【人身傷害補償保険】自動車保険 に必要なケガの補償とその必要性
人身傷害補償保険は自動車保険で主に搭乗者している人のケガについて実際の損害を補償する保険です。
■この記事で学べること
【1】人身傷害保険とは?その必要性
【2】対象者の範囲と一部の損保の交通乗用具事故特約
【3】保険金額(契約金額)の目安と平均
【4】自動車保険での人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違いと重複
【5】バイクの人身傷害保険
【6】人身傷害保険と等級ダウン
【7】通院と後遺障害、慰謝料と人身傷害保険の計算方法や考え方
自動車保険のケガの補償である「人身傷害補償保険」について搭乗者傷害保険との違い、通院や後遺障害の慰謝料の考え方、補償内容などを解説します。
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この記事のもくじ
人身傷害補償保険とは?
人身傷害補償保険とは、人身傷害、人身傷害補償、人身傷害補償保険など各損保や共済によって、多少言い回しが異なります。
この記事では人身傷害補償保険と記載しますのでご了承ください。
人身傷害補償保険は主に契約している車に乗っている人のケガについて実際の損害を補償します。
実際の損害ということは、単に医療費だけではなく、休業損害や慰謝料なども対象になります。
事故の相手方がいる場合には、次の点もポイントです。
相手方との過失割合に関わらず、示談を待たずに自分の自動車保険の人身傷害保険から、実際の損害で受けることができます(重要)。
人身傷害補償保険の加入率
人身傷害補償保険の加入率は、2022年3月末で71.0%です(出所:損害保険料率算出機構)。
加入率は年々上昇しています。
対人賠償責任保険や対物賠償責任保険の加入率が、74~75%程度で推移していますので近い数字になってきてます。
人身傷害補償保険の発売っていつから?
もともと自動車保険のケガの補償は搭乗者傷害保険でした。
人身傷害補償保険は、1998年に東京海上(現東京海上日動)が、損保業界ではじめて開発・発売した保険です。
実はこの前年の1997年、今では当たり前になった通信販売のリスク細分型の自動車保険をはじめて日本でアメリカンホームが始めた年です。
これから自動車保険はリスク細分型で、価格競争が激しくなると言われたときに、それに逆行する戦略で補償を手厚く、掛金の高い保険を発売したわけです。
その代表的な補償が人身傷害補償保険です。
今では通販を含めた各損保や共済でも人身傷害補償保険は当たり前の補償になっています。
人身傷害補償保険の補償の範囲
各損保とも人身傷害補償保険の補償範囲を2パターンくらい作っているのが一般的です。
- 契約している車に乗っているときの、事故によるケガを補償
- 契約車両に乗っているときだけでなく、自転車などに搭乗中の自動車事故によるケガを補償
なお一部ですが、他の自動車や交通乗用具(バイクや電車、航空機、船舶など)などに乗っているときのケガまで補償するケースもあります。
契約している車に乗っているときだけであれば、その分保険料(掛金)は安くなります。
人身傷害の交通乗用具事故の特約とは?
人身傷害補償保険に交通乗用具事故の特約が付帯できるケースが一部にあります。
イメージとしては交通事故傷害保険の補償範囲に近いものです。
交通事故傷害保険は、交通乗用具に搭乗している間の事故などを補償します。
この交通乗用具というのが意外と範囲が広く、自動車、バイク、自転車、航空機、船舶、電車などでの事故によるケガまで補償されます。
先ほど車外の補償が人身傷害保険についていれば、自転車に乗っているときの自動車事故もOKと言いました。
これはあくまで対自動車との事故です。
交通乗用具がついていると、例えば自転車単独で転倒した際のケガまで実費で補償します。
以前は色々な損保で取り扱っていました。
自動車保険でそこまで補償されることが分からない人だと、保険金の不払いにつながる恐れもあることから止めたところが多いのです。
自転車の事故に限りませんが、こうしたことによるケガが心配なら同居の家族まで対象ですから検討してみるといいでしょう。
以前は多くの損保が取り扱っていましたが、ほとんどやめてしまっています。
2024年3月末時点で筆者が確認できているのがAIG損保や日新火災、損保ジャパンなどです。
※各社内容が多少異なることがあるのでご留意ください。
自動車を保有していなくても人身傷害補償保険に加入できる商品
過失割合に関わらず、相手がいても示談を待たずに実費で補償されるのが人身傷害補償保険です。
事故で怪我をした場合には役に立つことが多いのですが、自動車保険に付帯している補償のため車を手放した人は加入することができませんでした。
車を保有していない人向けに、ほとんどすべての乗り物に関する移動中の事故など、日常生活における事故を幅広く補償する業界初の保険が2021年6月から発売されています。
月980円で、本人と家族まで対象になります。
高齢の親や子どもなど人数が多いほど対象者が増えます。
人身傷害補償保険や個人賠償責任補償、弁護士費用など色々補償が付帯されています。
人身傷害保険があるため怪我の保障は実費で補償されます。
保険金額はもう少し選べるといいと思いますが、自転車保険への加入を検討している人には選択肢に入ると考えます。
人身傷害補償保険の対象となる人の範囲
単に契約している人が自動車事故でケガをすれば、人身傷害補償保険の対象になります。
補償範囲で見たように車外での自動車事故は、誰が対象になるのか決まっています。
実は本人だけでなく以下の人まで補償範囲に含まれます。
- 本人(記名保険者)
- 配偶者
- 同居の親族
- 別居の未婚の子(婚姻したことがない)
加害者が逃げた、支払を拒否しているなどの場合、自分の人身傷害保険から補償することができるのです。
実は一部の損保でさらに人身傷害保険の補償を拡大しているケースもあります。
続けてみていきましょう。
自動車保険に人身傷害補償保険は必要ない?
人身傷害h省保険の必要性についてですが、最初に人身傷害補償保険とは?のところでお話したことを思い出してください。
「相手方との過失割合に関わらず、示談を待たずに自分の自動車保険の人身傷害補償保険からケガの補償を実損(実際の損害)で受けることができる」
事故の相手方(加害者)がいる場合でも、過失割合(どっちがどれだけ悪いかの割合)でもめることは珍しくありません。
実際相手と揉めると、示談完了まで数年かかっても決して大げさではありません。
人身傷害補償保険があればそれを先に自分の自動車保険から支払えるわけです。
事故の相手方が無保険だったり、支払い能力がない場合、人身事故では自賠責保険の補償範囲に損害が収まらなければ自己負担しなかればならない可能性もでてきます。
具体的には病院への医療費、休業損害、慰謝料などです。
契約している車の損害は、やはり相手と揉めて示談が長引く場合、車両保険をつけておけば示談を待たずに自分の車両保険から修理代をカバーできます。
人身傷害補償保険はこれの人身事故バージョンだと考えてください。
人身傷害補償保険の保険金額(契約金額)の目安や平均は?
人身傷害補償保険の保険金額(契約金額)は、一般的に下限が3,000万円~上は無制限まであります。
3,000万円、5,000万円、7,000万円、10,000万円、無制限などのパターンが多いでしょう。
人身傷害補償保険は実際の損害をカバーするので、この契約している金額が補償の上限になります。
一般的には年齢が若い人ほど、死亡や後遺障害などの逸失利益が高くなるので、契約金額は高くなります。
当たり前ですが、金額を上げていけば、保険料(掛金)も高くなります。
目安としては3,000万円~5,000万円くらいでの契約が多いようです。
ケガをして入通院あるいは手術までのものなら、これぐらいまであれば十分でしょう。
繰り返しますが、人身傷害補償保険はあくまで実際の損害を補償するので、実害がなければそれ以上の支払はありません。
年齢や収入などによりますが、死亡や重度の後遺障害がでたときに、契約金額が低いと不足する可能性があると考えておいてください。
本来相手から受け取る賠償も含めて、示談が完了する前に受け取ることができるものです。
しかし金額の設定が低いとこの機能を活かせないことがありえるということです。
自動車保険での人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険の違いと重複
以前は、搭乗者傷害保険が自動車保険のケガの補償の中心でしたが、現在では各社人身傷害保険に軸を移しています。
具体的な違いは次のとおりです。
人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険の違いとは?
- 人身傷害補償保険 契約金額を上限に実際の損害を補償(治療費、休業損害、精神的な損害、死亡や後遺障害が残った場合の逸失利益(事故によって失った将来得られたはずの利益))
- 搭乗者傷害保険 死亡・後遺障害、入通院などの金額(治療費等)を契約で決めた金額を定額で補償
人身傷害補償保険は実際の損害を支払う(実損)ので、例えば契約金額を人身傷害補償保険5,000万円などで契約します。
搭乗者傷害保険は定額での支払です。死亡1,000万円 入院10,000円 通院5,000円などで決めます。
これは日額払いといいますが、入通院はについて最近は一時金を支払うだけのものがほとんどです。
人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険が重複したら?
自動車保険の契約で人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険が重複しても、別なものと考えて問題ありません。
そもそも1つの自動車保険で人身傷害保険と搭乗者傷害保険が重複して契約できるので特に気にしなくて大丈夫です。
掛金を多く支払って補償を厚くするか安さを優先するかです。
人身傷害保険が実際の損害をみるのでこれで実際の損害の負担がなくなり、プラスで搭乗者傷害保険がでてくると考えておくといいでしょう。
実際には以前ほど搭乗者傷害保険の入通院の補償を手厚く付帯できるようになっていません。
はじめにお話したように自動車保険の傷害部分の補償の主流は人身傷害補償保険です。
搭乗者傷害保険はなくしていたり、特約扱いになってきています。
重複に関して補足しておくと、人身傷害補償保険は事故の相手方からの損害賠償金と別に受け取ることはできません。
実際の損害をカバーするので、示談前に先行して人身傷害保険から保険金などを受け取ることは可能ですが、相手からもらう分も含んでいます。
実務的には損害保険会社が先行して支払っているので、後で損害賠償金と回収するかたちになります。
余談ながら自動車保険には、自損事故保険や無保険者傷害保険があります。
損保によって違いはありますが、人身傷害補償保険にしっかり加入していればこれらの補償範囲はカバーすることができます。
基本的に自動車保険の傷害部分は人身傷害補償保険を中心に考えてください。
バイクに人身傷害補償保険は必要?
バイクや原付などに乗る人は、人身傷害補償保険の必要性について考えるケースが車以上に多いはずです。
理由は簡単でバイクなどの2輪には転倒があるからです。
実際に搭乗者傷害保険、人身傷害補償保険いずれもバイクや原付に付帯すると保険料(掛金)はかなり跳ね上がります。
その分リスクも高いので、必要性は高いとも言えます。それを考えるとバイクにもあった方がいいと考えます。もちろん予算次第です。
交通事故傷害保険(自動車保険ではなく、傷害保険)などを別途付帯することなども検討するといいでしょう。
自動車が2台以上ある場合、人身傷害補償保険の補償の重複に注意
住んでいる地域によっては、車が2台以上ある人もいるでしょう。
人身傷害補償保険の補償はそれぞれの車ごとに必要ですから、その意味では重複はありです。
但し、車外の自動車事故の補償や先ほどの交通乗用具事故の特約などは、複数の車があってもそのうちの1台につけておけばOKです。
もう一台は、契約車両のみの補償にします。
なお1台の車を人身傷害保険の車外の交通事故の補償をしているからといって、もう1台の車の人身傷害補償保険を無しにしないでください。
本人や家族が所有する車は他人の車と取扱いが違います。複数の車で自動車保険に加入している人は、こうしたことを考えておくといいでしょう。
詳細は加入先の損保にご確認ください。
事故で人身傷害補償保険を使ったら、翌年の保険料は等級ダウンして下がる?
自動車保険では、事故で保険金の支払があると、翌年は等級ダウン(割引率が下がる)するため、保険料(掛金)に影響します。
自動車保険のノンフリート等級(割引割増制度)は、事故の際に次の3つのパターンで保険料に影響します。
- 3等級ダウン事故
- 1等級ダウン事故
- ノーカウント事故
実は、人身傷害補償保険のみから保険金を支払った場合、ノーカウント事故の扱いになります。つまり翌年の等級は下がらずに上がります。
この保険だけの利用なら、事故で保険を使っても割引に影響しないのです。
通院と後遺障害、慰謝料と人身傷害補償保険の計算方法や考え方
通院
交通事故でケガをした場合、通院で1日いくらでるのか、通院日額はいくらか、対象日数の期間や限度額、計算などを気にする人もいるようです。
人身傷害は実際の損害を支払うものなので、1日あたりの実際の通院費用を支払うものではありません。
慰謝料の計算の考え方はこの後お話します。
後遺障害
後遺障害が出てくるケースでは、逸失利益、後遺障害による慰謝料(精神的損害のこと)、 将来の介護費、その他の損害などが対象です。
なお、入通院などの治療費や後遺障害、休業損害、この後でてくる慰謝料などの税金の取扱いですが、課税はされません。
慰謝料
慰謝料の計算の基本は自賠責保険などを基準に考えておくといいでしょう。
実際には自賠責保険と各損保の任意保険の基準の計算もまったく同じではありません。
損保のHPなどで人身傷害保険のところをみると、弊社独自の基準で~などと書かれています。
これは各社必ずしも一律ではないからです。
通院などは自賠責保険の基準では1日あたり4,300円で日数などで計算します。
治療期間の総日数と実治療日数の2倍を比較して、少ないほうの日数が慰謝料の対象日数とします。
後遺障害の場合は、第何級の後遺障害となるかによって変わってきます。
まとめ
【人身傷害補償保険】自動車保険 に必要なケガの補償とその必要性、についていかがでしたか。
自動車保険というと相手への対人賠償、対物賠償を中心で傷害の補償をそんなに気にしていない人も多いでしょう。
車同士の事故では、追突でもした、されたなら過失割合100:0などはありますが、そうでなければ双方に過失がでてきます。
当然揉めるケースもあるので、自分や同乗者がケガをすればなるべく負担が少なくなるようなプランも考えておきましょう。
最悪の場合、自分の自動車保険(人身傷害保険等)で何とかなるようにしておくというのも一つの考え方です。
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