2,000万円加入していれば、地震保険は建物1,000万円まで加入できます。この制度で300万円支払いになるなら不足はあと700万円ということになります。
地震保険には上乗せの地震保険がある
地震保険は官民一体の保険制度で、どの損保でも内容は同じと説明しました。
地震災害が多発していることを受けて、損保各社や少額短期保険などで地震保険の上乗せ制度や独自の補償制度を設けています。
補償が不足する上乗せに使えるものは以下の制度があります。
- 損保各社の地震保険上乗せ制度(取り扱っていないところもあります)。
- 地震補償保険リスタ(SBIリスタ少額短期保険の取り扱い)
- 家財にも地震保険に加入
損保の上乗せは地震による火災を対象にしているものが多いのでよく内容を確認してください。
筆者の確認できている範囲で東京海上日動やソニー損保のものは地震単独の損害も補償します。
いずれにしても掛金はそれなりにします。損保とは違いますが、少額短期保険で独自の補償制度を設けているところもあります。加入は900万円が上限ですが単独で加入可能です。
後は上乗せとは意味合いが違いますが、建物だけでなく家財にも地震保険の契約をする方法があります。
この項目のはじめにお話したように、これらの上乗せの補償も返済が進むにしたがって減らしていくという視点も持っておきましょう。
地震保険の改定動向に注意
東日本大震災以降、地震保険の改定が続いています。具体的には下記のように改定されてきました。
- 2014年7月
- 2017年7月 3段階1回目
- 2019年1月 3段階2回目
- 2021年1月 3段階3回目
2021年1月が当面の改定の最後になります。いずれの改定も全国平均では値上げです(一部値下がりしている地域あり)。
改定後に値上がりする場合、改定前に一度火災保険・地震保険を見直すという方法もあります。
まとめ
住宅ローンを組んだら地震保険は必須?地震保険活用のための4つの方法、についていかがでしたか。
住宅ローンの返済でなかなか余裕がないという人も多いでしょう。地震保険の掛金もそれなりにするので加入について色々思案することも珍しくありません。
大切なことは後半に解説したように状況に合わせて無理のない範囲で柔軟に対応するということです。
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