契約者貸付制度|生命保険の貸付の返済方法や仕組みとは?
生命保険の「契約者貸付制度」は、融資の審査もなく加入先の保険からお金を借りることができる制度です。
担保や信用情報、返済方法などは知らない人が多いでしょう。
■この記事で学べること
【1】生命保険の契約者貸付制度とは?
【2】契約者貸付の利率・利息
【3】契約者貸付の返済方法、返済しないはあり?
【4】融資手続きと住宅ローンや信用情報への影響
【5】法人の契約者貸付の経理処理、契約者貸付制度の活用
生命保険の契約者貸付制度について利息や返済方法、貸付される金額と解約返戻金の関係、その際の信用情報などをファイナンシャルプランナーが紹介します。
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この記事のもくじ
生命保険の契約者貸付制度とは?
生命保険でお金を借りる契約者貸付制度とは?
契約者貸付制度とは、契約している生命保険の「解約返戻金の一定の範囲内」で、生命保険会社からお金を借りられる制度です。
一般的にお金借りることのできる貸付可能額は、保険契約の「解約返戻金のおおよそ70~90%」の範囲内です。
借入できる金額は生命保険会社や加入している生命保険の種類や時期によって違います。
解約返戻金のない完全な掛捨タイプの生命保険では契約者貸付の利用をすることができません。
実際には契約している生命保険の契約で自分で積立した保険料からお金を借りる仕組みが契約者貸付制度です。
貯蓄タイプの保険に加入している人は生命保険からお金を借りる選択肢があります。
具体的には次のような商品です。
- 終身保険
- 養老保険
- 個人年金保険
- 学資保険
- 解約返戻金のある一部の定期保険 など
契約者貸付制度のメリット
- お金を借りる際に信用情報の確認や審査などはない
- 貸付けの返済にうるさい催促はない
- 一般的に他の融資などよりも金利が安い、他で借りることができなくても利用可能
自分が掛金として支払ったお金から借りるので、普通にお金を借りることとは少し意味合いが違うのです。
契約者貸付制度のデメリット
- 複利で金利がかかる
- うるさい返済の催促があるわけではないので、いつまでも返済しないままになることもある
- 返済をほったらかしておくと、保険契約が失効することもある
一応貸付制度なので、低金利の現在でも安いものの金利がかかります。
予定利率の高い(条件の良い)積立タイプの保険ほど貸付の利率が高くなります。
また貸付に対する催促がうるさくないと返済が遅れがちです。
最終的には何らかのかたちで精算しなければならないのでここは注意しなければなりません。
同様に解約返戻金の一定範囲でお金を借りますから、返済をしないまま所定の金額を超えると契約が失効することがあります。
生命保険には失効した契約の復活制度もありますから、復活できるならその方がいいでしょう。
次にデメリットではありませんが、生命保険の契約者貸付制度について注意しておきたい点について補足します。
生命保険でお金を借りる契約者貸付制度の注意点
解約返戻金のある貯蓄性の保険でないとこの制度は利用できませんが、いつでも利用できるかというとそうでもありません。
契約して数年ほどだと掛金の支払い総額が少ないため解約返戻金が貯まっていません。
そのため生命保険契約から日が浅いときにはこの制度は利用することができません。あるいは貸付が可能額が少なくなります。
なお、契約者貸付を受けることができるのは本人のみです。
融資を受けることのできる貸付可能額について、毎月掛金を支払っていくと解約返戻金も変わっていくため、融資される可能額も変わります。
生命保険の契約者貸付における貸付可能額は解約返戻金の70~90%程度とお話しました。
例えば「定期保険」は死亡保障における掛け捨ての保険の代表のような商品です。
最近ははじめから全く解約返戻金が発生しないものもありますが、最終的にゼロになるものの契約期間の途中で解約返戻金が発生するものもあります。
このような場合には契約者貸付を受けることが可能です。
またこの後解説する貸付利率も契約する時期によって高いことはあるので利用前にチェックするようにしてください。
生命保険の契約者貸付制度の利率・利息は?
各生命保険会社とも一律に決まった利率を適用しているわけではありません。
また同じ保険会社でも商品によって利率・利息は異なります。
さらに同じ保険会社、同じ生命保険商品でも契約時期によって適用される貸付制度の利率は変わります。
契約時期や保険会社によって契約者貸付の利率は違う
保険会社や保険の種類、加入時期によって契約者貸付の金利は異なり、おおよそ2%-8%程度の利率が適用されています。
例えば平成の初期の段階の貯蓄性の高い保険は予定利率が高い反面、契約者貸付制度の利率も高く設定されています。
約5~6%程度あるいはそれ以上に設定されていた時期もあります。
生命保険会社によっては、自社のホームページに過去の契約者貸付の貸付利率を掲載しています。
「保険会社名 契約者貸付」などの検索キーワードで確認してみてください。
保険会社によっては外貨受取も可能
貯蓄性の保険については運用利率が低いため外貨建ての生命保険を中心にする動きが広がっています。
そうした背景もあって貸付を外貨受取の選択ができるケースもあります。
なお契約者貸付の利率が分かっても、それだけでは契約者貸付金がいくらかわかりません。
具体的に利用を考えるなら保険証券を用意してコールセンターに紹介してください。
貸付を受けるとなると書類のやりとりなども発生するので、事前に入金日の確認も含めて連絡しておいた方がいいでしょう。
契約者貸付はあるとき払いのうるさい返済催促なしです。
利率・利息の高い契約の人は、ほっておくと解約返戻金の目減りが激しいので早めの返済を心がけましょう。
契約者貸付制度の返済方法、返済しないとどうなるか?
契約者貸付の返済方法
契約者貸付はいつでも自由に返済できますが、「全額返済」「一部返済」などを選ぶことができます。
生命保険の契約者貸付制度の返済方法の特徴は、「ある時払いの催促なし」ということです。
これはこれでありがたいことですが、返済が後回しになりがちです。
生命保険からお金を借りるとなるとすでに家計も結構厳しい状況でしょうから、利息も確認しながら計画的に返済していきましょう。
契約者貸付の返済方法については、コールセンターや担当営業などから問い合わせをして進めます。
ある時払いの催促なしはいいのですが、ほったらかしにしておくとどうなるか気になるでしょう。
次に返済しないでおくとどうなるかパターン別に確認します。
契約者貸付で返済しない(死亡した)
貸付金を返済することなく、事故や病気で死亡した場合には死亡保険金から元金と利息が差し引かれます。
契約者貸付で返済しない(満期を迎えた)
保険契約が貸付金の返済をされることなく、満期を迎えた場合には満期保険金から元金と利息が差し引かれます。
契約者貸付で返済しない(解約した)
保険契約を解約した場合には、解約返戻金から元金と利息を差し引きます。
契約者貸付制度において、あまり返済の催促が金融機関よりうるさくないのは、もともと解約返戻金の一定範囲でしか貸付されないためです。
満期を迎えたり、死亡しても相殺できる仕組みになっています。
契約者貸付で返済しないと保険の効力を失うことも
なお、契約者貸付を返済しない状態を続けると、死亡・満期・解約などの前に保険が効力を失うことがあります。
具体的には、返済しないと利息がかかるため、元金と利息の合計が解約返戻金額を上回った場合です。
解約返戻金の範囲ないで貸付をしていたものがこれを超えてしまうため、契約の保障がなくなるので注意してください。
契約者貸付を受けるための手続き
貸付を受ける金額によっては、運転免許証などの本人確認書類が必要なケースがあります。
問い合わせや手続き方法は生命保険会社によって色々です。
- コールセンターへ電話
- HPよりログインして手続き
- 生命保険会社へ来社
- 会社指定のATMより手続き
- 担当営業に依頼
生命保険会社によりますが、主に以上のような方法があります。
生命保険各社とも契約者貸付の続きの案内はたいてい自社のHP上で行っていますから、まずは事前に確認してください。
「○○生命保険 契約者貸付」でweb検索すればたいていでてきます。
契約者貸付がある場合の住宅ローンと信用情報への影響
生命保険の契約者貸付制度に限らず、お金を借りるときに意外と気にする人がいるのは、「信用情報」への掲載や「住宅ローン」の融資への影響です。
実際にマイカーローンなどがあると、住宅ローンの融資審査に引っかかることはあるので当然だとは思います。
しかしここまで説明したように契約者貸付制度は、自分で積み立てている保険料から一定範囲でお金を借りる制度です。
生命保険の契約者貸付制度の利用で信用情報や住宅ローン融資などへの影響はありません。
ただし貸付を受けた金額が多いと、家計上大変なことには変わりません。
返済可能な借入れか、無理がないか、返済の計画はきちんと立ててください。
法人の契約者貸付制度の税金の経理処理
法人が生命保険で契約者貸付を受ける場合、気になるのが融資を受けるお金の税金の取り扱いとその経理処理です。
法人でも借りたお金ですから、生命保険を解約したときの解約返戻金の経理処理とは異なり、利益になるわけではないのでここに税金は発生しません。
契約者貸付は融資借金ですから、あくまで法人の借入金として経理処理を行います。
法人の損益を気にせずに保障はそのままで資金繰りに使うことができます。
生命保険の契約者貸付制度は個人はもちろんですが、法人にとっても資金繰りなどを考慮すると実は使い勝手のいい制度なのです。
法人契約を解約するという方法もあるでしょうが、状況によっては貸付も考えてみるといいでしょう。
お得な生命保険の契約者貸付の活用
お金のやりくりや法人や個人事業主が資金繰りで厳しいときに金融機関の融資を考える前に検討したいのが契約者貸付の活用です。
ここまで説明したように自分が支払った掛金の解約返戻金の一定範囲で融資を受けることができます。
その活用法をみていきましょう。
生命保険の融資を受けられる契約か確認する
お金を借りることのできる生命保険契約であることを知らないと、そもそも保険で融資を受けようと考えることすらできません。
契約時に融資を受けることができると説明されていないこともあるのでぜひ保険会社などに確認してください。
貯蓄性のあるお金が貯まるタイプの保険であれば可能です。
先ほどの挙げましたが、具体的には次のとおりです。
- 終身保険
- 養老保険
- 個人年金保険
- 学資保険
- 一部の定期保険 など
名称を簡単に書いていますが、例えば種類によって「○○○○○型終身保険」などのようになっていたり、ペットネームがついていることもあります。
パッと見て判断できないようなら契約先に聞いてしまいましょう。
勘違いしがちなのが最後の定期保険です。この保険はそもそも掛捨タイプの保険の代表のような生命保険です。
しかし基本は掛捨てでも契約期間中の一定の時期に解約返戻金が発生するものもあります。
貸付を受けても原則返済して続けることを考える
生命保険から融資を考えるくらいですから、お金のやりくりが厳しい状況にあるのは間違いないでしょう。
その段階でまとめて返済できるかというとなかなか厳しいものがあるのが実際のところです。
但し可能であれば融資を受けた分は返済してその契約を続けてください。
特に個人の契約ならなおさらです。
理由はいうまでもありませんが、年齢を重ねていくと生命保険の掛金は高くなることと健康状態によっては加入できないこともあるからです。
加えて貯蓄性のある生命保険は長年の低金利で新たに加入しても魅力のある商品ではなくなっています。
掛捨タイプの保険は安くなっていますが、貯蓄タイプは高くなっています。
継続が可能なら続ける方法も視野に入れておきましょう。
筆者も過去に契約者貸付した取引先の人がいましたが、まとまったお金の契約者貸付を受ける人ほど、返済が後回しになって契約を解約するというケースをいくつかみました。
融資を受けることのできる金額は変わる
契約者貸付は自分の支払った掛金の解約返戻金の一定の範囲でお金を借りることができるのものです。
そのため毎月の掛金を支払うと融資可能額が変わります。
一度契約者貸付を受ける場合、いくらくらいになるのか確認しておくといいでしょう。
カスタマーセンターなどに電話すればその場で分かります。
いくらくらい融資が可能か分かっていると、いざというときに融資を受ける計画を立てやすくなります。
終身保険などは将来年金ではなく融資を受ける選択もあり
終身保険は一生涯死亡保障が継続するのが特徴ですが、それまで貯まったお金を利用して個人年金保険に移行することも可能です。
若いうちはともかく高齢になって死亡保障がそんなに必要でないなら、ここまで貯めたお金を何らかの方法で取り崩す方法があります。
年金に移行する方法もありますが、他に解約する、それ以外に減額や融資を受ける方法もあります。
減額した分は解約と同じ扱いですから、一部保障は残しつつその分はお金が戻ります。
但し、少額ずつ取り崩すということはできないので、必要なだけ契約者貸付を使って融資を受けるという方法もあります。
貯めたお金の取り崩し方法ですが、こうしたことも覚えておいてください。
もちろんもっと前でも家計が苦しいときには下手に金融機関で融資を受けるなら契約者貸付を使った方が有利なこともあります。
契約の失効に注意する
契約者貸付は、返済せずに放っておくと利息が膨らみます。
いまは低金利ではありますし他の融資などよりも利率は低く設定されていますが、解約返戻金の範囲に収まらなくなると契約自体が失効することがあります。
まとめ
契約者貸付制度|生命保険の貸付の返済方法や仕組みとは?、についていかがでしたか。
病気や事故、予期しないトラブルなど急にお金が必要になることは多々あるものです。法人なら資金繰りもあるでしょう。
使わずに済めば一番ですが、もしものときには生命保険でお金を借りることができると知っていれば安心感がありますね。
最近はマイナス金利の影響で掛け捨ての生命保険が中心でしょうが、お金の貯まるタイプの生命保険には、「貸付」の選択があることを覚えておきましょう。
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