火災保険の長期契約/長期一括払のメリット・デメリットと割引率のまとめ
火災保険の補償内容を変更せずに掛金をお得に安くする方法の一つに長期契約・長期一括払があります。
契約期間や払込方法を長期にまとめて支払うやり方です。
掛金が全国平均で上昇する動きがある中で、検討したい方法です。火災保険は長期にまとめて支払うほど安くなる仕組みになっています。
■この記事で学べること
【1】火災保険の長期契約・長期一括払の割引率(長期係数)
【2】長期契約・一括払のメリット・デメリット
【3】火災保険の長期契約の払込方法(長期一括払、長期年払など)と決済方法
【4】長期契約の一括払は解約のポイント、長期契約と短期契約どちらがお得?
【5】火災保険の長期契約のおすすめの比較と使い方、考え方
火災保険の長期契約・長期一括払いのメリット・デメリットを確認して、割引率(長期係数)やその優位性やおすすめの比較や使い方についてFPがまとめます。
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この記事のもくじ
火災保険の長期契約・長期一括払とは?
長期の火災保険契約とは、火災保険を複数年(2年~5年)でまとめて契約することです。
火災保険の長期一括払いは、複数年まとめて契約した分の保険料をはじめに全て支払うことをいいます。
まとめて保険料を支払う分、保険料は安くなります。
例えば火災保険を5年間で長期契約すると、長期係数が適用されて1年間の保険料×契約年数分(5年)の保険料ではなく、割引率が適用された長期係数が適用されます。
そのため1年契約の保険料を長期契約の年数分続けるよりも保険料が割安になるのです。
ところが収支の悪化などを背景にこれまでにはなかったかたちで住まいの保険(火災保険・地震保険)を取り巻く環境が変わりつつあります。
火災保険の超長期契約は廃止、最長5年に改正(2022年10月)
2015年10月1日および2022年10月1日の保険始期の契約から、長期契約のルールが大きく改定されました。
もともと火災保険は最長36年間契約可能でしたが、下記のように改正されています。
- 2015年10月1日:最長10年
- 2022年10月1日:最長5年
*保険会社によって多少改定時期がずれていることがあります。
いずれにしても現在5年超の長期の火災保険契約はできません。
この背景には主に次のような理由があります。
- 自然災害や水濡れ損害による保険金の支払いが近年増加していること
- 築年数の経過した物件が増加していること(新築物件に比べて保険金の支払いが多い)
このところ異常気象により集中豪雨や台風、竜巻、水害、土砂崩れ、大雪などの自然災害で毎年のように各地で被害があります。
これらの将来予測が難しいということになると36年先の契約まで確定した掛金で契約を引受けることが難しいということです。
また以外と知られていませんが、80~90年代の日本の景気の良いときの大量供給されたマンションが築年数の経過に伴い水漏れ事故が多発しています。
こうしたことを背景に火災保険の収支が悪化、それによって超長期の契約が難しくなってしまったのです。
なお、大手損保を中心に2019年10月に火災保険料率が改定、さらに次の改定の届け出がでている状況です。
火災保険の割引率(長期係数)とは?
火災保険の長期係数とは、簡単に説明すると長期契約の割引率と考えてください。
例えば火災保険の掛金が年間1万円だとすると5年間では5万円です(1万円×5年間)。
しかしはじめから10年間の長期契約にして掛金を一括払にすると割引されます。
1万円×5年間ではなく、1年間×年数に応じた長期係数で計算します。仮にこの係数が4.7なら1万円×4.7が保険料になります。
一例として挙げると長期の契約年数に応じて下記のようになっています。
長期係数も保険料率と同様に改定されますし、長期係数も一律ではないため、損保によって異なると考えてください。
長期契約・一括払のメリット・デメリット
火災保険の長期契約・一括払する場合、それぞれメリット、デメリットがあります。
以前ほどではありませんが、念のためこれらの内容を確認しておきましょう。
火災保険の長期契約のメリット
- 火災保険の掛金が長期にするほど割安になる
火災保険の長期契約のデメリット
- 長期一括払は掛金が割安であるが、一時的な負担が大きい
- 新しい火災保険がでてきたときに補償内容が古いまま、見直しする機会がなくなる
これらのメリット・デメリットどちらも改定前ほどメリット・デメリットが大きくなくなっています。
火災保険もこの10~15年ほどでかなり変わってきました。現在では長くても10年ですからタイミングによっては中途解約して契約し直すことも可能です。
それでも掛金を少しでも安くするには、長期契約・長期一括払が一番であることは変わりません。
火災保険の長期契約の払込方法(長期一括払、長期年払など)と決済方法
火災保険の長期契約の払込方法
火災保険の長期契約も払込方法は一つではありません。
- 長期一括払
- 長期年払
まとめて保険料を支払うほど割引率は大きくなりますので、長期一括払いにするのが保険料が一番割安です。
損害保険会社ごとに規定が異なります。長期一括払いは通常どこでも取扱いはありますが長期年払いなどは会社によります。
長期契約にして月払いなどだと割引率がほとんどないケースもあるので注意してください。
しかし近年火災保険の改定が続いていることから、今後の改定の影響を避ける意味で長期年払いなどを選択するのも有効な方法です。
火災保険の掛金の決済方法
今は掛金の決済方法も多様化していて、指定の金融機関の口座から引落、クレジットカード払い、コンビニ払いなどから選べます。
口座引落などだと契約するタイミングによって、保険始期(補償がはじまるとき)よりも後に引落がかかることがありますが、補償の上では問題ありません。
地震保険に加入している場合には地震保険の動向にも注意が必要
火災保険の長期契約を検討する際に注意したいのが地震保険です。地震保険の保険期間は1年から5年です。
火災保険が長期契約の場合、地震保険は火災保険の期間に合せるか1年の自動継続になります。
火災保険を長期契約にしているのに地震保険を1年にするメリットや理由はあまりありません。
そうなる地震保険も長期契約にしているのが一般的なケースです。地震保険の長期係数も改定が続いています。
こくみん共済coop(全労済)や県民共済など火災共済の長期契約は?
火災保険の話をすると決まってでてくるのが、全労済や県民共済といった共済との比較です。
これら2つの火災共済の契約ですが、今回のテーマである長期契約はありません。火災共済は原則1年契約になります。
その分1年ごとに剰余金を割戻す制度があったりしますので、この辺りは損害保険会社の火災保険とは仕組みが違います。
火災保険と火災共済では、補償内容(保障内容)が違いますので、同じ土俵の乗せて比較するものではありません。
どちらも一長一短があります。内容が違うのにどちらも似たようなものだと思って、いずれかの契約をするのはナンセンスです。
補償内容(保障内容)の違いをよく比較・確認して、どうするのが一番ニーズにあっているか検討してください。
長期契約の一括払は解約すると掛金はどうなる?
改定前なら35年や10年など、一括払で掛金を支払うと解約したときの取扱いを気にする人もいます。
解約した場合には所定の期間に応じて解約返戻金が支払われます。
日割りではありませんが所定の係数を使いますので、日割りに近いイメージの返金になります。
火災保険は長期契約と短期契約どちらがお得?
長期契約と短期契約はどっちがお得?
保険料負担を考慮すると、長期一括払いの契約がやはりお得度が高くなります。
なお、火災保険は長期だけでなく、短期契約(1年未満)もできますので念のため知っておいてください。
あまり使うことはないでしょうが、短期契約にする方法と1年契約の月払いにして所定の期間で解約することもできます。
火災保険や地震保険の改定があって中途解約する場合には利用することがあります。
またここまで解説したように長期契約、且つ一括払にする方がお得です。
まとまった資金の用意が必要ですが、ボーナスを利用する、毎月少しずつ積立てるなど工夫してください。
次にどのくらいの人が長期契約をしているのかみてみましょう。
長期契約をしている人の割合
損害保険料率算出機構の火災保険・地震保険の概況(2018年度)から、火災保険を長期契約している人の割合をみていきましょう。
同統計より筆者が計算したものです(小数点第3位以下切り捨て)。
- 保険期間01年:28.58%
- 保険期間05年:39.94%
- 保険期間10年:7.01%
保険期間1年未満の短期契約を入れると、もともと10年契約できたときからでも保険期間5年までの契約に92.31%が集中しているのです。
5年超の契約の場合には一括して支払う予算上の問題や地震保険に加入している人は地震保険が5年までしか加入できないことも関係あると考えます。
火災保険の長期契約のおすすめの比較と使い方、考え方
最後に火災保険の長期契約のおすすめの比較方法や使い方を解説しておきます。
長期係数そのものは損害保険会社ごとに変わるものではありません
。長期年払・月払などの払込には違いがありますが、根本的な比較は火災保険の補償内容そのものです。
すでに契約期間35年などの超長期の契約がある人、これから火災保険に加入する人がいるので分けてみてみましょう。
火災保険の契約が10年超の契約済みの人
こうした契約を保有している人は、原則このまま契約を保有する方が有利です。
現在5年超の契約ができないこと、今後も火災保険の改定が予想されるからです。
あまり古い契約だと火災保険もかなり多様化してきているので補償の側面からは見劣りすることがあります。
多少割り切りが必要ですが、掛金の負担を考えるとそのままが無難です。
多少予算に余裕があるなら、家財の契約を建物と分けて別に加入して今の最新のものにしておくことも方法です。
これから火災保険に加入する人
最長でも火災保険の契約は5年までになります。
予算が許せば火災保険(5年)、地震保険(5年)それぞれ最長の期間で契約して掛金も長期一括払にするのが前提です。
こうした契約方法が最も負担が軽くなります。
長期契約で掛金の長期一括払が難しい場合のおすすめは長期年払契約
払込方法のところで解説したように一括払の他にも長期年払の契約もあります。
一括払ほどではありませんが、割引はあるので予算が厳しければ年払いも検討してください。
契約期間が長期なだけで支払いは毎年なので1年契約と感覚的にはあまり変わらないでしょう。
まとめ
火災保険の長期契約/長期一括払のメリット・デメリットと割引率のまとめ、についていかがでしたでしょうか。
自然災害の増加などで火災保険の収支が悪化して保険料は以前より増加傾向なのは解説したとおりです。
火災保険の長期契約・長期一括払で最大限の割引率(長期係数)を使うことを考えてください。
また自分の住まいの周辺の住環境をよく確認して、必要な補償を厚く、そうでない補償は削る・減らすなどすることが合理的な火災保険の補償をつける方法です。
火災保険の長期契約・長期一括払は手軽に保険料を軽減できる方法ですので、一度検討してみてください。
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