住宅ローンの繰り上げ返済、上手なタイミングとコツ5選
住宅ローンの繰り上げ返済」は、タイミング・時期によって損得が変わるので、よく検討しなければなりません。
■この記事で学べるこ
【1】住宅ローンの繰り上げ返済とは?メリット・デメリット
【2】繰り上げ返済のタイミング、住宅ローン控除との関係
【3】ボーナス併用払いと繰り上げ返済
【4】借り換えと繰り上げ返済・手数料
【5】住宅ローンの繰り上げ返済のタイミングとコツ5選
住宅ローンの繰り上げ返済とは?メリット・デメリットから、繰り上げ返済をしたほうがいいか、しないほうがいいかなどシミュレーションなども交えてタイミングと時期、そのコツを解説します。
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この記事のもくじ
住宅ローンの繰り上げ返済とは?
住宅ローンの繰り上げ返済とは、返済の負担を軽減する方法の一つです。
わかりやすく言うと、毎月あるいはボーナス時に返済する額とは別に、住宅ローン(借入金)の全部または一部を前倒しして返済します。
返済額の観点からは全部繰り上げ返済する、あるいは一部を繰り上げ返済する方法の2つがあります。
- 「期間短縮型」
- 「返済額軽減型」
住宅ローンの総返済額や毎月の返済額、返済期間などが短縮することになり、返済の負担が軽減されるという仕組みです。
繰り上げ返済/期間短縮型とは?
繰り上げ返済の期間短縮型は、毎月の「返済額」は変わらずに「返済期間」が短縮されます。利息軽減効果が大きいのが特徴です。
総返済額の利息負担を効率的に減らしたい、住宅ローンをなるべく早期に完済したい人向けです。
繰り上げ返済/返済額軽減型とは?
繰り上げ返済の返済額軽減型は、返済の翌月から「返済額」が減り、「返済期間」は変わりません。
毎月の返済額が多くて負担、出産を視野に入れていて働けなくなるなど将来の収入減の可能性もあるような人に向いています。
繰り上げ返済は期間短縮型と返済額軽減型どちらを使う?
それではどちらがどうなのかというと、2つの違いをまとめると次のようになります。
- 期間短縮型 毎月の返済額が変わらず、返済期間が短縮 利息の総支払い額は少ない
- 返済額軽減型 毎月の返済額が減り、返済期間は変わらず 利息の総支払い額は多い
住宅ローンの2つの繰り上げ返済は同一条件であれば、一般的に期間短縮型のほうが利息軽減効果は高くなります。
住宅ローンの返済を総トータルで考えた場合はこちらが得です。
つまり金銭上の収支のみを考えるのであれば期間短縮型ということになります。
金銭上の収支以外に何を考えるのかと思うでしょうが、長い返済期間の間には色々なことがあります。
子供がいるなら、住宅ローンの返済と教育資金の支払いが重複することもあります。
どうしても家計が厳しいので毎月の支払いを減らしたいケースもでてきます。
現金を手元においておくという方法もありますが、繰り上げ返済をするなら、毎月の返済額を減らすために返済額軽減型を使う選択肢もあります。
繰上げ返済の住宅ローン利息軽減効果のシミュレーション
期間短縮型が収支の上でお得ということが分かっても数字でみてみないとピンとこないでしょう。
期間短縮型と返済額軽減型の住宅ローン繰上げ返済のシミュレーションをしてみましょう。
<シミュレーション条件>
融資金額3,000万円 借入期間35年 借入金利1.5% 5年経過後200万円繰上げ返済
ボーナス返済なし
毎月の返済額 | 残存返済期間 | 総返済額 | ||
期間短縮型 | 繰り上げ返済前 | 91,855円 | 30年 | 38,579,100円 |
繰り上げ返済後 | 91,855円 | 27年3ヶ月 | 37,520,394円 | |
返済額軽減型 | 繰り上げ返済前 | 91,855円 | 30年 | 38,579,100円 |
繰り上げ返済後 | 84,953円 | 30年 | 38,094,380円 |
- 期間短縮型 残存返済期間 2年9ヶ月短縮 総返済額1,058,706円軽減
- 返済額軽減型 毎月の返済額 6,902円軽減 総返済額484,720円軽減
このようになります。総返済額で見ると、期間短縮型の繰り上げ返済によって利息が大きく軽減されているのが分かります。
また返済期間が3年弱ほど短縮されています。
すでに住宅ローンの返済をしていて、完済予定が定年後の人は期間短縮を繰り返すことで完済時期を定年前に持ってくることも可能です。
返済額軽減型も同様にこれを繰り返すことで、毎月の負担を減らしていくことができます。
一定の期間のみ支払いが厳しいのであれば、繰り上げ返済をする(このシミュレーションでは200万円)お金を手元に置いておくというのも考え方です。
住宅ローンの繰り上げ返済をどうするかはまずはシミュレーションをしてみてください。
家計の状況は収入の今後の状況はみな違います。一つの情報に惑わされずにじっくり検討していきましょう。
繰り上げ返済する住宅ローンのメリット・デメリット
繰り上げ返済のシミュレーションで、住宅ローンの元金を早く返済していくことがいかに有利かわかったと思います。
しかし繰り上げ返済にもメリットとデメリットがあります。具体的にみていきましょう。
繰り上げ返済のメリット
- 住宅ローンの総返済額を効率的に減らせる
- 住宅ローンの早期完済が可能
- 月々の住宅ローンの返済額を減らすことができる
表現の仕方は違いますが、一番のメリットはお金の収支です。
大きな買い物ですので、住宅ローンの借り入れが大きいほど、借入期間が長いほど繰り上げ返済の金銭的な効果が高くなります。
繰り上げ返済のデメリット
- 繰り上げ返済することで、家計にある現金がなくなる
- 住宅ローン控除が受けられなくなる可能性
特に注意してほしいのがこの2つです。繰り上げ返済を頑張って、積極的に返済を進めていくことは素晴らしいと思います。
やり過ぎると繰り上げ返済貧乏になりかねません。
住宅ローンは長期にわたる返済をトータルでみて、終わったときに繰り上げ返済を頑張って良かった、となるのです。
企業は資金繰りが悪化して現金が回らなくなれば黒字でも潰れます。
個人でも一緒です。繰り上げ返済をすることで手元から現金がなくなります。
貯蓄では増えないから返済に回すのは選択肢の一つですが、返済したお金は貯蓄とは違うので手元に戻ってくることはありません。
住宅ローンの返済はもちろん今の生活も大事ですから、家計がどん詰まりにならないかも頭に入れておきましょう。
この家計のバランスを考えつつ、返済額に占める元金の割合が高いうちに繰り上げ返済した方が得です。
ただ家計の資金繰りという視点は忘れないようにしてください。利息等は無視して書きますが、下記を比べてみてください。
- 住宅ローン残高2,000万円・預金ゼロ
- 住宅ローン残高2,500万円・預金500万円
極端なことを書きましたが何となく言いたいことは伝わると思います。
繰り上げ返済は確かに得ですが借りたお金を返すので、返済に回したお金は手元から離れたらそれで終わりです。
ましていまは低金利です。
生活資金を手元に置いておく以外にもまとまったお金があることで、借りている金額以上に投資で増やすことを考える人もいるでしょう。
他にも自分の本業に力を入れるために、手元にお金があった方がいい人もいます。
また実際にはない方がいいことですが、不幸があったり、要件を満たすと団体信用生命保険で住宅ローンが完済することもあります。
繰り上げ返済をしなければその分のお金は手元に残せたということもあります。
うまく家計のバランスを取りつつ、繰り上げ返済を使ってください。
住宅ローンの繰り上げ返済はどのタイミング・時期がお得?
住宅ローンの返済方法は、元利均等返済が使われていることが一般的です。
この元利均等返済は返済額は返済期間中ずっと同じですが、返済額に占める元金と利息の割合が返済期間の経過に応じて変わっていきます。
住宅ローンの返済は、返済の初期ほど利息の割合が高く、返済期間の経過にとともに元金の割合が高くなっていきます。
利息をなるべく減らすことが、住宅ローン返済の負担を軽減するコツの一つです。
つまり住宅ローンを組んで早いタイミング・時期で繰上げ返済をするほど、軽減される利息は多くなるのです。
繰り上げ返済の大前提は、まずはここが基本ですのでよく覚えておきましょう。
住宅ローン控除と住宅ローン繰り上げ返済のタイミングの関係
住宅ローン控除と繰上げ返済をするタイミング・時期の関係
住宅ローンの返済と同時にコツコツ貯蓄もしてお金が貯まったからすぐに繰り上げ返済がいいかというと必ずしもそうとも限りません。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)があるからです。
住宅ローン控除は税額控除の一つで納め過ぎた税金が戻ってくる制度です。
納めた税額以上にお金が戻ってくることはありません。現在ではその年の年末の住宅ローン残高の1%(上限額あり)が控除限度額となります。
繰上げ返済を行うと、年末時点の住宅ローン残高が減るので、住宅ローン残高のメリットも少し薄くなるということです。
住宅ローン控除は上手く使いたいということであれば、年末にするより年明けに繰り上げ返済を行った方がよいということです。
住宅ローン控除の状況により、繰り上げ返済のタイミング・時期も考える
返済が始まってからの時期やタイミングによって、控除限度額が異なります。
控除限度額の割合が少なくなってくると、年末の残高に必ずしもこだわる必要もないケースもあります。
控除額が少ないとあまり差がなくなってくるということです。
いずれにしても住宅ローン金利が低くいまのローン返済も大変ではないので、当面は普通に返済して住宅ローン控除をフル活用するというのはありです。
住宅ローン控除は、いつ頃融資を受けたかによって条件も異なるのでこうした点も考慮してください。
タイミングを見て繰り上げ返済するより、資産運用した方が得か?
住宅ローン金利が極めて低くなっている現在、低金利の住宅ローンを優先的に返済するより、資産運用して殖やすべきという意見があります。
確かにこれほどの低金利で住宅購入資金を借りられることはなかなかあることではありません。
全期間固定金利でも1%台の金利はそうはありません。
これが変動金利ならなお更です。しかし融資を受ける金利が低いように、お金を預ける金利はさらに低いのが現状です。
長期に投資できる余裕資金で、資産運用にある程度知識があるならともかく、価格の変動の大きい(つまりリスクの大きい)金融商品では元本割れする可能性も否定できません。
どんな方法も否定するものではありませんが、住宅ローンの返済の代わりとしては微妙です(特に投資の経験がない人の場合)。
もちろん投資で住宅ローンの返済金利以上に殖やすべき、殖えるという考えのある人はお金を低金利で借りたまま、資産運用を軸に考えるのもありです。
余裕資金としてじっくり投資できる期間があればまだいいのですが、必ずメリット・デメリットがありますので事前によく確認してください。
実践するかどうかは別ですが、いまの時代こうした考え方もあるのだという柔軟な思考も大切なことです。
ボーナス併用払い、繰り上げ返済はどうするのがお得?
住宅ローンのボーナス払いの有利な点と不利な点
本来ボーナス払いはしない方が、返済に安定感があります。20年、30年も先勤務先の状況がどう変わるか分からないからです。
ボーナスは会社の都合で増えたり、減ったりもしくは無しになったりするからです。
その半面ボーナスを使うことで、返済を減らしていけることは有利な点です。
ボーナス併用払いを使うのは無理のない金額にすることがポイントです。
多少ボーナスが少なくなってもこのくらいなら返済できるという金額を考慮して設定してみるといいでしょう。
その見極めができれば大きなアドバンテージになります。
住宅ローンのボーナス併用払いで繰り上げ返済をするとき
上記のことから繰り上げ返済ではボーナス部分を積極的に減らすという方法も頭に置いておきましょう。
最終的にはシミュレーションして、具体的な方法を検討するわけですがこの部分の意識は持っておいてください。
住宅ローンは繰り上げ返済と借り換えはどっちを選ぶ?
すでに住宅ローンの返済をしている人なら、繰り上げ返済だけでなく、借り換えを視野に入れているケースもあるでしょう。
借り換えができるほどの金利差や住宅ローン残高があるかどうかにもよりますが、現在の住宅ローンの条件を確認してシミュレーションしてみてください。
金利差によっては単純な繰り上げ返済よりも借り換えのケースの方が負担軽減効果は高くなることもあります。
住宅ローンの金利や残高、残りの返済期間などにより結果は変わります。
インターネット上で金融機関が、自由に使えるシミュレーションツールを提供しています。
自分自身の条件では、どのようなケースでどう有利になるのか、条件設定を変えてみてシミュレーションしてみてください。
また住宅ローンの繰り上げ返済と借り換えを比較する場合、変動金利(半年型)や当初固定金利型への借り換えとの比較では、金利上昇時の状況も考慮してください。
住宅ローンの繰り上げ返済に手数料はかかる?
住宅ローンの一部繰上げ返済については、手数料無料のところが増えています。特にインターネット手続きするケースでは多くあります。
しかし住宅ローンの全額について繰上げ返済をするケースでは、手数料が掛かるパターンが多くなります。
一般的に一部または全部の繰り上げ返済でも、インターネット手続きの方が、対面で手続きするより繰り上げ返済手数料が安くなっています。
ネットバンキングなどだと、繰り上げ返済の手数料を無料にしているところもあります。
手数料が掛かるケースでは、金利タイプ(変動金利・固定金利など)、返済する元金がいくらか、手続き方法などによって変わってきます。
手数料がかかる場合には、繰り上げ返済をするタイミング・時期だけでなく回数なども意識しておきましょう。
賢く住宅ローンを繰り上げ返済するタイミングとコツ5選
住宅ローンを繰り上げ返済するコツとそのタイミングについて見ていきましょう。シミュレーションは必ずして貰ってください。
住宅ローンの繰り上げ返済では何が有利か知っておく
お金の収支でみると、返済額軽減型よりも期間短縮型を使うこと、そして住宅ローンを利用して時間の経過とともに利息軽減効果が徐々に減っていくことがベースです。
繰り上げ返済をすることで、何を有利にしたいのか(早く返済したい、毎月の支払いを減らしたいなど)を明確にしましょう。
単に得な方がよいということであれば、しばらく様子をみるというのも一つの方法です。
現金はある程度は手元においておく
先ほどの住宅ローンの繰り上げ返済の代わりに試算運用の話に似ていますが、住宅ローンの繰り上げ返済を積極的に返済することで、利息軽減効果がかなりでてきます。
期間短縮型のみで繰り上げ返済を行った場合、頑張って繰り上げ返済して得した~と実感するのは、返済が終わったときです。
あくまでも住宅ローンの返済トータルでみたら得ということで、返済している間はあまり得した実感は少ないはずです(数字の計算上分かるだけ)。
繰り上げ返済した金額は借金の返済です。
繰上げ返済した後に、お金の事情が変わって生活が苦しくなってもお金は戻ってきません。
手元に一定程度のお金は残しておいてください。
住宅購入する人は、子供の教育費などが重なるケースが多いので、予測しにくい変動要因が発生する可能性があります。
家計のやりくりに問題がないように注意しておくのも繰り上げ返済のコツです。
住宅ローンの繰り上げ返済の手数料にも注意
もともと繰り上げ返済は手数料を取られるので、安易なタイミングで頻繁に繰り上げ返済を行うはよくありませんでした。
最近は特にインターネットでの繰り上げ返済において無料を謳うところがでてきています。
繰り上げ返済の手数料が必要なケースでは負担するコストを吟味して、どのくらい、どのタイミングで繰り上げ返済をするか検討してください。
目先のお金の損得と住宅ローン返済期間トータルでの収支の2つの目線
住宅ローンに関係するお金の損得には、短期的な視点と長期的な視点が必要です。
長い返済期間の間に一生懸命繰り上げ返済に励んでも、期間短縮型のみなら得を実感できるのはずっと後です。
家を買ったんだから、甘ったれたことを言ってないでどんどん返済するというのも当然の考え方です。
一方、子供がいる人は子供の成長に合せてやりたいことも多いでしょう。
子供がその年齢のうちだからできることもあります。
これは価値観の話になりますので決まった答えはありませんが、何が自分や家族にとって大切かも考えてみてください。
お金のことは重要なことですが家を買うことそのものが目標ではなく、その後の何かのために家を購入したのではないでしょうか。
また昨今の低金利の下で変動金利を使っている人は、繰上げ返済する前によくシミュレーションしてください。
住宅ローン控除の減税効果と相殺される可能性があります。特に金利が1%切っている人は注意が必要です。
住宅ローンのお金の収支とお金のやりくり
この記事の中で何度か「金銭上の収支では得」という表現を使いました。
お金の話だから収支の損得以外に何を比べるのかと言われそうですが、家計のやりくりには常に目を光らせてください。
世の中の状況(外部要因)や家庭の状況(内部要因)は、仮に35年の長期間、住宅ローンを組んでいれば、状況は色々変わります。
家族が病気になるかもしれませんし、仕事を失うかもしれません。
現在の史上空前のマイナス金利も大きな外部要因の変化です。
有利な方に変わる分には問題ありませんが、不利な方に変わることがあれば家計のやりくりに大きな影響があります。
子どもも教育資金や老後資金などいつ必要か分かる大きなお金もありますので、ライフプラン全体を考慮してください。
一定の現金を残す、というところでも言いましたが、キャッシュが回らなくなれば家計が破綻します。
繰り上げ返済は、資金があればいつでもできます。
お金が貯まったら即、繰り上げ返済というのもありです。
しかし様子を見つつ家計上また日々の生活上、大丈夫だなと自分が安心できるタイミングで繰上げ返済するのも繰り上げ返済の上手なコツなのです。
まとめ
住宅ローンの繰り上げ返済、上手なタイミングとコツ5選、についていかがでしたか。
30年も前なら想像できないような低金利での融資で住宅ローンを利用することができます。
反面、税金や社会保険料負担、昔ほど収入の見通しが立ちにくいなど不透明な要素も多いのが現代の特徴です。
豊かな人生を送るための住宅購入が住宅ローンの返済不能になっては目も当てられません。
だからこそ家計のやりくりが住宅ローンの返済前も返済中も気にしてください。
せっかく購入した家です。家族みんなでずっと安心して豊かに生活できることが何よりも大切です。
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