確定拠出年金をどうしても解約したい場合の条件とは?
確定拠出年金(iDeCo)で失敗したので、引き出したい、やめたい、どうしても途中解約したいと考えている人はいるでしょう。
■この記事で学べること
【1】確定拠出年金(iDeCo)を解約や途中でやめることは可能か?
【2】解約、脱退一時金が貰える条件
【3】掛金が払えない、やめたい、どうしても解約したいときの対処法
退職も含めて確定拠出年金を途中で解約したい、資産(脱退一時金)を引き出したいなど解約・やめるをテーマにファイナンシャルプランナーが解説します。
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この記事のもくじ
確定拠出年金、企業型・iDeCoはやめたいときに解約できる?
【結論】原則として確定拠出年金は加入者の任意での途中解約はできません。
解説が必要な方、解約はできないが他の対処方法を知りたい方はこのまま読み進めてください。
なお、てっとり早く解約以外の対処方法を知りたい人はこの上の目次から最後の「5」の見出しのある対処方法に飛んでください。
それでは確定拠出年金(企業型・個人型iDeCo)をやめたい・解約したい場合についてみていきましょう。
企業型の確定拠出年金の解約、資金を引き出したい、退職したら
企業型の確定拠出年金は、労使の合意に基づいて制度が導入されます。
また企業型の場合、退職給付制度の一つとしての位置付けで確定拠出年金があります。
そのためこれを解約するという選択は企業型の人の場合はありませんし、勝手に個人が解約もできません。
一般的に掛金も会社負担ですから解約を考えるケースはあまりないでしょう。
あえて言えば選択制の確定拠出年金などであれば導入時に自分で選択ができます。
但し解約とは違いますが、転職・退職したときには状況が変わります。転職先に企業型の確定拠出年金があれば資産を移します。
転職先に確定拠出年金があるのに資産を移さないということはありえません。
制度がなければiDeCoを自分で契約することになります。このときほったらかしておくと損するので資産を移す手続きは必ずしてください。
企業型の場合、できるかどうかは別にして解約を考えるタイミングがあるとすれば退職時です。
個人型確定拠出年金(iDeCo)をどうしても解約、やめたい、資金を引き出したい
任意加入であるiDeCoをやめたいときに途中解約できるかというとこれも解約はできません。
基本的な考え方として年金資産を積立てるということなので、厚生年金や国民年金などの公的年金と同じように考えておいてください。
生活大変だから国民年金を解約して一時金を受け取るというわけにはいきません。
基本的な考え方はこれと同じです。
制度改正により現状はほとんどの現役世代の人は原則として確定拠出年金(企業型・個人型)に加入することができます。
転職などをしても年金資産を移す先があるので安易に解約という選択がなくなっています。
公的年金と同じで目的は老後に向けての資産形成です。生活が苦しいときがあるのは誰もが同じですから、安易に解約できるとこれができないためです。
解約しなくても年金資産の引き出しや貸付けして貰える?
確定拠出年金は原則として解約できなくても、一時的に積立した資金を引き出したり、あるいはそれを担保に貸付けして貰えないかなどと考える人もいるでしょう。
結論として確定拠出年金では、原則60歳まで資金の引き出し、つまり年金給付を受けることはできません。
また積立した年金資産の貸付制度もありません。
前倒しでお金を受け取ることはできないのです。原則60歳と書いたのは、加入期間が10年に満たない場合、前倒しではなく60歳以降にずれ込むからです。
50歳以降の加入で60歳まで10年に満たなければ年金資産の受取りは60歳以降になります。
60歳以前に確定拠出年金で積立したお金などが貰えることがあるとすると、死亡や障害など所定の状態のときは支払いがありますが解約などとは別の話です。
加入期間が1ヶ月以上2年未満のケースで最長65歳の受取になります。
解約の条件と確定拠出年金の脱退一時金(いつ・いくら貰える?)
確定拠出年金の解約・お金を受け取ることができるのは、脱退一時金を受け取る条件を満たした場合のみです。
脱退一時金は解約一時金、解約返戻金のようなものと理解してください。
ちなみに確定拠出年金の脱退一時金を受け取る裏ワザのようなものはありません。
WEBサイトによっては、脱退一時金の裏ワザというチラシのタイトルのような書き方をしているところもありますが、それは嘘です。
確定拠出年金の脱退一時金の受給の条件は、次の要件を満たす場合です。2022年5月から受給要件が改正されています。
個人型の確定拠出年金(iDeCo)と脱退一時金を受取る条件
iDeCoは、国民年金被保険者となることができない人で次のような一定の要件を満たす場合は脱退一時金を受給できるようになります。
- 通算の掛金拠出期間が短いこと
- 資産額が少額であることなど
具体的には次のようになります。
【2022年5月改正後のiDeCoの脱退一時金の受給要件】
- 60歳未満である
- 企業型DCの加入者でない
- iDeCoに加入できない者である
- 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でない
- 障害給付金の受給権者でない
- 企業型DCの加入者及びiDeCoの加入者として掛金を拠出した期間が5年以内である、または 個人別管理資産の額が25万円以下である
- 企業型DC又はiDeCoの資格を喪失してから2年以内であること
※これらの要件すべてに該当する必要があります。
企業型の確定拠出年金と脱退一時金
企業型の場合、その個人の資産額が1.5万円以下かどうかで要件が変わります。
【2022年5月改正後の企業型DCの脱退一時金の受給要件】
◆個人別管理資産額が1.5万円以下である場合(改正なし)
- 企業型DC加入者、企業型DC運用指図者、iDeCo加入者及びiDeCo運用指図者でない
- 個人別管理資産の額が1.5万円以下である
- 最後に企業型DCの資格を喪失した日の翌月から6ヶ月を経過していない
※これらの要件すべてに該当する必要があります。
◆個人別管理資産額が1.5万円を超える場合(2022年5月より追加・改正)
- 企業型DC加入者、企業型DC運用指図者、iDeCo加入者及びiDeCo運用指図者でない
- 最後に企業型DCの資格を喪失した日の翌月から6ヶ月を経過していない
- 60歳未満である
- iDeCoに加入できない者である
- 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でない
- 障害給付金の受給権者でない
- 企業型DCの加入者及びiDeCoの加入者として掛金を拠出した期間が5年以内である、または個人別管理資産の額が25万円以下であること
※これらの要件すべてに該当する必要があります。
iDeCoおよび企業型いずれの場合もこうした要件に該当しなければ脱退一時金は受け取れません。
死亡一時金と障害給付金
脱退一時金以外に年金資産を受け取る方法は、「死亡一時金」と「障害給付金」を受給できるケースの場合です。
加入者自身が死亡した場合や高度障害者になったときに、死亡一時金や障害給付金を受け取ることが可能です。
これは参考程度に知っておいてください。
確定拠出年金の途中解約と税金
確定拠出年金を解約についてはここまでみたようにかなり厳しい条件があります。脱退一時金を受取ることができた場合、その額が50万円以下であれば非課税です。
50万円を超過している場合には一時所得として税金がかかりますが、上記の解約の条件をみたようにそれはありません。
脱退一時金について税金のことは気にしないで大丈夫です。
会社を退職したら確定拠出年金は解約できる?
企業型の確定拠出年金に加入している人が、転職・退職した場合の扱いについてみておきましょう。
先ほどの脱退一時金の条件を満たさなければ、この場合も解約はできません。
転職・退職の場合、例えば次に就職した会社に企業型の確定拠出年金があればそこにこれまでの年金資産を移すことになります。
会社を退職して、6ヶ月間ほったらかしておくと、それまで貯めた年金資産は自動移換されることがあります。
導入から会社任せになる企業型の確定拠出年金の加入者に多いことですが、当初加入の段階でほとんどのことを会社が一括して行うため、自分で何かすることをしないケースがよく見受けられます。
自動移換というのは分かりやすくいうと、自分の自動車をレッカー移動されたような状態だと思ってください。
自動車を使えない(年金資産を運用できない)、罰金を取られる(コストがかかる)、何もいいことはありません。
忘れずに手続きしてください。これについては問題が指摘されていました。
確定拠出年金の転退職時の自動移換については一定の要件を満たしていれば、転職先などへ年金資産を移動してくれるようになりました。
本人情報がマッチングしているなど要件があるので注意が必要ですが、年金資産がきちんと新しい確定拠出年金の口座に移ったかの確認は必ず自分でしてください。
なお、次の転職先の確定拠出年金の導入状況や自営業などをする場合によって手続きは変わります。
解約については退職した場合でも同様で、原則解約することはできません。
確定拠出年金をどうしても解約したい、掛金を払えないときの対処方法
確定拠出年金(個人型iDeCo・企業型)の解約はできない、60歳までは資金の引き出しもできず、貸付けを受けることもできないのは解説したとおりです。
繰り返しますが裏ワザのようなものはありません。
それでも長い加入期間の間には失業したりして、確定拠出年金の掛金を家計から支払うのは厳しいケースもありえます。
裏技のようなものを求めている人もいるかもしれませんが、そんなに都合のいい話はありません。
仮に都合よくやめたり、解約できる裏技のような方法があれば制度改正してその穴を塞ぐでしょう。
iDeCoをどうしても解約したい、やめたいときに裏技はありませんが、掛金の支払が厳しいときの対処法は2つあります。
- 掛金を変更(減額)する
- 加入者から運用指図者になる(掛金の支払いをやめる)
具体的にはこの2つです。
掛金を自費で支払わないことが多い企業型はあまり関係ないので、iDeCoという前提で具体的に説明していきましょう。
iDeCoの掛金変更の方法
確定拠出年金の掛金は変更することが可能です。
一般的に個人型の確定拠出年金(iDeCo)の場合、5,000円以上、1,000円単位で掛金を任意に設定することができます。
加入時に決めた掛金は、変更することが可能です。
確定拠出年金の掛金の変更は、毎年4月分の掛金から翌年3月分の掛金の間に1回(年1回)変更することができます。
最も掛金は最低5,000円ですから、もともとこの掛金額の人にはメリットがない方法になります。
確定拠出年金の掛金の変更はできるので、続ける意思があるなら家計が厳しいときの対処方法の一つとして知っておきましょう。
iDeCoの加入者から運用指図者になる方法
掛金の変更だけで難しいようであれば、掛金の支払いをやめて加入者から運用指図者になる方法があります。
加入者と運用指図者の違い
加入者と運用指図者のそれぞれの違いは次のとおりです。
- 加入者 掛金の支払を継続して行い、運用指図も行う人
- 運用指図者 掛金の支払をせずに、それまで積立てした年金資産の資産運用指図のみを行う人
通常、確定拠出年金は掛金の支払は60歳までですが、ここから年金資産を受け取ることができ、最長70歳まで遅らせることができます。
70歳まで資金の引き出しをしなければ、この間は加入者として掛金の支払はできなくなりますので(60歳過ぎたから)、運用のみをする運用指図者になります。
早い話がこれを60歳前に手続きして運用指図者になって掛金の支払をしないということです。
但し、iDeCoの場合には口座の開設や維持に手数料がかかります。
運用商品を全て定期預金や保険商品などにしていると手数料の方が高いため資産が減ってしまいます。
掛金の拠出をやめても運用そのものは続けてください。
運用指図者になる方法・手続き
確定拠出年金の加入者から運用指図者になる方法は、「加入者資格喪失届」を契約先の金融機関に提出して手続きを進めます。
コールセンターなどに問い合わせをしてください。
運用指図者になると、加入者と同じように積み立てした年金資産について継続して運用指図をすることができます。
但し加入者資格は喪失しているので、掛金を支払うことはできないわけです。
注意点としては、すでに積立てした年金資産の運用は継続しますので、個人型の確定拠出年金で必要な口座管理に必要な費用などは支払うことになります。
極端な話、年金資産の全額を銀行預金で運用しておけばいいというという考えだと利息はほとんどつきません。
口座管理料だけ取られていきますから、それを理解しておくこと、それがダメなら口座管理コストの安い金融機関(運営管理期間)ところにする必要があります。
どうしてもやめたい、解約したいそれができないので運用指図者になる方法を選択するのは仕方ありません。
しかし確定拠出年金本来の長期の積立分散投資のメリットは手放すことになります。
収入が回復して掛金を支払えるようなら、改めて掛金の納付を検討してください。
まとめ
確定拠出年金をどうしても解約したい場合の条件とは?、についていかがでしたか。
残念ながら確定拠出年金をやめたいときに中途解約や資金の引き出しはする方法はほとんどありません。
大事なことははじめる前によく理解してから確定拠出年金をはじめることです。
特にiDeCoは自分で金融機関を比較・選択します。解約などの制度の部分もよく確認してください。
この記事を確定拠出年金をはじめる前に読む人は少ないでしょうが何でも同じことです。
良く理解しないままはじめるとこんなはずじゃなかったということになりかねません。
税制上のメリットも大きいので、確定拠出年金をうまく活用してほしいとは思いますが、継続が厳しいならこれらの方法も検討してみてください。
確定拠出年金の活用には、基本的な最低限のことは知っておかなければなりません。関連記事も参考にしてください。
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