新NISAと確定拠出年金(iDeCo)の併用と比較、違いを知る3選!
NISA(つみたて投資枠)とiDeCo(個人型の確定拠出年金)は両方併用するのがベストですが、異なる制度なので比較しにくい、違いや使い分けがわからない人も多いようです。
■この記事で学べること
【1】比較の前に知っておくこと
【2】両方の違いを徹底比較
【3】使い分けと併用するポイント
つみたてNISAとiDeCo(個人型の確定拠出年金)について、併用あるいは使い分けしながら両方を活用する方法について解説します。
*NISAは2024年以降は新NISAという別制度になります。今のつみたてNISAは、現行のルールのまま20年間非課税です。
詳細は記事最後にある関連記事をご覧ください。
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この記事のもくじ
新NISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)の比較の前に知っておくこと
つみたてNISAとiDeCoはどちらも運用してでた利益が非課税のため、似たような制度に見えますが詳細はかなり違います。
新NISAにも確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)にも種類がある
新NISA、確定拠出年金の両方とも複数の種類があります。
■新NISAの種類
- つみたて投資枠
- 成長投資枠
■確定拠出年金の種類
- 企業型確定拠出年金
- 個人型確定拠出年金(愛称:iDeCo)
長期での積立分散投資をするのはNISAではつみたて投資枠なのでこの記事では新NISAのつみたて投資枠を比較対象にします。
確定拠出年金では、企業型はそもそも労使合意で制度導入するので選択制の確定拠出年金などを除くと拒否する余地がありません。
確定拠出年金はiDeCoを前提に記事を進めます。
それぞれの違いを比較する上でその特徴をメリット・デメリットを含めて続けて確認します。
新NISA(つみたて投資枠)の主な特徴
少額投資非課税制度の積立版であるつみたて新NISAのつみたて投資枠の主な特徴を列挙します。
- 運用で得た利益が非課税
- 金融庁で一定要件を満たした投資信託・ETFのみが投資の対象(手数料などが一定の安いものだけで構成)
- 損失がでた場合に損益通算(利益と損失の相殺)ができない(課税される一般の証券口座であれば損益通算が可能)
積立投資ですからそんなに気にする必要はないかもしれませんが、損失がでた場合には通常の投資信託や株式の売買のように損益通算や損失の繰越しなどはできません。
NISAをする上での覚えておかなければならない重要なポイントです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の主な特徴
- 掛金全額が所得控除、運用益は非課税、年金受取時に控除の対象になる
- 一般で投資信託を購入するより手数料(信託報酬など)が安いものがある
- 加入者の積立資産は分別管理して保護される。転退職しても年金資産を持ち運べる
- 年金制度であるが運用の成果におけるリスクは加入者が負う
- 原則60歳までは資金の引出しはできない
- 口座の開設・維持・年金の受取りに手数料がかかる
このように新NISA(つみたて投資枠)とiDeCoの比較の前にまずはそれぞれの主な特徴を理解しておきましょう。
これらの特徴が分からないと単純に違いを見たり比較したりしにくいのです。
特徴にズレを感じると思いますが、新NISAは非課税の投資制度、iDeCo(個人型確定拠出年金)は年金制度だからです。
これを踏まえて両方の違い及び比較をみていきましょう。
新NISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)の違いを徹底比較
両方の違いについて一覧表で比較してみましょう。
つみたてNISAとiDeCoについてその違いと比較を簡単にまとめると下記の表のようになります。
新NISAつみたて投資枠 | iDeCo(イデコ) | |
加入対象者 | 日本居住で18歳以上 | 国民年金1号-3号加入者 |
運用方法 | 積立 | 積立 |
投資期間 | 無期限化 | 原則60歳、最長70歳 |
投資限度額 | 年間120万円 | 年間14.4万-81.6万円 |
投資商品 | 定められた一定の投資信託 | 預金、保険、投資信託等 |
非課税制度 | 運用益非課税 | 掛金全額所得控除 |
運用益非課税 | ||
受取時、控除制度あり | ||
資金の引出し | いつでも可能 | 不可 |
iDeCoは加入対象者の属性によって、それぞれ掛金の年間限度額が違います。次にこれらを踏まえて両方の違いを比較について詳細に解説を補足します。
加入対象者での違いと比較
新NISAは単純に日本に居住する18歳以上の人が対象ですから、例えば75歳の人でも加入することができます。
これに対してiDeCoは国民年金に加入している人が対象です(強制加入なので通常は現役世代なら対象)。
年齢については例えば第1号の人(自営業、フリーター、学生、無職者)は20歳以上65歳未満となります。
第2号(会社員、公務員)の配偶者である第3号も同様です。
運用と投資期間での違いと比較
いずれも積立投資になります。基本的な考え方は長期の積立分散投資です。
運用期間は新NISA(つみたて投資枠)は無期限化されています。
iDeCoは65歳までで運用は70歳まで続けられます。
そのためiDeCoははじめる年齢によって掛金を支払い続けて、投資できる期間が変わります。65歳とするなら23歳からはじめれば42年間ですし、50歳からはじめれば15年間です。
また新NISAでは非課税枠について、一度売却して利益が非課税になった分は翌年にその枠が復活します。
運用商品での違いと比較
新NISA(つみたて投資枠)
新NISAの運用商品は、投資信託(インデックスファンド、アクティブファンド)、ETFでそれぞれ対象商品となるのに細かい要件があります。
それぞれの投資信託ごとに要件が違いますが、それを要件を満たしたものがつみたてNISAの対象商品となります。
ほどんどはインデックス型の投資信託なのです。
基本的には信託報酬などの運用コストが安いものです。
アクティブファンドについては運用実績期間がある、資産規模が大きい、お金が流入しているなどインデックスファンドより要件が厳しくなっています。
対象商品が少ないことをみても明らかです。
また投資対象は株式だけか複合資産(株式や債券の組み合わせ)のいずれかです。
そして日本国内、国内外、海外のみのいずれかになります。これらを縦横合せたかたちの投資信託がラインナップされています。
これに対してiDeCoはこうした要件がありません。投資対象は元本確保型(預金、保険など)、元本変動型(投資信託)となります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoには運用管理費用(信託報酬)が安いものもありますが、高いものも混じっていますのでよく吟味してください。
金融機関によってはつみたてNISAとiDeCoの共通商品などのようになっていることもあります。
新NISAは個別の商品名で対象が決められています。
対象商品を100本以上取りそろえるようなネット証券などだと、同じ商品が重複することがあります。
しかしiDeCoは金融機関ごとに取り扱っている商品がバラバラですから、取扱い商品などを確認しないで契約しないように注意が必要です。
なお、新NISAには、保険や預金はありません。
iDeCoでも新NISAでも運用して増えた分が非課税なので、基本は高いリターンの期待できる商品を使うべきだと考えます。
それでもなかにはiDeCoなどで預金に入れたいという人は、この投資できる商品の違いに注意してください。
掛金の限度額での違いと比較
つみたてNISA年間40万円(約3.3万円/月)が掛金の限度額になります。iDeCoの掛金の限度額は各属性によって異なります。
- 自営業等 81.6万円(6.8万円/月)
- 専業主婦等 27.6万円(2.3万円/月)
- 公務員 14.4万円(1.2万円/月)
- 会社員 27.6万円(2.3万円/月) (他の企業年金なし、企業型確定拠出年金なし)
- 会社員 14.4万円(1.2万円/月) (他の企業年金あり、企業型確定拠出年金なし)
企業年金なし、企業型確定拠出年金ありの場合、この上乗せとしてiDeCoは24万円、企業年金・企業型確定拠出年金伴にある場合、上乗せとして14.4万円加入可能です。
但しこの上乗せはマッチング拠出との選択適用になるので、勤務先がどのようは制度にするかに左右されます。
iDeCoではこのように属性によって掛金の上限がかなり違います。
新NISAと併用することを考えている人は属性によってかなり予算が変わってくることを覚えておきましょう。
新NISAになって年間の投資枠が増えていることも考慮してください。
税金(非課税制度)での違いと比較
新NISAは運用における分配金や運用益は非課税で税金がかかりません。また税金の優遇はこれのみです。
これに対してiDeCoも運用益などは非課税ですが、他に2つあります。
一つは掛金の全額が所得控除の対象になることです(小規模企業共済等掛金控除の対象)。
生命保険料控除などと同じものと考えてください。
年金受取時は分割受取りなら公的年金等控除、一時金受取りなら退職所得控除の対象です。
iDeCoは受取るときに税金がかからないわけではありません。
なかにはかからないケースもあるでしょうが、税金がかかるのを3つの優遇制度を設けつつ後ろにずらしています(課税の繰り延べといいます)。
iDeCoを受取るときに税金については、そのときの他の収入(会社からの退職一時金など)も考慮する必要があります。
資金の引き出し、換金のしやすさでの違いと比較
新NISAは購入している投資信託などを売却していつでも資金の引出しは可能です。
iDeCoは原則60歳まで資金の引出しはできません。もちろん解約することもできません。
その代わり掛金の減額(最低5,000円)や掛金の支払いをやめてこれまで積立てした資産の運用だけをすることはできます。
もっともいずれの制度も長期の分散投資とコツコツしていく手法です。
換金性が高いことは大切ですし、どうしても続けられないときは仕方ありませんが、少額でも続けることをはじめる際の前提にしてください。
この換金することの違いは、両方の制度のそもそもの目的の違いも関係しています。
目的の違いと比較
新NISAは、海外の少額投資非課税制度の日本版としてはじまりました。
これをさらに積立にして期間を長期にしたものが新NISA(つみたて投資枠)で、もともと投資制度であり長期の積立分散投資で資産を殖やすことが主です。
これに対してiDeCoは個人型の確定拠出年金、年金制度です。
年金制度ですから老後資金を作り老後の生活にあてていくための積立です。
年金の受取りは60歳、遅くても70歳には開始しなければなりません。公的年金である国民年金も受取りは65歳から、繰下げ受給しても70歳から受取りになります。
また国民年金保険料(会社員は厚生年金も)は、途中で辞めたり引出したりできませんがこれと同じです。
老後における長期での投資が前提なので、安易に資金の引出しができたら貯まりませんし殖えません。
ここは制度の問題なので割り切るしかないでしょう。
目的の違いなのでどちらが良い悪いというものではありません。
iDeCoは60歳まで資金が引き出せないから使えないという人がいますが、そもそも新NISAなどとは目的が違うのです。
この両方を併用できる場合はいいのですが、予算の関係などで使い分けが必要な場合にはこの目的についてよく吟味してください。
お金を貯めて殖やすことに違いはありませんが、目的がズレたままはじめると後で後悔します。
手数料の違いと比較
新NISA及びiDeCoそれぞれで効率的に投資で資産形成していくために、気にしておきたいことの一つが手数料です。
投資信託の場合、運用にかかる手数料が3つあります。
販売手数料(購入したとき)、運用管理費用(信託報酬ともいう。運用しているとき)、信託財産留保額(途中でやめるとき)です。
つみたてNISAは販売手数料を取るものは対象にできません。
iDeCoも販売手数料をとるものはほとんどありません。信託財産留保額については取るものもありますが、取らないものも多いです。
気にしてほしいのは運用にかかる手数料は運用管理費用(信託報酬)です。
この部分の手数料は、単に投資信託といってもインデックス型(市場平均並み)で運用するのか、アクティブ型(市場平均以上)で運用するのかで運用管理費用はそもそも違います。
もちろん投資対象が日本国内、海外(先進国、新興国)などによっても違います。
アクティブ型の方がどうしても高い運用成果を目指すので手数料は高くなりがちです。
運用に手がかかるものは当然のことながら一般的に手数料が高くなると考えておいてください。この前提でつみたてNISAとiDeCoの手数料についてみていきます。
新NISAの手数料
新NISA(つみたて投資枠)の場合については、一般に投資信託を購入するよりも手数料が割安なものしかラインナップにありません。
その中でも手数料が高め安めはありますが、一般的な基準から安いものだけなので新NISAではそんなに神経質にならなくても大丈夫です。
商品ごとの信託報酬は比較するようにしましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の手数料
iDeCoの商品(投資信託)にかかる手数料
iDeCoの場合にはもう少し複雑になります。それはiDeCoの場合には、運用商品と口座の維持管理についてそれぞれ手数料がかかるからです。
iDeCoの運用にかかる手数料はつみたてNISAと違って、一定の基準以下の費用のものだけではありません。
もともと一般に購入するより安いものはありましたが、高いものもありました。
2017年以降引き下げているところも少しずつ増えています。
iDeCoは対象商品の構成が、投資信託以外に預貯金(定期預金など)や保険もあります。これらの商品の数は最終的に35本が上限になる予定です。
この本数もこれだけの種類が入ると例えば海外の先進国の株式に投資する商品などと決めてもそれが35本あるわけではありません。
定期預金なども含めての数なので、一つの項目で5本もあればいい方です。
金融機関ごとに商品ラインナップはかなり違うので契約前によくチェックしてください。
iDeCoの運営管理費用/口座の開設・維持・年金の受け取りにかかる手数料
新NISAと手数料の面で決定的に異なるのは、事務的な手数料がかかることです。
- 口座を開設するとき(2,829円)
- 口座開設中(最低171円/月、金融機関によってはさらにプラス数百円)
- 年金受取ごと(440円)
この金額はどの金融機関でもかかります。比較が必要なのは毎月かかる171円にプラス数百円かかるところです。
2017年にiDeCoが拡充されてから、ここを0円にするところが少しずつ増えていますが、数百円かかるところもあります。
この低金利下で毎月プラス数百円かかると結構なダメージです。
どこでも同じと思わずに、特にiDeCoの場合はこれらの手数料に注意してください。
新NISAと確定拠出年金(個人型iDeCo)はどう使い分ける?
ここまで新NISA(つみたて投資枠)とiDeCoそれぞれの特徴などを解説してきたので、それぞれメリット・デメリットや使い方の方向性が見えてきたのではないでしょうか。
特に双方の特徴のデメリット的なものには注意してください。
2つとも毎月自動で積立する長期の分散投資が基本です。
そのため方向性を決めて積立を開始したら、多少の放置ほったらかし運用でOKです。下記の項目について自分の考えを落とし込んでみてください。
- 目的
- 年齢
- 投資についての知識
- リスク許容度や投資の方向性
- 予算
このあたりを自分に照らし合わせてみると、両方の使い分けをどうするのか自分に合う方向性がでてきます。
あまりリスクの取りたくない人に無理に勧めませんが、どちらもできれば許容できる範囲で投資を考えてください。
個人的な意見も含めてのことになりますが、iDeCoには預金や保険などがあります。
できればですが、積極的にiDeCoの中で使う商品ではありません。理由はこの後に説明します。予算が許すなら新NISAとiDeCoは使い分けず両方ともやってください。
新NISAと確定拠出年金(個人型iDeCo)の両方併用のポイント
新NISAとiDeCoを併用して検討している人も多いでしょう。先ほどもお話ししたように予算が許すならそれが一番です。
掛金はどう振り分ける?
どちらの目的により比重をおくかによって当然掛金の振り分け方は変わります。
両方できるけどどうしようというのは、ある意味贅沢な悩みですが、判断しかねるなら半分ずつ掛金を振り分けてもいいでしょう。
両方を併用するときの運用
運用をする際に、商品の選択よりも資産配分(アセットアロケーションといいます)が重要なのは、色々なところで見聞きしているでしょう。
そういう話をされると新NISAの中、iDeCoの中の資産配分をそれぞれ考える人が多いのですが、資産配分は本来資産全体(新NISAやiDeCoの口座の外の資産も含めて)考えるものです。
できるかどうか、やりたいかどうかはあるでしょうが、それぞれの口座の特性を活かした資産配分をして、そこに資産を置く方が運用は効率的です。
iDeCoのところでできれば預金などはやらない方がよいと言ったのは、新NISAやiDeCoは運用で儲かった分について税金がかかりません。
それであればこの2つの口座には、預金よりも高いリターンが期待できる商品を配分して置く方が資産が殖えやすいのです。
定期預金を使うならiDeCoの口座の外で、普通に積立預金や財形貯蓄などをやっても同じことです。
新NISA、iDeCoそれぞれの特性を活かせる商品を優先して使うことを心がけてください。
もちろん絶対にiDeCoで定期預金を使うなということではありません。
本質的なところではこうした方が資産が殖えやすいということです。
それを理解して投資経験などを積みながら色々変更していくことも考えましょう。
同じ証券会社で新NISAとiDeCo両方の口座開設すると何か問題?
新NISAとiDeCoをはじめようとした際に、ネット証券などはこの両方に比較的力を入れているところも多いので同じ証券会社で口座を開設しようか考える人もいるはずです。
同じ証券会社で口座開設しても特に問題はないと考えます。
一つになっていると管理は楽でしょうが、新NISAもiDeCoもお話ししたように基本は一度はじめればある程度は放置・ほったらかし運用です。
毎日個別の株式銘柄などを売買するわけではありません。
自分のスタンスに合うものがそれぞれ別々なら分けて口座開設するのもありでしょう。
新NISAもiDeCoも手数料や商品ラインナップなどを見ると、各証券会社や銀行によって力の入れ具合はかなり違います。
はじめるときには少し時間をかけても納得のいくところで口座開設してはじめましょう。
変更はできますが、手間やコスト(iDeCo)がかかったり、その間運用が止まるなどもあります。最初にしっかり選びましょう。
まとめ
どちらも国が主導して制度を作った税制上の特典がある積立運用です。両方とも積極的に活用してください。
積立での長期投資は短期間で一気に資産が殖えるものではありません。長い時間をかけて資産を育てるものです。はじめて投資をする人はこれをきっかけにお金を貯める・殖やすための知識と経験をぜひ積んでください。
本業以外にお金を稼ぎ・殖やす方法を持っていることはこれからの時代には必要なことです。
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