火災保険料率の値上げ改定動向!2021年1月に再値上げ
火災保険の全国平均での保険料(掛金)が値上げ改定を続けています。ここ数年では2015年、2019年と2度実施されています。
地震保険料率も改定が続いている状況で大きな負担です。改定の動きを掴んで対処方法を考えていくことが求められる状況になっています。
■この記事で学べること
【1】火災保険で値上げ改定が続いている理由・背景
【2】火災保険料率が改定されるまでの通常の流れと過去の値上げ改定
【3】火災保険の次の改定は2021年1月、その対策は?
火災保険の値上げ改定の状況とその背景を押さえつつ、今後の動きとさらなる改定についてファイナンシャルプランナーが解説します。
*この記事の改定はすでに実施、次回改定の内容は下記の記事をご覧ください。
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この記事のもくじ
火災保険で値上げ改定が続いている理由・背景
はじめに火災保険で近年値上げの改定が続いている背景をみていきましょう。
火災保険の値上げの背景
火災保険がこの5年ほどの間に2度値上げ改定されたのは、主に次の2つの理由によるものです。
- 自然災害による保険金支払い増
- 水濡れ損害による保険金支払い増
一つは誰ものが分かるであろう自然災害の増加です。台風などによる風災や水災、土砂崩れ、ひょう災、雪災などが頻繁に発生しています。
また水濡れ、つまりは漏水事故などですが、これも問題になっています。マンションなどでは構造上、どうしても火事よりも漏水の方が多く発生します。
80~90年代の景気のよかった時代に大量に建築されたマンションが築30年、40年となり漏水事故が多発しているのです。
マンションの耐用年数を考えるとしばらくこの状況は続くと考えられます。
なお、新たに出された改定の届出では、自然災害に保険金の支払い増が理由となっています。
保険料が変わる理由
損害保険会社では、火災保険の収入(保険料)と支出(保険金や事務経費など)の双方がバランスが取れた状態になるよう定められています。
上記のように自然災害や水濡れ事故が増えることで保険金の支払いが多い状況になると保険料(掛金)が引き上げられます。
逆に事故が少なかったり企業努力で事務コストを削減できれば保険料(掛金)を引き下げることができるわけです。
火災保険の場合でいうと、自然災害や水濡れ事故が多発していて、一度の改定では収入と支出の釣り合いが取れないため値上げ改定が続いているというわけです。
火災保険料率改定の通常の流れと過去の値上げ改定
次に火災保険料率が改定されるまでの流れと過去の火災保険の値上げがいつどのように実施されたか見ていきます。
火災保険料率改定までの流れ
損害保険料率算出機構(以下、損保料率機構)は、損害保険料率算出団体に関する法律に基づき、保険料率の算出の基礎となる参考純率の算出を行います。
この損保料率機構は、会員である各損保などから大量のデータを集めて、火災保険の参考純率を算出して会員損保に提供しています。
火災保険料率改定までの主な流れは次のとおりです。
- 参考純率の算出
- 毎年度、参考純率の検証をして改定が必要か判断
- 改定が必要な場合は、金融庁長官に届出
- その後金融庁から適合性審査結果通知を受領
- 一定の周知期間を経て、各社が火災保険の改定を実施
地震保険は各社一律の内容・料率なので各社同じタイミングで改定されますが、火災保険は必ずしもそうとは限りません。
自動車保険などもそうですが、制度改定などに関係する大きな改定があると同じ改定日に実施することが多いようです。
過去の動きを見てみると金融庁の適合性審査の結果通知受領を受けた後、1年から1年半くらいの間に実施されていることが多いようです。
2019年10月の改定では、2018年5月21日金融庁長官への届出(2018年6月15日適合性審査結果通知受領)の後、2019年10月1日に大手損保を中心に火災保険が値上げ改定されました。
これで1年4か月後くらいです。
火災保険の場合は必ずしも各社一律に改定するわけではないため、2019年10月の改定は大手損保を中心にその後数ヶ月ずれるかたちで改定した損保もあります。
参考純率とは?
参考純率がどんなものかというと、その前に保険料率がどのように構成されているか知る必要があります。
火災保険料率は次の2つの料率から構成されています。
- 純保険料 :保険事故が発生したときに保険会社の支払い保険金に充当される部分
- 付加保険料 :保険会社の事業運営の必要経費などに充当される部分
損保各社で変わる部分が大きいのが付加保険料というわけです。ダイレクト系が安いなどというのはこうした事業経費を押さえられるからというわけです。
火災保険料率=純保険料+付加保険料
このうち参考純率に該当するのが純保険料部分です。損害保険料率算出機構ではこれを参考純率として公表しているわけです。
各損保はこの参考純率を参考にして自社の保険料の改定を実施しています。
参考までに地震保険の場合、各社一律のため、純保険料+付加保険料を合計したものを「基準料率」として出しています。
火災保険の過去に実施された値上げ改定
過去5年ほどの間に行われた火災保険の値上げ改定の時期と主な改定内容をみていきましょう。
- 2015年10月1日実施の火災保険改定
火災保険の参考純率を平均3.5%引き上げ、火災保険の保険期間を36年から10年に
- 2019年10月1日実施の火災保険改定
火災保険の参考純率を平均5.5%引き上げ
*参考純率の改定率がそのまま火災保険の値上げ幅になるわけではありません。
*2019年10月改定は大手損保中心に行われ、このときに改定を実施していない損保もあります。
火災保険の値上げ改定は2021年1月
各損害保険会社は2021年1月の改定については大手損保を中心に実施済みです(地震保険の改定も2021年1月で改定済み)。
火災保険料率の改定があるのはもちろんですが、大きな動きとしては「築年数」によるリスク格差をこれまで以上に反映することです。
全社ではありませんが築浅の物件では割引制度などが導入されています。
これによりより拍車がかかるかたちになります。
また地震保険も改定されるため、地域や建物構造によっては火災保険と地震保険のどちらも値上げでダブルパンチになる可能性もあります。
いずれにしても加入先の損保などに動向を確認してみてください。
火災保険の値上げの対策は?
最後に火災保険の値上げの対策について考えてみましょう。
はじめにすることは改定がいつ行われるか確認することです。地震保険に加入している場合はその改定日もです。
自分が加入している火災保険の保険期間(いつから、いつまでか)を確認し、その間に他の改定があったかも確認しておきましょう。
まずは現状の把握が大切です。
- 必要な補償を手厚く、そうでなければ薄くするか除外する(水災は外すことができれば安い)
- 免責金額(自己負担額)の設定 軽微な損害は自費にする
- 契約期間を長期に、支払い方法はなるべくまとめて支払う(一時払い→年払い→月払い)
楽天損保のようにハザードマップのリスク区分に応じて水災補償の保険料を段階的に分ける損保もでてきています。
個々のリスクを可能な限り確認して、手厚くする補償とそうでないものなどを区分していくことが大切です。
また改定時期をチェックして必要に応じて火災保険の見直しをすることも必要です。
長期一括払などが難しければ、長期年払なども検討してください。割引というよりも契約期間中はその後の改定の影響を受けません。
まとめ
近年の改定は上昇幅が大きく、小手先の対策では対応しにくくなっています。
長期契約は一括払いでなければ、そんなに割引幅は大きくありませんが、今後の値上げなどの影響を受けないようにする意味では対策する価値はあると考えます。
いずれにしも火災保険の値上げ改定は2021年には実施されるでしょうから動向に注意してください。
なお、地震保険に加入している人は後1回残している地震保険の改定の動きも忘れないようにしましょう。
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