確定拠出年金(iDeCo・企業型)の退職・転職時の資産の自動移換とは?
確定拠出年金(企業型・iDeCo)は転職や退職をした際、それまで貯めて殖した年金資産が「自動移換」されてしまうという問題がありました。
■この記事で学べること
【1】確定拠出年金(企業型・iDeCo)の自動移換とは?
【2】2018年5月から自動移換はどう改正された?
【3】確定拠出年金(企業型)の転退職の際、自動移換で注意すること
確定拠出年金(iDeCo・企業型)の自動移換についてファイナンシャルプランナーが解説します。
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この記事のもくじ
確定拠出年金(企業型・iDeCo)の自動移換・資産の塩漬けとは?
確定拠出年金(企業型、iDeCo)の自動移換とは?
確定拠出年金に加入していて転職や退職をすると、加入者の資格を喪失します。
その後「自分で」資産を個人型または他の企業型の確定拠出年金への移換などの手続きを6カ月以内に行わないと資産は現金化されて自動的に移されます。
これが確定拠出年金の自動移換です。
例えば企業型に加入していた人が、退職して実家の自営業を継いだとします。実家では企業型に加入できないので、個人型(iDeCo)の確定拠出年金に資産を移さなければなりません。
いままで勤務していた企業は退職したのですから、すでにその企業で加入資格はありません。
この手続きは自分でしなければならないのですが、ほっておくと運用していた資産は6ヶ月で強制的に現金化されるのです。
その上で現金化された資産は国民年金基金連合会に自動的に移換されてしまいます。
分かりやすくいうと自動車をレッカー移動されたと思ってください。
車を使うことができず(運用ができず)、罰金が取られる(手数料が別に取られる)などデメリットしかありません。
確定拠出年金が自動移換されると資産が塩漬け状態になる!
2016年11月のメディアの報道によると、転退職時に手続きせずに自動移換された資産(塩漬け)の総額がなんと約1,400億円!
【2022年11月2日追記】
2022年11月2日のメディアの報道によると、約112万人分の年金資産が放置された状態になっていることが、国民年金基金連合会のまとめでわかったとのことです。
総額は2021度末で約2600億とのことです。2016年時点から大幅に増えています。
実際に自動移換されると塩漬けされて下記のようなデメリットしかありません。
- 運用がすることができないため、全く資産が殖えない。
- 年金の受給可能な年齢になっても、給付が受けられない(受給には個人型年金に資産の移換が必要)。
- 資産を仮預かりしている期間は、正式な加入期間とはみなされない。
- 自動移換の際に手数料が4,348円
- 管理手数料が毎月51円(年間612円)必要。
株式投資などで購入した銘柄が暴落して売りに売れないため、ずっと保有している状態を塩漬けなどということがあります。
確定拠出年金では、転職・退職時に自分できちんと手続きしないと、上記のように自動移換されて塩漬けされた状態になります。
塩漬けされているだけならまだいいですが、車を路上に放置していたらレッカー移動されたようなものです。
罰金(つまり自動移換されるとコストがかかる)を取られている上に運用できません。せっかく有利な制度で積立したのに資産が減っていくだけです。
特に企業型の確定拠出年金の加入者が自動移換に注意
この話は個人型でも企業型の確定拠出年金の加入者でも同じことです。
年金資産が自動移管されたら損しかしません。
企業型の確定拠出年金の加入者のよくないところは、導入時に勤務先がまとめて契約してくれるので、転退職時も同じように勤務先が手続きしてくれると考えている人が多いことです。
確定拠出年金に加入すると、自分だけの専用口座ができ、そこに掛金を支払い、自分で運用して資産を殖やします。
投資リスクも加入者が負います。
確定拠出年金には、転退職などのときに資産を持ち運びできるポートビリティという機能がありますが、すべて自動でやってくれていたわけではないのです。
こうした問題を受けて自動移換については改正されています。
自動移換の取扱いについて改正
自動移換に関する取扱いの改正
確定拠出年金(企業型・iDeCo)の自動移換についてはこのような問題を受けて改正されています。
【改正前】
加入者資格喪失日(転職・退職日の翌日)の翌月から6か月以内に自分で資産の移換手続きをしないと、年金資産は自動的に国民年金基金連合会に移換
【改正後】
本人の基本情報が一致していることなどを条件に、新たに転職先などで加入する確定拠出年金の口座に移換
またこれまで自動移換されてしまった資産についても、自分で手続きしなければ国民年金基金連合会に保管されたままでした。
今後は基本情報が一致すれば、新たな確定拠出年金の口座に移管されます。
自動移換についての改正はいつから
2018年5月からこうした改正の運用がはじまっています。これなら今後は何も気にしなくていいかというと気をつけておく点はあります。
確定拠出年金(企業型・iDeCo)の転退職の際、自動移換で注意すること
確定拠出年金(企業型・iDeCo)の自動移換の条件
これまで車のレッカー移動のように年金資産が自動移換されていましたが、これについてはある程度クリアされるようになっています。但し条件があります。
例えば、以下のような場合には、自動移換されてしまいます。
- 企業型DC及び個人型DC(iDeCo)の口座の保有確認時点で、新規資格取得口座について加入されていることが確認できない。
- 本人の基本情報が完全に一致していない場合(基礎年金番号が未登録であったり、姓の変更など)
姓の変更というのは婚姻による改姓はもちろんですが、例えば「イカワ」という人が「イガワ」となってしまっていたら基本情報は認識しません。
年金資産の管理は自分でするのが基本
自動移換については以前ほど気にする必要はなくなりましたが、絶対に大丈夫なわけではありません。
転退職するときなどは自分ですることは資産がきちんと新しい確定拠出年金の口座に移されたか確認することです。
年金資産の運用は自分で行いますのが確定拠出年金です。
その管理も自分でするものだという認識は持っておいてください。
いらぬ手数料を徴収され、運用の機会を逃してしまい、老後の資産形成に大きな影響がでてきます。
自分の企業年金の調べ方、確定拠出年金が自動移換された場合
年金(公的年金、私的年金)は、将来の自分の生活の大切な資産です。どのような年金に加入しているのか無関心ではいけません。
特に会社員の場合、何でも会社がやってくれるのが当たり前になっていてほったらかしになりがちです。
自分の企業年金の調べ方や自動移換された場合などの連絡先なども知っておきましょう。
これらを参考にしてください。
まとめ
確定拠出年金(企業型・iDeCo)、退職・転職時の資産の自動移換とは?、についていかがでしたか。
いくつかの改正を経て以前よりも使い勝手がよくなりましたが、自分の資産は自分で守るという意識は持っておいてください。
銀行口座に入金される給料や報酬、その使い方などは自分できちんとやっていると思いますがそれと何も変わりません。
将来の年金資産を貯める有利な制度が、確定拠出年金(企業型・iDeCo)です。そのメリットを充分に享受するようにしてください。
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