借家人賠償責任保険(特約)の保険料と保険金額の目安と相場は?
賃貸物件に入居の家財の火災保険に「借家人賠償責任保険特約(借家人賠償責任補償特約)」は必須ですが、何を補償するのか分からない人も多いようです。
■この記事で学べること
【1】掛金の目安と相場、保険金額と比較方法
【2】共済・少額短期保険の借家人賠償責任保険
【3】個人賠償責任保険・修理付帯費用との関係
【4】法人や店舗・事務所、ネットでのおすすめ
【5】加入先は自分で選べる?
賃貸の火災保険を半強制的に加入する理由の一つと言っていい、借家人賠償責任保険特約についてファイナンシャルプランナーが解説します。
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この記事のもくじ
借家人賠償責任保険(借家人賠償責任補償特約)とは?
借家人賠償責任保険(特約)について基本的なところを確認します。一言でいうと賃貸住宅用の火災保険に付帯する特約の補償です。
単独の保険ではありません。
最近は「借家人賠償責任補償特約」ことの方が多いですが、ここでは便宜上、「借家人賠償責任保険」と両方使います。
借家人賠償責任保険(特約)とは?
借家人賠償責任保険特約あるいは借家人賠償責任補償特約などといいます。保険会社によって多少言い回しや内容違います。
この補償は特約なので単独加入する補償ではありません。
火災などの偶然な事故により賃貸している部屋などに損害があったとき、家主に対して原状回復して損害賠償しなければなりません。
これは民法415条の「債務不履行責任」にかかるところです。
つまり賃貸借契約に基づいて契約期間満了後、家主に借りていた物件を元どおりにして返す必要があります(原状回復)。
これが自分の責任で火災を起こしたことでできなくなります。
借家人賠償責任保険(特約)とは、このようなときに大家に対して損害賠償する火災保険に特約としてつける補償の一つです。
損害保険会社によっては、「借家人賠償責任補償特約」「借家人賠償責任」などと言います。
損保業界の人は「借家賠」と略して呼ぶこともあります。
この補償は特約ですので賃貸住宅用の火災保険は、セットプランで販売されているケースが一般的です。
賃貸住宅の火災保険なので基本の補償は入居者の家財の火災保険です。正確な言い回しではありませんが、家財保険などと言われることもあります。
家財の火災保険がメインの補償で、借家人賠償責任保険は家財保険の中にある特約補償の一つと考えてください。
借家人賠償責任保険の加入は原状回復のため義務?
入居者には大家に対して借りた住宅などの原状回復義務があります。
大家からすると何かあったときに補償されないと困るので家財の火災保険に借家人賠償責任保険(+個人賠償責任保険)をつけるような契約にするわけです。
それぞれ大家に対する賠償、第三者に対する賠償(例えば賃貸マンションで漏水事故など)を補償します。
大家からすれば自分の所有物件で事故やトラブルがあった際、入居者が加害者で経済的に損害賠償できないとトラブルが大きくなります。所有者としては困るわけです。
そのため物件を借りる際の賃貸借契約で保険の加入を義務付けるような契約になっていることはあるでしょう。
勘違いしないようにしてほしいのは、保険で補償されるのは事故などが原因のものに限ります。
原状回復義務があるからといって、ペットやたばこなど普通に生活して住宅が傷んだものについての退去時の原状回復などはこの補償とは別です。
退去時に借家人賠償責任保険は使える?
賃貸物件を退去する際に原状回復の義務がありますが、それではその現状回復に借家人賠償責任保険が使えるかというと使えません。
借家人賠償責任保険の補償を受ける人(被保険者といい、特に指定しなければ契約者と同一)が、火災など偶然な事故を起こして借りてい物件に損害を与えた場合が対象です。
経年劣化や自然消耗など偶然な事故ではない場合について費用は補償されません。
個人賠償責任保険(特約)と借家人賠償責任保険(特約)は何が違うのか?
賃貸マンションなどで階下の人に漏水を起こして迷惑をかけたり、火災を起こして周囲に「重過失」で類焼させた場合、個人賠償責任保険で被害者に損害賠償をします(軽過失の場合はなし)。
入居者が自分の過失(落ち度)で火災を発生させて、「家主」に損害賠償しなければならないときには個人賠償責任保険特約では保険金は支払いになりません。
このとき家主に対して損害賠償する補償が、借家人賠償責任保険です。
このように借家人賠償責任保険と個人賠償責任保険は補償内容や範囲が違うため、それぞれ違う役割で賠償責任をカバーしています。
いずれも第三者に損害賠償する保険ですが、個人賠償責任保険は他人の部屋や家など(第三者本人やその人の所有物)に損害を与えた際に損害賠償します。
借家人賠償責任保険は家主から借りている自分が居住している部屋や家が対象であることが違いです。
そのため賃貸住宅入居の際には借家人賠償責任保険と個人賠償責任保険を付帯した火災保険の加入が求められるのです。
どちらも特約のため火災保険に付帯して加入しなければなりません。
賃貸物件ですから、入居者が加入できるのは家財だけです。そのため家財の保険にこれらの特約を付帯して契約するわけです。
借家人賠償責任保険の保険料(掛金・料金)の目安と相場
個別に補償をカスタマイズすることも可能ですが、賃貸物件用の火災保険は賃貸借契約をするときに不動産屋等で火災保険を一緒に契約するケースが多いのが特徴です。
最近では賃貸物件用の保険もネット加入がでてきましたがまだまだです。
そのためあまり手が掛からないようにセットプランになっています。家財の火災保険をメインの契約にして個人賠償責任保険や借家人賠償責任保険を特約で付帯します。
単体の保険はありません。
住宅の場合は通常は賃貸借契約が2年間ですので、これらの保険も2年一括の一時払いで契約します。
補償内容にもよりますが、2年一括の保険料(掛金)で10,000円程度から5,000円刻みで25,000円くらいまでの保険料で設定しているケースが多いです(地震保険別、火災保険に借家人賠償責任保険込み)
最近はネットなので安いものだと5,000円くらいからのものもでています。
借家人賠償責任保険の保険金額(契約金額・補償額のこと)は、賃貸用住宅だと1,000万円くらいから2,000~3,000万円程度で設計されているケースが比較的多いでしょう。
決め方として保険金額は、借りている物件の平米数など広さによるのが一般的です。
一つの目安ですと東京のマンション構造、借家人賠償責任保険の保険金額を2,000万円で設定すると2年一括払いで借家人賠償責任は、3,500円弱くらいです。
もちろん木造などになれば保険料は高くなりますし、保険金額によって保険料は変わります。
借家人賠償責任保険の補償範囲(火災・水漏れ等)と金額、比較方法
借家人賠償責任保険の補償範囲と比較
借家人賠償責任保険は、主に火災や破裂・爆発、水濡れなどを補償範囲として、家主より借り受けている住宅に損害をだしたときに補償されます。
一部の損保でこれらに加えて「不測かつ突発的な事故」を補償する借家人賠償責任保険もあります。
入居者が誤って住宅の一部を壊してしまったなどの場合です。
これらは自然災害などと違って人の落ち度などで発生する事故です。
なかには火災だけ、火災とガス爆発のみ補償するケースもあります(昔の借家人賠償はそれだけでした)。
- 火災、破裂・爆発
- 火災、破裂・爆発、盗難、水漏れ
- 火災、破裂・爆発、盗難、水漏れ、不測かつ突発的な事故
補償範囲としては上記のようなパターンです。特に真ん中のパターンが比較的多いです。家主に損害賠償する補償ですから、人災によるものが中心です。
自然災害などでは入居者の責任は普通は関係ありませんから、補償される範囲も限定されます。
水漏れなどまで対象にしていないケースもあるのでこの違いには注意してください。
保険金額(契約金額・補償額)の設定
また保険金額(補償額つまり契約金額のこと)も安いと500万円くらいから億単位まで設定できます。
借りている住宅等の広さや構造などによって変える必要があるので、掛金だけでなくよく確認してください。
セットプランのものだと保険金額1,000万円~2,000万円程度のものが多いでしょう。
家主(第三者)に損害賠償する補償ですから、自動車保険の対人賠償・対物賠償などと同じです。
共済・少額短期保険と借家人賠償責任保険
借家人賠償責任保険、つまり賃貸用の家財の保険は損害保険会社以外にも取り扱うところがあります。
具体的には共済と少額短期保険です。それぞれみていきましょう。
共済(県民共済、こくみん共済coop(全労済))
県民共済
新型火災共済に「借家人賠償責任特約」の付帯が可能です。火災、破裂・爆発、漏水等が対象になります。
こくみん共済coop(全労済)
住まいる共済に「借家人賠償責任特約」の付帯することができます。県民共済同様に火災、破裂・爆発、漏水等が対象です。
少額短期保険
通称ミニ保険と言われている少額短期保険も賃貸物件用の家財の保険(+借家人賠償責任保険)は、かなりの少額短期保険業者が取り扱っています。
少額短期保険では地震保険をセットで加入することができないのと、保険金額(契約金額)の上限が1,000万円までなど一部制限があります。
賃貸借契約を仲介する不動産業者が損害保険会社ではなく、少額短期保険を中心に火災保険を取り扱っていると、契約先が少額短期保険業者になることがあります。
仕組みが違う部分もあるので覚えておいてください。
借家人賠償責任保険と修理費用の補償の違い
借家人賠償責任保険を付帯する契約には、たいてい修理費用なる補償も別に設けられていることがあります。
両者の違いをみておきましょう。
借家人賠償責任保険
火災などを起こして家主に損害賠償するケースでは、借家人賠償責任保険で補償
修理費用
家主との賃貸借契約に基づき、又は緊急(緊急に応急修理などが必要な場合)に自己の費用で修理した時には修理費用から補償(家主への損害賠償責任の有無は関係なし)
法人や店舗・事務所でも借家人賠償責任保険は関係ある?
賃貸物件の入居者が家主に対して損害賠償する補償ですから、個人か法人か、住宅か店舗・事務所かなどは関係ありません。
法人や店舗であっても関連する事故を起こせば同じことですので、この補償は必要だと考えてください。
自社の事務所や店舗はもちろん社宅で会社が借り上げた物件に社員が住んでいるときでも、法人への家主に対する債務不履行を問われることはあります。
ネットでおすすめの借家人賠償責任保険の契約はできる?
少額短期保険業などは、賃貸用の家財の保険はネット契約が主流です。その意味では借家人賠償責任保険もネットでの契約が可能です。
まだ主流ではないものの従来の損保でもネットで安く賃貸用の火災保険(借家人賠償責任保険特約付き)に加入できるものも販売されはじめています。
不動産屋さんなどで勧められるセットプランありきではないことも覚えておきましょう。
借家人賠償責任保険の加入先は自分で選べる?(加入を強制させられたら)
借家人賠償責任保険の加入先は自分で選べる?
賃貸物件を借りる際に住宅でも店舗でも、火災保険はもちろん借家人賠償責任保険は必要です。
しかし不動産屋さんで物件を借りるなら指定するところで契約するように言われることがあります。
加入は必要であるものの、仲介をする不動産屋が保険代理店をやっているあるいは保険代理店を紹介するのでそこで加入するような話がでてきます。
物件を管理する側としては、同じところで火災保険や借家人賠償責任保険に加入していてくれれば管理も楽ですし、補償内容もすぐに分かるので便利です。
賃貸物件の契約時に火災保険の加入を条件にしているケースもあります。
加入してくれればいいというケースや上記のように自社が関係しているところで加入するよう言われることもあります。
喧嘩する必要はありませんが、加入していることが前提で加入先まで指定される必要はありません。
また賃貸不動産の場合はたいていセットプランです。
フリープランで設計を個別に作れないようになっていますがそんなことはありません。
相手が面倒に思って断ってくることはあるかもしれませんが基本的に個別設計も可能です。但し、ちょっと面倒くさい顔はされるかもしれません。
きちんとした内容のものは当然として自分で探して加入したい、あるいは個別にプランを作って貰えないか話をしてみてください。
家主の火災保険があれば、借家人賠償責任保険はいらない?
借家人賠償責任保険について色々調べた人は、家主自分で火災保険に加入していれば、それで損害はカバーされるのではないかと考えた人もいるでしょう。
これについてはネット上で情報を出している人もいます。
具体的にその根拠になっていることを解説すると、火災保険には、「代位求償権不行使特約」というものが付帯していることがあります。
借家人賠償責任保険は、損害賠償責任する保険ですから、加害者(借り主)が被害者(家主)に弁償すべきものです。
相手に償いを求める権利を「求償権」といいます。
このとき家主(被害者)の火災保険を使って損害をカバーすると、本来損害賠償を加害者(借り主)に請求する権利が被害者(家主)から保険会社に移ります(代位)。
保険会社がその権利を行使しない特約ということです(不行使)。
しかし借り主である借家人の故意または重大な過失によって生じた損害に対し保険金を支払った場合についてはそれが除かれます。
借家人賠償責任保険に入らなくていいとも言い切れないのです。
一般的に賃貸不動産を持つ家主なら、火災保険に加入してはいるでしょう。絶対に加入しているかは分かりませんし、実際にどのような補償になっているかは分かりません。
賃貸物件では、火災保険の加入を条件にして物件を貸すケースは多いので、実際には家主の火災保険があるから加入しないというのは簡単でもありません。
他にも漏水などによるリスク(個人賠償責任保険)や火事になった場合に自分の家財の補償も必要です。
まとめ
借家人賠償責任保険(特約)の保険料と保険金額の目安と相場は?、についていかがでしたか。
賃貸住宅住まいの人には、賃貸借契約の際に必ずついて回る保険です。
賃貸住宅の物件の入居者は、自分の家財の火災保険、周囲に迷惑をかけた際の個人賠償責任保険、家主に対する偶然な事故の損害賠償について借家人賠償責任保険で補償します。
細かい法律の定めなどが関係してきますが、法律上の責任関係を理解して必要な補償をつけておきましょう。
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