中小企業の役員報酬の平均相場と決め方・変更時期と方法のポイント
社長など役員の役員報酬(給料)は定期同額が原則です。そのため期の途中で売上や節税などの都合で役員報酬を好き勝手に変更することはできません。
■この記事で学べること
【1】中小企業の役員報酬の平均相場と目安
【2】役員報酬の決め方
【3】役員報酬は定期同額、変更が可能ならその時期は?
中小企業・零細企業の場合、資金繰りにも関係する役員報酬の相場や決め方、変更についてまとめて解説します。
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この記事のもくじ
中小企業・零細企業の役員報酬の平均相場と目安
はじめてに統計を確認して社長や専務などが役員報酬をどのくらい取っているのかみていきましょう。
国税庁の調査です。この統計自体は資本金別に分かれています。
この記事では中小企業の役員報酬をテーマにしているので、資本金2,000万円未満を使います。
中小企業の役員報酬の平均相場(資本金2,000万円未満)
■企業規模別及び給与階級別の総括表(役員) 資本金2000万円未満
(単位:人)
100万円以下 | 115904 |
200〃 | 204186 |
300〃 | 203560 |
400〃 | 189336 |
500〃 | 162588 |
600〃 | 163717 |
700〃 | 89588 |
800〃 | 83132 |
900〃 | 78137 |
1000〃 | 75709 |
1500〃 | 144285 |
2000〃 | 52914 |
2500〃 | 24532 |
2500万円超 | 31126 |
合計 | 1618714 |
出所:国税庁 令和5年分民間給与実態統計調査 より筆者作成
資本金2,000万円未満といっても中小企業・零細企業ではまだ規模にかなりばらつきがあります。
1,500万円の層に少し集中しているようです。
法人化していても一人社長も会社は多いですし、夫婦あるいは親子で会社をしている場合は家族が役員になって所得を分散しているケースもあります。
このような場合は世帯年収でみていかないと実態を把握しにくいでしょう。
資本金2,000万円未満の統計なので、企業規模が大きくなっていくとこの割合もまた変わってきます。
役員報酬の3つのルールと決め方
役員報酬の決め方の前に、役員報酬をどう設定するかはルールがあります。
役員報酬を設定する3つのルール
- 役員報酬は毎月同じ金額であること(定期同額)
- 事業年度開始後は一度だけ変更可能
- 役員賞与は原則経費に認められない(受け取った個人にも当然課税)
※株主総会で決議する
※会社を新設した場合、設立後3ヶ月以内に役員報酬を決める
一番のポイントは役員報酬が定期同額であるということです。
この月は利益が上がったから役員報酬を増額、翌月は利益がでなかったので減額して次にまた増額するというわけにはいきません。
事業年度がはじまった後に一度だけ変更することは可能です。この詳細は後で解説します。
役員賞与について原則と書いてあるのは、「事前確定届出給与制度」といって決算が済んだ後に、次の事業年度のいついつにいくら役員賞与を取るか届け出る制度があるからです。
こうすれば役員賞与も可能は可能ですが、次の事業年度の収益の見通しが立ってないとなかなか難しい面もあるでしょう。
売上が安定していないうちは無理のない範囲で役員報酬を決めておく必要があります。
役員報酬の決め方
■法人としての視点
役員報酬を高くすると、経費が増えるため法人の利益が少なくなります。その分法人税の負担が軽減されます。
一方で報酬が上がると、標準報酬のランクが上がり社会保険料の負担が増えます。
■役員としての視点
現在の税率は法人税は下がる傾向にあります。個人の所得税は超過累進税率という所得の増加とともに税率が上がる仕組みになっています。
役員報酬を引上げて個人で受け取る報酬を増やしても税金の負担が増えることがあります。
特に小規模の企業であるほど、「法人」と「個人」のお金の一体感が強くなります。但し、実際には法人と個人は別であるということがポイントです。
まずは次の流れを意識してください。
- 個人に必要な生活費
- 法人で事業を回すのに必要な経費
- 節税の観点でのシミュレーション
個人でも法人でも生活や経営に最低限かかる費用があります。
それを踏まえて法人税、個人の所得税・住民税、社会保険料の負担をそれぞれ少なくできる水準でシミュレーションしてみましょう。
法人に余裕がでてくれば退職金制度などを整備して、役員報酬を減らして退職金に資金をまわすという方法などもでてきます。
役員報酬は定期同額、変更が可能ならその時期は?
役員報酬の変更
役員報酬には毎月同じ金額で支払う(定期同額)のルールがありますが、実は変更することは一度だけ可能です。
会社設立の時から3ヶ月以内に役員報酬を決めるといいましたが、翌期以降については事業年度開始から3ヶ月以内であれば役員報酬の変更が可能です。
新たな事業年度がはじまった直後で売上が見込みよりも上がるあるいは下がるなどの動きがあるなら、こうした方法も検討してみてください。
役員報酬の支払いルールを守らないとどうなる?
定期同額というかたちで役員報酬のルールが決められている理由は、課税逃れとみなされることがあるからです。
役員報酬の支払いについて決められたルールが守られていない場合、増加した報酬は経費(損金)として認められません。
経費(損金)扱いできなければ役員報酬を増やした意味はありません。
税金の負担や資金繰りにも影響がでてくることもありえます。
例外としては職責が変更(昇格)された場合の役員報酬の増額や懲戒処分や病気、職責の変更などで減額が認められることがあります。
事業年度開始から3ヶ月を超える役員報酬の変更はかなりの例外です。
顧問税理士や税務署などに確認を取るようにしてください。
まとめ
他の会社役員はどのくらい報酬を取っているのか、平均相場などをみてきました。
個人事業主ではなく法人成りしていると、節税の観点から家族が役員になっているケースも珍しくありません。
中小あるいは零細規模ならなおさらでしょう。
経営上重い責任を背負っている経営者だからこそ、法人を上手く活用して個人や世帯での手取りを増やすことが重要なのです。
単純に報酬を上げるあるいは下げるというだけでなく、法人だから使える制度もありますから手取りを意識して役員報酬を決めてください。
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