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失火責任法の適用範囲と重過失とは?~失火法と火災保険の関係

失火責任法の適用範囲と重過失とは?~失火法と火災保険の関係
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失火責任法(失火法)は、自分が火元になって火災で周囲に類焼させてしまったときなどに関係する重要な法律です。

■この記事で学べること

【1】失火責任法とは?(条文、重過失の取扱い、適用範囲)

【2】失火責任法はガス爆発は対象外!?

【3】失火責任法と賃貸借、債務不履行責任(民法415条)

【4】火災保険で対応できる類焼損害補償特約

火災で近隣に類焼した際の失火責任法の適用範囲と重過失について、条文とその適用範囲、賃貸借の場合の取扱いと火災保険の関係についてファイナンシャルプランナーが解説します。

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失火責任法(失火法)とは?重過失の有無による取扱いと判例、適用範囲

失火責任法(失火法)とは?民法の条文、重過失の有無による取扱いと判例、適用範囲

失火責任法の前に損害賠償の前提となる民法709条の不法行為責任について先に確認しておきます。法律の内容は以下の通りです。

【不法行為による損害賠償】第709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

簡単にいうと、自分の落ち度(過失)などで人様に迷惑かけたら損害賠償(弁償する)責任がありますよと、法律で規定しているわけです。

もちろん道義的にも責任があるでしょうが、法律でそれをきちんと明記しているのです。

まずはこれを頭に入れてください。

失火責任法とは?条文とともに解説

失火責任法とは、「失火の責任に関する法律」のこと言い、略して「失火責任法」「失火法」などと呼ばれます。

明治32年にできた古い法律です。その条文は以下の一文だけの短いものです。

【失火の責任に関する法律】

民法第709条の規定は、失火の場合には適用せず。但し、失火者に重大な過失があったときは、この限りにあらず。

民法709条の不法行為責任から考えると、失火により他人に損害を与えたしまったら、失火した人に故意や過失があれば損害賠償責任を負うことになります。

くだけた言い方をすればあなたの落ち度(過失)で発生した火災で、あなたが悪いのでそれに対して弁償してくださいということです。

失火責任法が明治32年にできた法律といいましたが、特に当時は木造住宅が多く、失火すると非常に多大な損害が発生することが背景にあります。

しかし類焼すると一個人ではまかないきれないほどの損害が発生することがあるため、失火責任法により軽過失による失火については民法709条の適用をしないことになっています。

つまり損害賠償しないでよいということです。

但し、重大な過失(重過失)がある場合については、民法709条の規定の適用により損害賠償責任を負うこととされています。

火事を出した人に重過失(著しい落ち度)があるなら、損害賠償しなさいということです。

失火責任法の軽過失・重過失とは?

そうなると失火責任法における重過失がとは何かということになります。

重過失とは、著しい落ち度。わずかな注意を払っていれば予見、防止できたはずなのに、それを漫然と見過ごしたということです。

例えばよく引き合いに出されるのが下記の失火責任法の重過失の判例です。

  • 台所でガスコンロにてんぷら油の入った鍋をおき、火をつけたまま台所を離れたため、過熱されたてんぷら油に引火して火災が発生(東京地裁)。
  • 電気コンロを点火したまま就寝、ベットからずり落ちた毛布が電気コンロにたれさがり、毛布に引火し火災(札幌地裁)

勘違いしないでほしいのは、天ぷら揚げていたら重過失というわけではないということです。

個々の火災の発生などのもろもろの状況はそれぞれ異なるからです。

重過失に当たらなければ軽過失ということになりますが、損害賠償責任を加害者に問えないこともありえるのです。

火災保険は自分できちんと加入すると言われるのはこのような背景があるためです。

損害保険会社が決めるわけでも、法律の専門家が決めるものでもないのです。最終的な判断は裁判所ということです。

失火責任法はガス爆発は対象外!?

失火責任法(失火法)とガス爆発
失火責任法で火災に関係ありそうだけど、対象から外れているのがガス爆発です。

先ほどの民法の規定をもう一度確認してみましょう。

「民法第709条の規定は、失火の場合には適用せず。~~」とあります。失火の場合、つまり火災を対象にしておりガス爆発は別になるのです。

こうしたケースでは損害賠償責任を問われます。

失火責任法と賃貸借契約、債務不履行責任(民法415条)とは?

失火責任法と賃貸借契約、債務不履行責任(民法415条)とは?
失火責任法により、重過失がある場合を除くと損害賠償責任を問われないとお話しました。

前述のガス爆発とともに失火責任法の適用範囲に入らないものが賃貸物件に関する契約です。

賃貸物件は失火責任法の適用範囲?

具体的には賃貸借契約により賃貸物件に住んでいる借り主です。

自分が火元になったことにより、周囲に類焼した場合のご近所への対応はここまで解説したことと変わりません。

関係あるのは、物件の家主に対する損害賠償です。

物件を借りる際に賃貸借契約によって、契約満了後に借りた物件を元に戻して家主に返す契約になっています。

失火によって物件に火災などで損害があると、この契約の元に戻して家主に返すという約束が実行できなくなります(不履行)。これが債務不履行責任です。

2020年4月1日の民法改正によって第415条の文言は以下のように改められています。

【債務不履行による損害賠償】第415条

  1. 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
  2. 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
  • 債務の履行が不能であるとき。
  • 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
  • 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

この場合、債務者が物件を借りている人、債権者が家主です。責めに帰すべき事由というのが失火となります。

つまり賃貸借物件については、上記の要件を満たすときは家主に対して失火の場合責任を負うことになります。

ちなみに入居者が火災を発生させたことによる家主への損害賠償責任に軽過失・重過失は関係ありません。

それをカバーするために賃貸物件を借りる際には、火災保険の加入を要件に借家人賠償責任保険(家主に損害賠償する補償)の加入を条件にすることがあるのです。

賃貸物件の入居者の失火責任の有無と補償

賃貸物件の入居者が火元になって火災を起こして類焼してしまった場合、対処する相手によって考えることがいくつかあるので整理しておきましょう。

  • 大家に対して   失火責任を問われる:借家人賠償責任補償特約
  • 近所の人に対して 重過失なら失火責任を問われる:個人賠償責任補償特約
  • ガス爆発     責任を問われる:個人賠償責任補償特約

*特約名などは言い回しが商品によって異なることがあります。

上記の2つは正しくはいずれも火災保険の特約です。賃貸物件に入居する際、火災保険の契約が条件になっているのはこうしたことがあるためです。

賃貸物件のための家財の火災保険には、必ずこの2つの補償が特約などで付帯しています。

失火責任がある場合、火災保険で対応できるのか?

失火責任法(失火法)での責任は火災保険が適用される?

一個人の人が、近隣に類焼させてしまい、さらに重過失により損害賠償責任を負うなら火災保険で支払ってくれるものなのでしょうか。

保険で損害賠償することは可能です。

具体的には、「個人賠償責任保険(個人賠償責任補償、日常生活賠償など)」という火災保険の特約でカバーすることができます。

但し法律上の損害賠償責任がある場合が前提です(法的に責任があるということ)。

なお、企業や個人でも事業用の店舗などで失火した場合、個人賠償責任保険などでは対象となりません。

施設賠償責任保険などの事業用の賠償責任保険があるのでそうした保険に別途加入する必要があります。

保険会社にどのような用途で使っているかをきちんと伝えて、それに応じた保険で対処しないと肝心なときに保険が役に立たないことがありますから気をつけてください。

自転車保険などで加害者になって相手を怪我をさせた場合の損害賠償を心配する人がいますが、これと同じ補償です。

この補償は特約なので、火災保険や自動車保険、傷害保険などに特約で付帯します。そのためよく調べたらすでに加入していたという人も多いはずです。

できれば保険金額(契約金額、相手への損害賠償金額の上限)は億単位で付帯していればそれに超したことはありません。

実際に保険で対応できるのは、あくまで経済的な損失の部分です。

心情的にはそこに住み続けるのま難しいケースもでてくるでしょうから、そうした部分も考慮しておいてください。

なお、火災を発生させて入居者が家主に対する損害賠償については「借家人賠償責任補償特約」でカバーされます。

失火責任法に対して火災保険で対応できる類焼損害補償特約

失火責任法(失火法)と類焼損害補償特約

火災保険には、「類焼損害補償特約」という特約があります。特約名の通り、火災で類焼した場合の損害を補償する特約です。

この場合に誰が補償されるのかというと、自分ではなくて第三者である他人が対象になります。

そもそも失火責任法で重過失でなければ、責任は負わないのに保険がでるのかということは気になりますね。

類焼損害補償特約は、第三者に損害賠償(弁償)する保険ではありません。加害者に被害者に損害賠償する保険は、「○○賠償責任保険」となります。

自動車保険の対人・対物と言われているのも、対人賠償責任保険、対物賠償責任保険です。

類焼損害補償特約は、第三者の火災保険の補償の不足をカバーするものです。そのため被害を受けた住宅で火災保険に加入しているなら、それを使うかたちになります。

しかしそもそも火災保険に加入していない、加入しているが保険金額(契約金額、つまり補償額)が不足しているなどの場合には適用することができます。

1億円くらいまでの金額が一般的ですが、個人賠償責任保険や類焼損害補償特約などの特約も検討しておくといいでしょう。

まとめ

火災保険で全焼にまでなるケースは損害保険の一つの支社などでも年間でそう何度もあるものではありません。

火災保険でお金がでるといっても、思い出の品物や大切なデータなどは戻ってきません。

できることに限度はあるでしょうが、自分の身を守るために自分の火災保険をしっかりつけておくようにしてください。

泣き寝入りしろと言うわけではありませんが、相手に損害賠償責任が発生するケースでも保険に加入していない、経済的な余裕がなければ賠償席級も難しくなります。

また失火責任法という法律だけでなく、火災保険の支払いについても関連記事を読んで知っておいてください。

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ライター紹介 ライター一覧

平野 敦之

平野 敦之

ひらの あつし

平野FP事務所代表。(CFP ®・1級FP技能士・宅地建物取引士・2級DCプランナー・住宅ローンアドバイザー)。東京都出身。大学卒業後に証券会社、損害保険会社等で実務を経験した後1998年に独立。

・個人のライフプラン、お金の悩みやお困りごとのサポート。
・法人の経営者のお金の悩み、営業を支援。

ファイナンシャルプランナー歴20年以上。相談業務の他TVやラジオ、新聞、雑誌など直近の10年間で200回以上の取材を受ける。同業であるファイナンシャルプランナーに対しても情報提供の執筆や講演を行う。

講演・セミナー活動も大学での非常勤講師や国民生活センターや行政機関、大手企業や団体など幅広い実績を持つ。総合情報サイトAll Aboutにて2003年よりマネーガイドを務め、15年以上に渡り定期的にマネー情報の発信を実施。その他の媒体も含めてWEB上での執筆記事は600本以上。

「お金の当たり前を、当たり前に。」するために、現場の相談を中心業務と考え活動を続ける。

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