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失火責任法の重過失とは?失火法の適用範囲と火災保険との関係まとめ

 2016/12/26 備える
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糸魚川の火災では推定で150棟もの被害がありました。火災の場合は、自らの失火はもちろん放火や寝たばこ、近隣からの類焼などさまざまな原因で発生します。

実際に自分が火元になって近隣に類焼したときに、どのような責任が発生して火災保険などで対応できるものなのか気になるところです。

ここに関係してくるのが、法律上は民法709条及び失火責任法です。類焼させた側、される側、それぞれの立場になったときに、どうなるものなのかまとめます。

失火責任法と民法、重過失の有無

失火責任法の前に民法709条の不法行為責任について先に確認しておきます。先に法律の内容は以下の通りです。

【民法709条】

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

つまり自分の落ち度(過失)などで人様に迷惑かけたら損害賠償(弁償する)責任がありますよと、法律で規定しているわけです。もちろん道義的にも責任があるでしょうが、法律でそれを明記しています。

失火責任法とは?

失火責任法とは、「失火の責任に関する法律」のこと言い、「失火責任法」「失火法」などと略して呼ばれます。明治32年にできた古いまた非常に短い法律です。内容は以下の通りです。

【失火の責任に関する法律】

民法第709条の規定は、失火の場合には適用せず。但し、失火者に重大な過失があったときは、この限りにあらず。

民法709条の不法行為責任から考えると、失火により他人に損害を与えた場合、失火した人に故意や過失があれば損害賠償責任を負うことになります。当然弁償してくださいということです。

失火責任法が明治32年にできた法律といいましたが、特に当時は木造住宅が多く、失火すると非常に多大な損害が発生することが背景にあります。

一個人ではまかないきれないほどの損害が発生するため、軽過失による失火については民法709条の適用をしないことになっています。

重大な過失(重過失)がある場合については、民法709条の規定の適用により損害賠償責任を負うこととされています。

失火責任法の重過失とは?

そうなるとそもそも失火責任法における重過失がとは何かということになります。重過失とは、著しい落ち度。わずかな注意を払っていれば予見、防止できたはずなのに、それを漫然と見過ごしたということです。

例えばよく引き合いに出されるのが下記の判例です。

  • 台所でガスコンロにてんぷら油の入った鍋をおき、火をつけたまま台所を離れたため、過熱されたてんぷら油に引火して火災が発生(東京地裁)。
  • 電気コンロを点火したまま就寝、ベットからずり落ちた毛布が電気コンロにたれさがり、毛布に引火し火災(札幌地裁)

勘違いしないでほしいのは、天ぷら揚げていたら重過失というわけでもありません。個別の火災の状況や事情はそれぞれ異なるからです。

損害保険会社が決めるわけでも、法律の専門家が決めるものでもないのです。最終的な判断は裁判所ということです。

失火責任がある場合、火災保険で対応できるのか?

一個人の人が、近隣に類焼させてしまい、さらに重過失により損害賠償責任を負うなら火災保険で支払ってくれるものなのでしょうか。火災保険ではありませんが、保険で損害賠償することは可能です。

具体的には、個人賠償責任保険(個人賠償責任補償、日常生活賠償など)でカバーすることができます。但し法律上の損害賠償責任がある場合が前提です。

近年、自転車保険などで加害者になって相手を怪我をさせた場合の損害賠償を心配する人がいますが、これと同じ補償です。

この補償は特約なので、火災保険や自動車保険、傷害保険などに特約で付帯します。そのためよく調べたらすでに加入していたという人も多いはずです。

できれば保険金額(契約金額、相手への損害賠償金額の上限)は億単位で付帯していればそれに超したことはありません。

実際に保険で対応できるのは、あくまで経済的な損失の部分です。心情的にはそこに住み続けるのま難しいケースもでてくるでしょうから、そうした部分も考慮しておいてください。

失火責任法と火災保険の類焼損害補償特約

火災保険には、「類焼損害補償特約」という特約があります。特約名の通り、火災で類焼した場合の損害を補償する特約です。この場合に誰が補償されるのかというと、自分ではなくて第三者である他人が対象になります。

そもそも失火責任法で重過失でなければ、責任は負わないのに保険がでるのかということは気になりますね。

類焼損害補償特約は、第三者に損害賠償(弁償)する保険ではありません。加害者に被害者に損害賠償する保険は、「○○賠償責任保険」となります。

自動車保険の対人・対物と言われているのも、対人賠償責任保険、対物賠償責任保険です。

類焼損害補償特約は、第三者の火災保険の補償の不足をカバーするものです。そのため被害を受けた住宅で火災保険に加入しているなら、それを使うかたちになります。

しかしそもそも火災保険に加入していない、加入しているが保険金額(契約金額、つまり補償額)が不足しているなどの場合には適用することができます。

1億円くらいまでの金額が一般的ですが、個人賠償責任保険や類焼損害補償特約などの特約も検討しておくといいでしょう。

糸魚川の火災事故と失火責任法、保険対応

糸魚川の火災では多くの方が被害にあっています。また記憶に新しいところでは2014年1月3日に東京の有楽町駅の近くで発生した火災では、東海道新幹線が一時全面運休になるなどやはり多くの被害が発生しました。

こうした損害には火災による直接的な被害(建物が全焼した)の他にそこから発生する別の損害(新幹線が止まって違う損害が発生)もでてきます。それぞれの損害は分けて考える必要があるのです。

法律上のことは別な法律の専門家にお任せするとして糸魚川の火災発生について保険の観点から損害賠償について考えてみましょう。

失火元になった人に損害賠償責任があるかどうかは、解説したように重過失の有無によります。仮に重過失の認定があったとした場合、保険の適用はというと個人賠償責任保険の範疇ではありません。

というのも、報道では火元になった人は中華料理店を経営していて、火のついたコンロにかけた鍋が原因のようだとあります。

業務に関わる部分は個人賠償責任保険では対象になりません。理由は業務用の保険が別途あるためです。具体的には施設賠償責任保険などになりますが、この保険に加入しているかどうかというところです。

仮に加入していた場合でも1名あるいは1事故あたりの保険金額が決められているケースが一般的です。

まとめ

失火責任法の重過失は?についていかがでしたか。火災保険で全焼にまでなるケースは損害保険の一つの支社などでも年間でそう何度もあるものではありません。

火災保険でお金がでるといっても、思い出の品物や大切なデータなどは戻ってきません。できることに限度はあるでしょうが、自分の身を守るために自分の火災保険をしっかりつけておくようにしてください。

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平野 敦之

平野 敦之

ひらの あつし
平野FP事務所代表。(CFP ®・1級FP技能士・宅地建物取引主任者)。東京都出身。大学卒業後に証券会社、損害保険会社等で実務を経験した後1998年に独立。FP歴18年。


・個人のお金の悩みやお困りごとのサポート。
・法人の経営者のお金の悩み、営業を支援。

TVやラジオ、新聞、雑誌など直近の10年間で200回以上の取材を受ける。同業であるファイナンシャルプランナーに対しても情報提供の執筆や講演を行う。

講演・セミナー活動も大学での非常勤講師や国民生活センターや行政機関、大手企業や団体など幅広い実績を持つ。総合情報サイトAll Aboutにて損害保険ガイドを務め、約13年に渡り定期的にマネー情報の発信を実施。その他の媒体も含めてWEB上での執筆記事は400本以上。

現場の相談を中心業務と考え活動を続ける。

【著書】いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)http://amzn.to/2csBEsM
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