相続(税)対策は生命保険の非課税枠500万円の活用がキモ
相続税の基礎控除と別に生命保険には契約形態によって、保険金の受取りが相続税の扱いとなり、死亡保険金の非課税枠500万円があります。
■この記事で学べること
【1】相続(税)対策と生命保険の利用が有利な理由
(非課税枠500万円)
【2】対策に必要な生命保険の種類とそのメリット
【3】生命保険を利用するときの注意点とポイント
生命保険を使った相続(税)対策について、そのメリットや注意点についてファイナンシャルプランナーが解説します。
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この記事のもくじ
相続税で対策が必要な問題
最初に相続対策を考えるにあたり、どんな問題があるのか確認しておきましょう。相続関係でお金に関わることで対策が必要になる問題は主に次の3つです。
- 納税資金対策
- 節税対策
- 遺産分割対策
この記事のタイトルに「相続(税)対策」と、税に( )をつけているのは税に関わる対策とそうでないものがあるからです。
最初の納税資金対策が関係する人はそれなりの財産がある人になりますが、相続税の納税も基本は現金納付です。
延納や物納も制度としてはあるものの、延納は余計に課税されますし、物納は好きな財産を自分で選べるわけではありません。
特に日本人の場合は財産の多い人は不動産の所有割合も高いことから、財産はあるけど現金がない状態になりかねません。
また2015年1月からの相続税の基礎控除の改正により、相続税の課税を受ける人が増えました。
それでもまだ関係ないな~という人も、必ず「二次相続」まで意識しておいてください。
一次相続よりも二次相続の方が法定相続人の数が減るので基礎控除が減ります。
配偶者の税額軽減なども使えなくなりますから、一次相続では課税されなくても、二次相続での課税もありるのです。
またほとんどの人に関係あるのが、「遺産の分割対策」です。
これは財産が多くなくても問題になります。そんなに財産がなくても百万円単位の遺産があると揉めることはざらにあります。
2015年1月の相続税の基礎控除の改正内容と税率
何年も経つので知っている人も多いでしょうが、2015年1月相続分からの相続税の改正について確認しておきましょう。
【相続税の基礎控除の計算】
5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)=基礎控除
↓
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除
法定相続人が妻と子供2人なら、改正前は8,000万円まで課税されなかったものが、4,800万円に変わっています。
この差は大きいですよね。
さらに相続税の最高税率が50%から55%に変更されました。
最高税率の課税を受ける人はごく一部でしょうが、ここに関わるくらいになるとかなり時間をかけて対策をとる必要があります。
相続の納税資金・節税・分割対策をほっておくとトラブルの原因になります。
相続税の改正で生命保険の非課税枠の利用が有利な理由
相続税に関わる対策というと遺言や生命保険、信託などがあります。
それぞれをうまく活用するのがベターですが、この中で比較的身近な存在なのは生命保険です。
生命保険には実は相続について、基礎控除とは別に次のような死亡保険金の非課税枠があります。
【生命保険の非課税枠の計算】
500万円×法定相続人の数=生命保険の死亡保険金の非課税枠
つまり先ほどの例で言うと、相続人は妻と子供2人ですから500万円×3人=1,500万円まで非課税にできるのです。
AやBには夫や妻、子などを入れてイメージしてください。法定相続人であれば兄弟姉妹でも構いません。
なお、養子縁組や代襲相続によって第一順位の相続人となった場合には、法定相続人となるため非課税枠の対象となります。
生命保険の死亡保険金はみなし相続財産になります。
仮に相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることができます。
保険金受取人は指定できますし、複数人(子ども2人など)にすることもできますからこれを使わない手はありません。
相続対策に必要な生命保険の種類
具体的にどのような生命保険が必要かというと「終身保険」です。
死亡するまで一生涯保障が付帯されていないと、保険満期の期限の決まっている生命保険では保険金が支払われない可能性が否定できないからです。
具体的には、保険料を一括で支払う一時払いの終身保険が加入できればベターです。
一時払いで保険料を支払う資金があるかという問題と、金利の影響で一時払い終身保険の販売の取りやめ、もしくは予定利率を引き下げる生命保険会社が相次いでいます。
保険会社によって対応は違いますが、一時払い終身保険の場合、高齢の方でも比較的加入しやすいので覚えておいてください。
資産運用の一環なら、予定利率が引き下げられてまで加入するのはどうかと思いますが、相続対策であるなら加入できるのなら検討の余地は大いにあります。
相続税対策に生命保険を利用するメリットは?
生命保険が相続税対策と相性がいい理由がいくつかあります。
- 生命保険の死亡保険金の非課税枠が利用できる。
- 死亡保険金により、相続財産の外から現金を持ってくることができる。(税金を払いやすい、分けやすい)
- 亡くなった本人の預金口座は凍結されるが、保険金は相続人固有の財産で入金が早い
- 相続放棄をしても受取ることができる
色々ありますが、メリットを理解することでうまく活用する方法が分かります。
相続税対策に生命保険を利用するときの注意点とポイント
生命保険には相続税の非課税枠があることはすでにお話ししたとおりです。
しかし生命保険の非課税枠を使うには契約に条件があり、何でも非課税枠が使えるわけではありません。
相続(税)対策に必要な生命保険の契約形態
契約者(保険料負担者):A 被保険者:A 受取人:B(法定相続人) 相続税の対象
*被保険者(生命保険の対象者)
契約内容が上記のようになっていることが必要です。
ここが違っていると生命保険の死亡保険金の非課税枠は利用することができません。
親が子に財産を渡すなら契約者が父、被保険者も父、受取人が子ということになります。
なお、よくある話ですが、契約者=保険料負担者であることに留意してください。
上記の例だと契約者は父ですが、やりくりが大変で引落口座は父の母(つまり祖母)が支払っていたということであれば、非課税枠の適用はできません。
なお契約形態によって、生命保険の死亡保険金は次のように課税されます(いずれも契約者=保険料負担者とする)。
契約者:A 被保険者:B 受取人:A 所得税の対象
契約者:A 被保険者:B 受取人:C 贈与税の対象
契約者が保険料を負担するのが、厳しいようであれば贈与プランの検討もしてみましょう。
具体的には、現金を贈与してもらいその資金で保険料を支払うというものです。
ただし、単純にお金の振込だけをして贈与したことにすると、計画的なものとして普通に相続財産とされてしまいます。
相続(税)の対策で生命保険等で必要なこと
最低でも以下のことはしておいてください。
・毎年贈与契約者を作成すること
・贈与する金額を変更すること
そんな面倒をしなくても子ども名義の銀行口座なら親が管理しているものがあるので、そこに振り込めばいいだろうと考える人もいるかもしれませんね。
贈与契約ですから、贈与する方があげます、贈与される方がもらいますで成立するものです。
親が管理している子の預金口座に振り込んでおいても否認される可能性大です。
登録印も親の印鑑のままだったら、間違いなく駄目です。
贈与契約書を毎年作るのは手間かもしれませんが、年に1回こうしたことを家族で考える機会があるのはいいことです。
なかなか家族間でもお金の話はしにくいものですから、こうした行事的なものがあるのはいいきっかけです。
確定日付も利用する
手間はかかりますが、贈与契約書に「確定日付」を公証役場で作っておくことができればよりよしです。
これは贈与契約書の内容を公的に証明するものではありませんが、その日時でその書類が作成されていたことを証明するものです。
つまり贈与契約書は作成していなかったから後から過去に遡って作成した、というのではなく、
その日その時にきちんと贈与契約書がありましたよ、とういのが分かる書類です。
1通700円くらいです。
相続対策は色々なことが言われますが、判断するのは相続人でもなければ、相続の専門家でもありません。
手間がかかっても間違いのない方法を取っておいた方が、失敗は少なくなります。
まとめ
相続(税)対策は生命保険の非課税枠500万円の活用がキモ、についていかがでしたか。
相続(税)の対策には、生命保険の非課税枠の活用を使うことで控除が増えますし、節税にもつながります。
また親族間で最ももめ事が起こる遺産分割対策にも有効です。できれば遺言書の作成も視野にいれてトラブルを少なくしましょう。
相続は人生で最後のお金の使い方が問われます。粋できれいなお金を遺したいですね。
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