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法人の節税保険・経営者保険の仕組みと損金の経理処理の基本

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法人の節税保険・経営者保険の仕組みとは?

法人の節税保険・経営者保険の仕組みとは?

節税保険・経営者保険などと書きましたが、大きな括りで言えば「法人保険」です。

名前の通り法人で加入するために作られた生命保険ですが、必ずしも法人で加入する生命保険=節税保険というわけではありません。

また「節税保険」「経営者保険」「法人保険」という名称の生命保険商品はありません。

2019年に特に節税目的の法人保険に大きな改正が入りました。詳細はこの後解説しますが、今後「節税」という言葉は販売の現場では使われなくなっていきます。

法人の節税保険・経営者保険とは?

大切なことなので最初によく理解しておいてほしいところですが、法人契約で生命保険に加入する目的は法人税対策のためだけではありません。

加入目的によって加入する生命保険や使い方も違うのです。具体的には法人が加入する生命保険の目的には次のようなものがあります。

  1. 決算・法人税に関する対策
  2. 事業資金の確保対策
  3. 経営者の自身の保障
  4. 経営者や従業員などの退職金準備
  5. 法人の福利厚生
  6. 事業承継対策

決算で利益が出すぎたので法人税の対策をができないかというのはよくあることです。

また中小企業では経営者自身が事業運営に大きな影響があるため、万が一のときの事業資金や経営者自身の保障も大切なことです。

スタッフが増えてくれば福利厚生や従業員にも退職金制度を考えたりするなかで生命保険を活用する方法があります。

経営者自身の退職金ももちろんですし、経営者の年齢によっては事業承継も考えていかなければなりません。

節税保険・経営者保険とは、このように数ある法人のニーズを満たす保険の一つと考えてください。

生命保険の加入だけでは対策にならない?

さまざまな加入目的があることはお話しましたが、生命保険の加入だけでは完了しないケースもあります。例えば退職金の準備で生命保険を利用する場合です。

退職金を生命保険などで支払うようにすると、法人に退職金規程などの整備が必要です。

法人で加入する生命保険の場合にはこのように規定の整備なども必要なことがあるので覚えておいてください。

法人契約の節税保険

法人の節税は、税法に則った合法的なものでなくてはなりません。法人の節税保険に加入することで考えられる効果は次の2つです。

  • 法人税を減額する
  • 法人税の支払いを先延ばしにする(課税の繰り延べ)

企業が支払った経費は法人税を計算する際、条件を満たせば損金計上することができます。これによって税金を減額することができます。

生命保険に加入すると、支払った保険料は加入保険の種類によって全額損金・一部損金として経理処理することができます。

その後何かあった場合の保険金や解約返戻金、満期保険金などを活用するのが一般的な仕組みです。

節税のキモはこのお金が改めて戻ってくるときです。

法人保険も積み立て型と掛け捨て型で活用の仕方が違う

法人・節税保険は積み立て型と掛け捨て型で活用の仕方が違う

生命保険にも積み立て型と掛け捨て型があるのは、法人契約の場合でも同様です。当然、法人の経理処理も違います。

最初にお話した何のために法人で生命保険に加入するのかによって色々変わってくるのです。ポイントの一つは将来に向かってお金を残すかどうかというところでしょう。

それぞれ分けてみていきましょう。

掛け捨て型

掛け捨てタイプの生命保険に法人で加入すると、原則として保険料の経理処理は全額損金として経費で計上することができます。

万が一の事業保障や経営者自身の保障などに適しています。「定期保険」などが代表的な商品です。

積み立て型

役員や従業員の退職金、その他の資金など将来に向けての資産形成をしていきたい場合、お金が貯まるタイプのいわゆる積み立て型の法人保険を活用することができます。

節税という観点でみた場合、生命保険によっては最終的に掛け捨てになってしまうが、ある契約期間中の一定時期だけ解約返戻金が大きく発生するタイプの生命保険があります。

お金は貯まるが、全額あるいは1/2損金などに計上することができるため、法人の決算・節税対策などに使われます。

単純に積み立て型というのであれば「終身保険」や「養老保険」が代表的な商品ですが、「逓増定期保険」や「長期平準定期保険」などは後半の説明に該当する商品です。

これらは生命保険商品の「正式名称」ですが、商品名が堅苦しくて伝わりにくいためどこの生命保険会社も「ペットネーム」などをつけて販売しています。

節税保険のランキングや比較では返戻率がポイント

法人の節税保険・経営者保険のランキングや比較では返戻率がポイント

節税保険のメリット・デメリットや注意点などはこの後お話しますが、単純に保障などは関係なく節税第一ということであれば比較のポイントの第一は解約した場合の返戻率です。

各社ここでしのぎを削っています。

実務的にはいつ解約するか分からないから解約返戻金のピークが長い方がいいとか、早く増える方がいいなどそのときの状況に応じた部分にも考慮は必要です。

最近は各社消耗戦の様相になっていますが、金融庁から節税の扱いについて指摘などもあり少し状況が変わってきています。

法人保険のメリット・デメリット

法人の節税保険・経営者保険のメリット・デメリット

メリット・デメリットの前に当たり前ですが、大事なことをお伝えしておきます。利益が出れば経営上はとてもいいことです。

その分法人税の負担も増えるのでそれを何とかしたいというのが節税保険加入の理由でしょう。大切なことは生命保険の保険料負担が事業経営を圧迫することがないようにすることです。

当たり前ですが、これをベースにおいておかないと本質的なことが狂ってくるからです。

メリット

  • 事業資金としての予備費を簿外に貯めておける
  • 法人の決算直前であったとしても1年分の保険料の損金を計上可能
  • 生命保険なので万が一のときには保障があり、保険金が支払われる

積み立て型で全損あるいは1/2損金で計上できるタイプの生命保険なら、割合はともかく損金にしつつお金が積立てられます。法人の財布から生命保険という別の財布にお金を貯めることができます。

また決算直前に大きく利益がでても1年間分の保険料をそこで支払うことも可能です。生命保険ですから保障もある点もメリットと言えるでしょう。

デメリット

  • 法人の資金繰り・キャッシュフローが悪くなる可能性
  • 生命保険の解約のタイミングを間違うと効果が薄くなる
  • 将来の税制改正や否認のリスク

事業経営を圧迫することのない範囲でとお話しましたが、決算で一時的に大きな利益がでてこれを何とかしたいとします。

生命保険でその期はうまく調整できても、保険料は毎月あるいは毎年支払いが続きます。次の期で同じような利益がでなければ、保険料の支払いが経営を圧迫する事になりかねません。

またこうした節税保険(お金が貯まりつつ、いくらか損金にできる)は解約が前提ですが、お金が貯まるものの「山型」に解約返戻金が増えていき、やがて減ってなくなります。

解約返戻金がピークのときに解約すればいいのでしょうが、そのときにはまた大きな黒字になっていることもありえます。

こうした節税保険は、正確には節税というよりは、「課税の繰り延べ」です。

税金が減っているというより、支払いを後にずらしているということです。次項で解説しますが、こうした節税保険に加入したら出口戦略が重要になります。

ちなみに経営者の退職金目的で加入する場合にも同様の問題があると考えてください。あとは当局が仕組みを変えたり、否認したりするリスクです。

実際に生命保険で全損できる商品が飛び交っていますが、昔から当局が否認、生命保険会社が新しい商品の開発するのイタチごっこです。

2018年にも金融庁が高い解約返戻金での全損の生命保険を問題視して見直しなどを求めはじめています。

法人の節税保険は出口戦略・対策が必須、節税保険の発売停止と今後の方向性

法人の節税保険は出口戦略・対策が必須、節税保険の発売停止と今後の方向性

節税保険で出口戦略・対策が必要な理由

通常、節税保険は、その商品ごとの一定の時期に解約返戻金が大きく、ピークになるように設計されています。

前項でお話したように、基本は「山型」です。契約段階の時期は解約返戻率が低く、少しずつ増えていきピークを迎えた後はまた下がっていくというまさに山の形になっています。

商品によって全損計上、1/2(半損)計上などがありますが、同じようにこの山の形が緩やかに上がっていくものと、短期間で上がっていくものがあります。

繰り返しお話しているようにこうした生命保険は解約を前提にしています。仮に解約返戻金のピークで解約した場合、解約返戻金は利益とみなされます。

このとき法人の業績が絶好調で利益を増やしたくなければ、時期をずらす必要がでてきます。そのため節税保険の加入では、出口戦略・出口対策が非常に重要になります。

毎期黒字の法人では節税効果が薄い

全体からみると数は少ないかもしれませんが、毎期黒字が当たり前の法人なら、課税の繰り延べをしても節税対策にはあまりならないということです。

解約する時期と業績の悪化や損失などを表裏一体で考えておく必要があります。

よくこうした法人で加入する節税の保険では、税の効果も含めてプラスという言い方が使われます。

簡単に言えば法人税などの税金を節約できた分を含めて考えてくださいという意味なのです。解約返戻金が必ず支払保険料を大きく上回るということではありません。

節税保険の発売停止と今後の方向性

節税効果がありながらも積立することのできる法人の節税保険については、昔から商品開発→規制がかかる→発売中止→また新たな商品のイタチごっこです。

節税保険の発売停止

2019年2月13日に国税庁が法人保険に対する課税の取り扱いを見直す方針を生命保険各社に通知しました。

イタチごっこといいましたが、課税についてルールを抜けるかたちの商品について規制強化という流れです。

これを受けて猶予なしに即日販売を中止した生命保険会社が続出しています。これから新たに発売予定の会社もあったようですが一気に流れが変わっています。

長期的な視点で節税しながらお金を貯めるという方向は厳しい状況になっていきます。

こうした動きから、生命保険本来の保障を目的に加入する動きに回帰していく流れになるでしょう。

節税保険の今後の方向性と遡及適用の可能性

節税保険は発売停止となりましたので問題となるのは、既存契約の取り扱いが今後どうなるかということです。

まだ何も決まっていませんが、全額損金することができながら50%超の解約返戻率となるものが引っかかっているようです。

50%以下のものはよさそうですが、節税目的での法人保険なら超えるものはほとんどでしょう。

販売停止といっても国税庁の動きを受けてすぐに販売停止にした生保もあれば2月末近くまで販売していたところもあり駆け込みで加入した法人もあるでしょう。

問題は節税保険にすでに加入した法人で50%超えるような返戻率があるものについて、遡及適用してNGにするかどうかということです。

  • 既存契約はそのまま
  • 遡及適用してNG 
  • 一定期間は全額損金を認めてその後NG

上記のいずれかの対応がでてくることが考えられますが、いずれにして国税庁の動きを待って判断するようにしてください。

【2019年4月11日】国税庁のパブリックコメント

この中に改正案が出されていますが、解約返戻率(50%超-70%以下、70%超85%以下、85%超)によって損金扱いにできる割合を変えることを考えているようです。

国税庁 「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか1件の一部改正(案)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)等に対する意見公募手続の実施について

【2019年6月28日】国税庁 法人税の基本通達等の一部改正について

上記のパブリックを経て改正通達は、これまで繰り返されてきた、節税を目的とした各保険商品への個別通達を整備しています。

個別通達を廃止、新たな改正通達に内容を盛り込み、最高解約返戻率が50%を超えるものを3つに分けて原則各区分ごとの一定の割合を資産計上する取扱いになります。

国税庁 法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)

結論として今後は全額損金扱いで、高い解約返戻金率を持つような法人保険はなくなります。

また解約返戻金については実質返戻率という表現を使って、節税保険としていたことも指摘されています。

法人保険は各社販売を再開するでしょうが、節税という言葉はなくなっていくものと考えられます。

節税保険に加入の法人が今後考えておくこと

節税目的の法人保険は、今後縮小傾向になるでしょう。未加入の人は加入しなければいいのですが、すでに加入している人は考えておくべき重要なことがあります。

それは節税目的(全額損金で解約返戻率が高い)の法人保険の出口です。これらの多くは「○○定期保険」という定期保険の種類の一つです。

ある時期に一定の高い解約返戻金がでてきますが、そのピークは僅かな期間です。その解約返戻率は下がり続け最後はゼロになります。

つまりせっかく節税目的で全額損金にして保険を使って貯めたお金を外に出したにも関わらず最後はゼロになります。

  • 解約返戻金のピークで解約 → 会社の業績がよければ結局課税される
  • ほっておく → 解約返戻金がゼロになる

このように考えるといつか解約返戻金のピークか確認しつつ、どうするかは考えておくことが必須なのです。

生命保険以外に法人節税の商品はないの?

生命保険以外に法人節税の商品はないの?

法人保険で節税というと、また生命保険かという経営者も多いでしょう。

すでに過去節税保険に加入したことのある人は、その業績を維持あるいは増やしつつ、多額の保険料を継続して支払う難しさも経験しているでしょう。

小見出しの生命保険以外に法人節税の商品はないのかというとあります。

経産省の外郭団体である独立行政法人中小企業基盤整備機構が取り扱う「経営セーフティ共済」です。

基本的に中小・零細企業が対象で、加入できる金額にも上限があります。掛金は全額損金になり、決算直前に一括で支払うこともできれば、次の期で月払い且つ掛金を引下げる事も可能です。

40ヶ月以上支払うと掛金の全額が戻ります(12ヶ月未満掛け捨て)。

無担保・無保証で借入も一定額できるので生命保険より優先して検討してみてください。但し事業保障や経営者の死亡保障などが必要なら生命保険が優先です。

詳しくは下記の関連記事をみてください。

まとめ

法人の節税保険・経営者保険の仕組みと損金の経理処理の基本、についていかがでしたか。

節税保険・経営者保険という法人の保険は、いまの決算だけでなく将来も見据えたかたちで対策しないと効果がありません。

法人税にかかることも見直しされたり、否認されたりすることも否定できません。

基本は事業経営で安定的に収益を挙げていくことが何よりです。利益がでない、資金繰りが悪いなどになっては本末転倒です。

節税対策はその後にでてくるもので、経営セーフティ共済なども含めて無理のない範囲で節税保険・経営者保険など法人で手当する保険について検討してください。

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ライター紹介 ライター一覧

平野 敦之

平野 敦之

ひらの あつし

平野FP事務所代表。(CFP ®・1級FP技能士・宅地建物取引士・2級DCプランナー・住宅ローンアドバイザー)。東京都出身。大学卒業後に証券会社、損害保険会社等で実務を経験した後1998年に独立。

・個人のライフプラン、お金の悩みやお困りごとのサポート。
・法人の経営者のお金の悩み、営業を支援。

ファイナンシャルプランナー歴20年以上。相談業務の他TVやラジオ、新聞、雑誌など直近の10年間で200回以上の取材を受ける。同業であるファイナンシャルプランナーに対しても情報提供の執筆や講演を行う。

講演・セミナー活動も大学での非常勤講師や国民生活センターや行政機関、大手企業や団体など幅広い実績を持つ。総合情報サイトAll Aboutにて2003年よりマネーガイドを務め、15年以上に渡り定期的にマネー情報の発信を実施。その他の媒体も含めてWEB上での執筆記事は600本以上。

「お金の当たり前を、当たり前に。」するために、現場の相談を中心業務と考え活動を続ける。

【著書】いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)http://amzn.to/2csBEsM
    
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