意外と知らない火災共済と火災保険の違いと比較。重複契約しても大丈夫?
「火災共済」と「火災保険」は似ていますが違う仕組みです。また火災共済は県民共済やこくみん共済coop(全労済)、JA共済、コープ共済などさまざまです。
■この記事で学べること
【1】火災共済と火災保険の違い
【2】火災共済と火災保険で異なる保障と掛金
【3】主な火災共済の種類と内容
【4】重複契約は火災共済と火災保険で可能?
【5】年末調整・確定申告における控除
意外と知らない、似ているようでかなり違う火災共済と火災保険についてファイナンシャルプランナーが解説します。
この記事のもくじ
火災共済と火災保険ってどう違う?
火災共済と火災保険の目的の違い
共済と保険の大きな違いは、共済は営利目的ではないことが特徴の一つです(非営利)。
保険はいわゆる営利事業ですのでこの点が最も大きな違いです。
火災共済と火災保険の加入対象者の違い
共済は原則として組合員(地域や職域など)やその家族がでなければ加入することができません。
保険は不特定多数の人が加入することが可能です。
共済は組合費を支払い組合員になれば加入できますので、そんなに加入のハードルが高いわけではありません。
火災共済と火災保険、よく比較されますがこのように制度自体かなり違います。
どっちがお得ということもよく聞かれるのですが、仕組みや制度が違うので本来無理矢理同じテーブルにのせて比較するのはナンセンスです。
それぞれの特徴や制度をよく確認して、自分に合う方を選ぶのがいいわけです。
火災共済と火災保険の用語の違い
火災に限らず共済と保険はそもそも使う用語が異なります。
専門家でなければ細かいところですが、両者の違いを知る上で使う用語の違いを知っておくことは大切です。
火災共済は、共済といいますが、火災保険では保険といいます。
ここをごちゃまぜにしてしまっていることがありますが、共済であれば火災共済です。
共済では、毎月支払う「共済掛金」、万が一のときに受取る「共済金」という言葉を使います。これを保険に当てはめると、「保険料」そして「保険金」になります。
共済では「保障」と言いますが、保険では生命保険では「保障」、今日のテーマの損害保険(火災保険)では「補償」を使います。
この記事では、火災共済を軸に進めていきますので、以後は「保障」という言葉で統一します。
使用する言葉の違いですが、言葉の意味が分かっていないと内容を理解できません。
使う言葉の違いを認識してください。
火災共済と火災保険の保障の違いと比較
火災共済と火災保険の契約金額の決め方
一般的に火災共済の場合、建物などの共済金額は平米数による口数で自動的に決まります。
これに対して火災保険の場合。建築費あるいは平米数などから算出しますが、契約できる金額に幅を設けています。
同じ場所や構造、広さの建物でも良い材料を使っていれば、金額を高めに評価する必要があるでしょうし逆もあるからです。
柔軟に対応できる分、保険の方が実態に応じた金額をつけることには長けています。
また火災共済の場合、保障する内容によって支払われる共済金が変わることがあります。
火災保険では、建物に2,000万円契約していたら、通常はこの金額を上限に火災や風災、水災など他の補償でも実際の損害を保障します。
共済の場合は、保障ごとにカバーされる金額が異なるケースがあるので注意してください。
火災共済と火災保険の保障
火災共済は保障を住まいの住環境に合せて補償のカスタマイズしたり、選んだりすることが苦手です。
火災保険は保険会社によって差はありますが、必要な保障を選んだり付けたり比較的自由です。また自己負担額を設定することなども可能です。
また火災共済と火災保険を比べると保障額や内容も含めて火災保険の方が厚い内容になっている傾向があります。
また地震保険はその名の通り保険にのみ付帯して、国が関与しているため全ての損害保険会社共通です。
共済の場合、地震の保障はありますが、いわゆる地震保険とは内容や支払いの基準などもまったく異なる独自の保障と理解してください。
火災共済と火災保険の掛金
共済は非営利の事業のため、年に一度割戻金がでるものがあります。
補償内容が異なるので単純な比較はできませんが、一般的には共済掛金は保険と比べると割安な傾向にあります。
火災共済にはどんな種類がある?(こくみん共済coop、県民共済、JA共済、コープ共済)
共済も種類が多様で、主な共済には全労済、都道府県民共済、コープ共済、JA共済などがあります。
全国にはさまざまな共済組織がありますが、これらを中心にみていきましょう。
これらの違いを簡単に表にまとめると以下のようになります。
こくみん共済coop(全労済)、県民共済、コープ共済 | JA共済 | 損害保険会社 | |
監督官庁 | 厚生労働省 | 農林水産省 | 金融庁 |
根拠法 | 消費生活協同組合法 | 農林共同組合法 | 保険業法 |
監督/検査 | 有 | 有 | 有 |
セーフティネット | 無 | 無 | 損害保険契約者保護機構 |
共済と保険が違うのは理解しやすいでしょうが、共済によって監督官庁やその運営の元になる法律が違っていたりするのです。
主な火災共済の内容(こくみん共済coop、県民共済、JA共済、コープ共済)違い、比較
こくみん共済coop(全労済) 住まいる共済
※2019年6月1日より全労済(全国労働者共済生活協同組合連合会の略)は、その愛称を「こくみん共済coop」にしました。
今後はこくみん共済 coopは全労済のことと認識してください。
ちなみにcoopというのは協同組合の意味です。
なお名称がにていますが、コープ共済は全労済が引受け元で商品性が同じなのでここでは取り上げません。
こくみん共済 coopの保障の組み方は新火災共済+新自然災害共済(標準・大型2パターン)です。
新火災共済のみでも契約可能です。ただし自然災害共済とは保障額が異なります。
共済の中では保障を多少選ぶことができる特徴があります。
こくみん共済 coopの保障で注意が必要なのは、特に自然災害に関する内容です。
- 新火災共済のみ
- 新火災共済+新自然災害共済(大型タイプ)
- 新火災共済+新自然災害共済(標準タイプ)
上記のいずれを選ぶかで保障される上限額が異なります。
また火災保険と異なる点として火災で全焼したときと、風水害等で全壊したときの限度額が必ずしも同一でないことがあります。
契約の際によく注意してください。
風水害つまり台風や暴風雨、河川の氾濫による浸水、土砂崩れなどがこの保障の対象ですが、共済金の支払い要件がかなり細かく設定されています。
現在の火災保険はこの部分は昔のものよりもシンプルになっているので、こくみん共済 coop(住まいる共済)のこうした部分も契約の際にはよくチェックしておきましょう。
県民共済 新型火災共済
各都道府県民共済における新型火災共済の場合、盗難や自然災害関係などの保障が弱めです。
共済は全般的に火災保険で付帯されている破汚損(偶然な破損など)まで保障されていません。
充分な保障ではありませんが、県民共済はその分保険料負担が軽いので、住まいの周辺環境なども保障と掛金のバランスよく確認して検討するといいでしょう。
JA共済 建物更生共済むてきプラス
積立タイプなので他の火災共済と少々毛色が異なります。積立関係は現在の状況では色々意見があります。
特に火災共済(保険)関係の積立は殖えにくいので、自分で資産運用する人には不向きです。元本割れするようであれば、あえて積立てを選択する必要がないからです。
一方で畜舎や堆肥舎などの特定建築物を対象に地震保障を付帯できるのは農協関係のJA共済ならではです。
火災共済と火災保険、重複契約(二重契約)は可能?
共済の保障額が高めに設定できないことがあるので、契約を分割することを考える人もいるようです。
但し、一つの保険の対象(建物や家財)に対して火災共済と火災保険の重複契約はやめた方がいいでしょう。
そもそも重複契約していても共済も保険も自社で契約できる範囲以上の共済金(保険金)は支払いません。
自社内のルールの中で相手の分と併せて保障額が付帯しているなら按分するなりの対応になります。
住まいや家財が損害を受けているときにわざわざ2社に連絡を取ってやりとりするのも手間が増えるだけでデメリットしかありません。
重複契約や二重契約とは異なりますが、契約先を分けたいならせめて契約の対象ごと(建物と家財を別々のところで加入)にしてください。
火災共済の年末調整・確定申告は火災保険と違うの?
もともとあった長期の損害保険料控除などは共済であっても保険料控除の対象でした。
そのため年末調整や確定申告でも控除の対象になっていました。
その後損害保険料控除は廃止、地震保険料控除が新設されて以降地震保険料に相当する部分について地震保険料控除の対象です。これは火災共済でも同様です。
主な火災共済のについては下記のようになります。
地震災害に対する補償に関連する部分がポイントですが、都道府県民共済は該当するものがありません。
JA共済や全労済の火災共済は基本的な考え方は火災保険(地震保険)と同様です。
まとめ
意外と知らない火災共済と火災保険の違いと比較。重複契約しても大丈夫?、についていかがでしたか。
もしものときに住まいを守るものと考えていて同じようなものと考えている人が多いでしょうが、ご覧頂いたようにかなり違いがあります。
冒頭にご説明したように内容が違いすぎるので、条件の異なる比較は難しいのですが、それぞれの内容をよく確認して検討してください。
細かい保障内容までは理解しにくいでしょうが、きちんと説明を受けた方がいいでしょう。実際安いものは保障もそれなりですが、分かった上で契約するのはありです。
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