【雪害・雪災】大雪での火災保険、補償対象と保険金の支払い
雪害・雪災による損害は火災保険・火災共済などで原則として補償対象になります。一方で対象になるには適用条件があるケースもあります。
■この記事で学べること
【1】雪災による火災保険の補償
【2】火災保険の雪災害の被害で対象になるもの
【3】雪害の保険申請と保険金支払い時のポイント
【4】雪災と共済(全労済・県民共済・JA共済)
【5】被害を受けた際の確定申告と税金
火災保険における雪害・雪災における契約時のポイントや保険金の支払いや税金の取り扱いについてファイナンシャルプランナーが解説します。
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この記事のもくじ
火災保険における雪害・雪災とは?
雪害とは、「雪による災害」のことを言います。
実際には交通事故や転倒、雪下ろし中の事故、住宅の破損など様々あります。
住宅の関係だと雪害で住宅が潰れる、雨樋や屋根、外壁・フェンスなどが破損する、屋根から雪が落ちて住宅の一部が破損するなど色々あります。
火災保険の補償では、「雪災」という言葉と使います。大雪などによる損害も補償の対象になります。
但し、火災保険の雪災は独立した補償ではなく、「風災・雹(ひょう)災・雪災」としてワンセットの補償です。
損害保険会社の火災保険であればこの点は共通しています。
例えば沖縄県などで雪災はいらないと考えても風災も一緒の補償です。
台風などの損害は外すことは少ないでしょうから、多くの火災保険に付帯されているケースが一般的です。
火災保険の商品の中には風災・雹(ひょう)・雪災の補償がない、あるいは自分の選択で除外できる火災保険もありますが一部です。
一般的には雪災の補償は火災保険に付帯されているものが主流と考えてください。
なお、各種の共済(県民共済、こくみん共済coop「全労済」、JA共済)などの火災共済にも雪害に対応した保障があります。
共済の雪害については後で解説します。
雪害・雪災はどんなものが火災保険の補償対象?
火災保険では、契約の際に保険の対象(住宅なら建物・家財など)を指定します。
保険の対象ごとに火災保険料率が違うので、契約時に個別に設定する必要があります。
もっともそもそも火災保険の雪災で補償されない、あるいは実は雪災で補償されているものもありますので、個別に確認していきましょう。
建物・家財
住宅物件では一番ポピュラーなのが建物と家財です。
家財の場合には、雪災では建物がつぶれたりしないと、家財まで損害があることは少ないでしょうが、契約内容によって建物または家財が対象です。
事務所や店舗などの場合には、設備什器や商品なども補償の対象にすることができます。
雪害を原因とした建物の雨どいの破損や曲がりはよく発生する事故です。他にも屋根や外壁・フェンスなどでも同様です。
また雪の落下による破損や重みによる歪みなども雪害では発生します。
カーポート・物置・門塀など
火災保険では、保険の対象を指定すると言いました。
しかし通常は建物に火災保険をつけるとカーポートや門・塀、物置などは付属設備として補償の対象に含まれています。
建物に火災保険を付帯していれば、カーポートなども補償の対象に入っているケースが多いと考えてください。
2014年2月には、平成26年豪雪と呼ばれる雪害が発生して都心部でもかなりの雪になりました。
このとき一戸建てにあるカーポートが潰れる被害が多発しました。
大雪で物置や門塀までの被害となると相当なものでしょうが、カーポートなどは作りによっては雪で潰れてしまいます。
雨樋
建物が押し潰されるなどのことはよほどのことでしょうが、雨樋などは大雪などで破損しやすいものの一つです。
雨樋は建物一部として考えますので火災保険で補償されます。
ビニールハウス
大雪になると雨樋や重さに耐えられないカーポートなどが破損は多いでしょう。
これに並んで被害が大きくなりがちなのが、農作物やこれに関連するビニールハウスです。
住宅ではありませんので、事業用の火災保険になりますが、農業設備などは取り扱わないことがあるので個別に照会が必要です。
そのためビニールハウスなどの場合は、JA共済などで探す方が早いケースもあるでしょう。
自動車
雪害・雪災による自動車の損害は、火災保険では対象になりません。こちらは自動車保険での対応になります。
走行中のスリップなどによる相手への賠償は、対人賠償・対物賠償保険です。
自動車保険に加入していれば当然付いている補償ですが、自車両の補償には車両保険への加入が必要です。
自宅の屋根からの雪の落下による損害の場合でも車両保険が必要です。
火災保険ではなく、自動車保険の車両保険の付帯が必要になりますので覚えておきましょう。
雪害・雪災時の火災保険の申請と支払い時のポイント・注意点
火災保険では、保険金の支払い対象であっても免責金額(自己負担する金額)が設定されていることがあります。
免責金額の設定があると、一定の金額は自費になるので、雪害・雪災のときにも注意しなければならないところです。
雪災 20万円以上
特に住宅火災保険・住宅総合保険など旧タイプの火災保険に35年(住宅ローンに合わせて)など長期契約している火災保険には雪災の補償に20万円以上の損害という制限がついています。
店舗併用住宅や専用店舗などの場合には、普通火災保険・店舗総合保険なども同様です。
火災保険のすべての補償ではなく、風災・ひょう災・雪災について損害額が20万円以上になったら、保険金を支払うというタイプです。
例えば、雪による損害が15万円なら保険金は1円もでませんが、損害額が25万円なら25万円全額を支払うという仕組みです。
現在の火災保険でも、風災・ひょう災・雪災について20万円以上になったら支払うというタイプがありますのでチェックしておいてください。
雪災 0~10万円程度の免責金額
最近の火災保険に多いタイプですが、すべての補償に免責金額(自己負担のこと)を設定する契約があります。
具体的には0万円、1万円、3万円、5万円、10万円など保険会社によっていくつかパターンがあります。
免責金額が大きくなれば、保険料(掛金)は安くなります。契約時によく話を聞いておきましょう。保険料を安くする方法の一つです。
損害保険会社によっては、「風災・雹災・雪災」だけに別途高額免責(10万円、20万円など)を付帯できるケースもあります。
建物構造などによってはこうした補償設計が有利でしょう。
なお、カーポートなどがある場合、こうした高額免責を付帯すると金額次第ですが、ほとんど修理費がでなくなる可能性があります。
個別の状況をよく確認してください。
いずれにしてもこれら一定の自己負担の設定がある場合、これを超える額の損害が発生していることが、雪害による火災保険を申請する条件になります。
費用保険金と雪災
火災保険には、雪災で住宅などの修理が必要になった場合、その修理費(損害保険金)の他に費用保険金というものが支払われます。
今は損害保険会社ごとに費用保険金はかなり多様化しています。
目安として契約金額の10~30%、100~300万円限度などといったかたちで損害保険金と別にプラスαで支払いになります。
共済(全労済・県民共済・JA共済)と雪害・雪災の保障
火災保険については他に同じような形でカバーするものに共済があります。いわゆる火災共済です。
こくみん共済coop(全労済)の雪災
全労済はその愛称をこくみん共済coopとしていますが、住まいる共済で、住まいの雪災へは風水害等共済金でカバーします。
WEBなどを見ると風水害「等」となっていて雪が書かれていませんがここで降雪・雪崩などに対応します。
水災や風災などと基本的な構成や共済金の支払い方法は同じです。自然災害共済を付帯して大型タイプにいくほど手厚い内容になります。
- 火災共済のみ
- 火災共済+自然災害共済(標準タイプ)
- 火災共済+自然災害共済(大型タイプ)
これらに臨時費用がプラスされています。共済金の支払いについてはかなり細かくなるので、全壊などの場合だけ記載しておきます。
住宅の損壊率が70%以上で全壊となります。この場合の支払限度額は次のようになります。
- 火災共済 300万円
- 自然災害共済(標準タイプ)3,000万円
- 自然災害共済(大型タイプ)4,200万円
都道府県民共済の雪災
都民共済、道民共済、府民共済、県民共済における雪災の場合、10万円以上の損害で対象になり、最高600万円です。
以前は対象外でしたが、2014年12月1日より、カーポートなどの付属建物等も対象(10万円超の損害の場合、一律5万円)になっています。
覚えていない人もいるでしょうが、2014年2月に大雪の被害が全国各地で発生しました。
特にカーポートなどが潰れる被害が多発しましたのでこうした実態を受けての措置でしょう。
JA共済
積立タイプである建物更正共済むてきプラスが主軸の火災共済になります。
この中の「風水災等共済金」で支払い対象になります。なおここでいう「雪災」とは次のものをいいます。
「豪雪の場合におけるその雪の重み・落下等による事故、なだれ」
風水災等共済金支払いの支払い基準は以下のとおりです。
- 風災、ひょう災、雪災または水災によって生じた損害の損害割合が5%以上
- 風災、ひょう災、雪災または水災によって生じた損害割合が3%以上5%未満の場合
- 風災、ひょう災または雪災によって生じた損害の額が5万円以上の場合
損害割合とは、損害額/共済価額のことをいいます。共済価額は建物などの評価額と考えてください。
火災保険と雪害・雪災での損害賠償
雪害・雪災の場合、自分の自宅の屋根から雪が落ちて他人の家の一部が破損した怪我をしたなどのケースがあります。
いわゆる第三者への損害賠償です。弁償してくれなどと言われた場合、火災保険で対処できるかというと条件があります。
火災保険自体は賠償責任保険ではありませんので、「個人賠償責任補償特約」などの付帯が必要です。
住宅ならこれで構いませんが、賃貸にだしている物件に関わることだと施設賠償責任保険などの事業用の保険を手配しなければなりません。
もっと大事なことはこれらの賠償責任保険の適用には、「法律上の損害賠償責任を負っていること」が必要です。
つまり自分に過失(落ち度)があって、第三者に損害を与えたということです。自然災害によるものですと、どこまで責任を問われるか微妙なところです。
様々ケースがあるので一概には言えませんが、個人賠償責任補償特約であれば自転車保険などにつける補償と同じです。
すでに補償が自動車保険や火災保険に付いている可能性もあります。
加入している保険の補償をチェックしてみましょう。
雪害・雪災で損害があったときの確定申告と雑損控除
保険金について確定申告は必要?
雪害・雪災で住宅やカーポートなどに損害があった場合、火災保険から保険金が支払われます。この保険金については、課税されませんので安心してください。
確定申告の期限の猶予
毎年確定申告する人で、雪害によって多大な被害を受けている場合には、確定申告の猶予などが設けられることがありますので、最寄りの税務署に確認してください。
雪害の場合、どうしても確定申告の時期に近いときに損害が発生しますので、こうした手続きも必要です。
確定申告で雑損控除か災害減免法を使う
雪害や雪災による損害は、1~2月頃が一番多いでしょう。
このとき次回(つまり翌年)の確定申告で雑損控除か災害減免法のいずれか有利な方を選択適用することができます。
これにより所得税の全部または一部が軽減されます。被害に遇う時期を考えると、確定申告をするのが1年近く先になりますから、忘れずに手続きしてください。
まとめ
【雪害・雪災】大雪での火災保険、補償対象と保険金の支払い、についていかがでしたか。
雪国の人には当たり前のことも多いでしょうが、都心に住んでいる人にはあまりないことなので意外と知らないことも多いでしょう。
特にカーポートや雨樋などは雪でも破損しやすいところなので、建築時にもこうした視点で考えておくといいでしょう。
何もないときには、保険料(掛金)が安い方に目が向くでしょうが、保険金の支払いがどうなるかも気にしつつ火災保険のプランを決めるようにしてください。
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