自転車保険の義務化で罰則?自転車保険の加入率や比較・選び方のポイント
自転車保険の加入義務化の動きが進んでいます。義務化といっても、都道府県によって「加入義務化」「努力義務化」「特に義務化しない」など対応がさまざまです。
■この記事で学べること
【1】自転車保険の加入の義務化とその都道府県および罰則
【2】自転車保険とは?自転車保険の必要性と加入率
【3】損保各社の自転車保険にかかる対応、ランキングやおすすめ、安いものを比較するツボ
自転車保険の義務化や罰則、自転車保険の加入率、掛金の安さを見るときの比較や選び方で重要なことなどをファイナンシャルプランナーが紹介します。
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この記事のもくじ
自転車保険の加入が義務化された背景と都道府県
※現在、自転車保険と呼ばれているものは厳密には以前あった自転車保険でないものがほとんどです。
詳細はこの後説明していきますが、この記事では自転車保険という言葉で解説します。
なぜ自転車保険の加入が義務化している都道府県があるの?
自転車は、日常生活で子どもからお年寄りまで幅広く利用されています。その一方で、自転車利用者のマナー違反等による事故も発生しています。
自転車の事故には相手が自動車の場合や自転車同士、歩行者など色々なケースがあります。
全国各地で自転車事故による高額な損害賠償事案が発生しています。
相手が歩行者で自転車が加害者の自転車事故で死亡あるいは重度の後遺症害から高額な賠償請求事例も報告されています。
こうしたことも踏まえて、安全性の確保や適正な利用、保険の加入の推進のために自転車保険の加入を義務付けをする都道府県が増えています。
ちなみに交通事故の件数そのものは減少しています。
法律の強化や車の自動運転技術が寄与するところなどが大きいのでしょう。
しかし自転車と車の事故も減っていますが、それに比べて自転車対歩行者の事故は大きく減少していません。
警察庁 令和3年中の交通事故の発生状況
自転車保険の加入が義務化された都道府県
一部の都道府県で自転車保険の加入の義務付けが始まって以降、この流れが加速しています。
下記の国交省のサイトに各都道府県での自転車保険の加入義務化の状況がまとめてあるので参考にしてください。
国土交通省 自転車損害賠償責任保険等の加入促進について
国交省が自転車保険の義務化を要請
自転車の利用者が加害者となる事故で高額の損害賠償訴訟が全国で相次いでいます。
こうした状況を受けて国土交通省は自転車保険の義務化について都道府県に対して要請しています。
都道府県ごとに対応が異なるのはややっこしいところです。
2023年4月1日から道路交通法改正
自転車保険の加入に間接的に関係あることですが、2023年4月1日から自転車利用者(同乗者含む)のヘルメット着用が努力義務化されます。
努力義務化ですからどの程度普及していくかはこれからでしょうが、また違うかたちの動きです。
自転車保険の加入義務化を無視したら罰則はあるのか?
自賠責保険に未加入の場合の罰則は?
はじめに参考までに、自動車保険の強制保険である自賠責保険の罰則について確認します。
原付やバイクを含むすべての自動車は、自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険に未加入の場合は運転することができません。
- 自賠責保険(共済)に未加入で運行した場合は1年以下の懲役、または
- 50万円以下の罰金
自賠責保険の証明書を所持していなかっただけでも30万円以下の罰金が科せられます。
また無保険での運転は交通違反になるため、違反点数6点が付されて免許停止となります。
ちなみに自賠責保険の補償限度を超えるところから、任意の自動車保険の加入があればこちらあら支払いがされます。
自賠責保険に未加入だとその補償分はあくまで自費です。
自転車保険に未加入だった場合に罰則はある?
各都道府県の自治体単位であるとはいえ、一部で自転車保険の加入が義務化されました。
自転車で万が一事故を起こした際に無保険だった場合、罰則規定までは設けられていません。
都道府県による加入義務化、努力義務化に関わらずです。
但し、条例で定められているので条例違反ではあります。
自賠責保険と比較するとずいぶん罰則がゆるいのが現状です。理由はいくつかあるでしょう。
自賠責保険のように統一された保険制度がないこと、自動車やバイクのように個別の車両単位で管理するシステムがないことなどが考えられます。
ちなみに自転車保険の加入義務・努力義務というのは、居住地の都道府県でみるわけではありません。
例えば居住地の都道府県で加入の義務化がなかったとしても、自転車を使用するのが他の都道府県で加入義務がされていれば条例の適用対象になります。
ここを間違えている人が多いので注意してください。
こうした背景も踏まえて自転車保険の加入義務化について議論や推進がされているのです。
自転車保険とは?自転車保険の必要性と加入率
加入が義務化されたとはいえ、そもそも自動車保険とはどんな保険なのか、また自動車保険が本当に必要かみてみましょう。
自動車保険とは?
自転車保険は自転車に搭乗中に第三者にケガをさせたり、相手の物を壊したり、あるいは自分がケガをしたときに補償する保険です。
もともと年間数千円の安い保険でしたが、実はかなり前に売り止めになっています。
一方で、自転車事故などが社会問題になった時期もあり、保険に対するニーズも出てきました。
現在では自転車保険の代わりに「交通事故傷害保険」を自転車保険として販売しているケースがほとんどです。
いまの自転車保険と言われているものをよくみると、「自転車向け保険」「自転車プラン」などという表現を使っていることが多く、自転車保険とは書いてないことがほとんどです。
交通事故傷害保険で代用していれば、補償内容をみても自転車搭乗中だけでない交通事故などまで補償されています。
そのため自転車事故以外の乗り物が関係するケガも対象になるので覚えておきましょう。
一般的には電車や航空機、船舶、エスカレーター、乳母車なども乗り物(交通乗用具という)の範囲に入ります。
自転車保険の加入率
自転車保険の加入義務化を踏まえて、検討している人はどのくらいの人が自転車保険に加入しているか調べている人もいるでしょう。
令和2年度第6回自転車保険の活用推進に向けた有識者会議の配布資料によると、「自転車損害賠償責任保険等の加入率」は59.7%となっています(2021年3月)。
なお、自転車保険の加入率について今後の目標値として2025年度に75%、将来的には100%を目指すとしています。
自転車保険の補償内容
自転車に求められる必要な補償は、次の3点です。
- 第三者に対する損害賠償(対人賠償・対物賠償)
- 自分(あるいは家族)の自転車搭乗中の怪我の補償
- 自転車そのものの破損や盗難
気がついた人もいるでしょうが、このように見ると実は補償の構成は、「自動車保険」と同じです。
但し自動車保険の車両保険に該当する自転車そのものの損害を補償する自転車保険はありません。
盗難リスクなどは防犯上の予防対策などの徹底も必要です。自転車の車両そのものの補償は最近少額短期保険で取り扱っているところがでています(次項で解説)。
第三者に対する損害賠償とケガの補償ということは自動車保険とそんなに違いはありません。
交通事故傷害保険で代用しているとお話しましたが、補償の広さでいうと次のようなイメージです。
自転車保険(自転車搭乗中)>>>交通事故傷害保険(交通事故全般)>>>傷害保険(ケガ全般)
自転車保険はすでにほぼ販売していないことはお話したとおりですが、交通事故傷害保険は自転車事故や交通事故全般の怪我まで補償します。
自転車保険より補償範囲が広い分、保険料は高くなります。普通の傷害保険よりは保険料は割安です。
自分のケガはいいが相手にケガをさせたら心配ということなら第三者に対する損害賠償の補償があればそれで済みます。
具体的には前述の交通事故傷害保険に「個人賠償責任保険」などの特約を付帯します。
日常生活全般の第三者への損害賠償を補償しますが、個人賠償責任補償、日常生活賠償などと言い回しが異なることもありますので注意してください。
これは傷害保険はもちろん火災保険や自動車保険に特約で付帯することも可能です。
自転車保険に車両保険がある!?
ちょっとニッチな保険を取り扱うことがある少額短期保険や損害保険3社ほどが自転車保険における車両の破損や盗難を補償する保険がでています。
高額な自転車を対象にしていますが、そこそこの金額の自転車であるなら検討する価値はあるでしょう。
自転車保険は個人賠償責任保険が他にあればわざわざ必要ない?
実は火災保険や自動車保険の特約で付帯できるため、個人賠償責任保険だけならすでに加入している人もいます。
賃貸住宅などに住んでいて賃貸借契約をするときに火災保険に加入した記憶がある人は、この特約が付帯している可能性が高いのです。
賃貸住宅で火災保険に加入しているならまず付帯されています。
補償額が少ないケースはあるでしょうが確認してみてください。
マンションを所有して住んでいる人なら、マンション管理組合で共用部分に加入する火災保険に個人賠償責任保険が付帯している可能性もあります。
またクレジットカードに付帯されているようなケースもあります。
最近は無料で補償が付帯するものは減ってきて、月々数百円支払って加入するものが主流です。
クレカでこうして月々数百円の掛金を支払うものは、個人賠償責任保険以外の補償も付帯しているケースがあるので内容をチェックするようにしてください。
第三者への損害賠償だけがほしいのであれば、自転車保険の新規加入の必要性がない人も実はいるのです。
自転車保険に加入している場合は保険金の請求漏れにも注意
現在の自転車保険は、交通事故傷害保険で代用しているケースがほとんどをお話しました。
自転車の事故だけを思っていると請求漏れする可能性もあるので注意してください。
特にケガの補償範囲はポイントです。正確な言い回しではありませんが、交通乗用具にかかるケガが対象です。
交通乗用具とは、自転車だけでなくバイク、車、電車、バス、飛行機、船なども入ります。
他にもロープウエーや乳母車、エレベーター、エスカレーターなどまで交通乗用具の範囲に入ります。
自転車保険からは想像しにくいですが、「何かに乗っていて」ケガをしたら自転車保険を使えないか契約先の損保に確認することをおすすめします。
電車の駅構内(改札の内側)のケガも対象ですから、駅のホームで転んだケガも対象になることがあります。
自転車保険とだけ頭にあると忘れがちです。
加入時に補償内容をしっかり確認しておきましょう。
子供や家族が加入するときの家族型の自転車保険
家族型といっても今はライフスタイルが多様化しているので、配偶者の有無や子供の数などそれに合せた形で家族型を設計できます。
例えば、夫婦のみあるいは本人と同居の親族のみ対象として配偶者は対象外などです。
家族構成に合せて設計を考えてください。
子供がいるから必ず家族型で契約するのがいいとも言えません。
予算にもよりますが、家族の人数が少なければ一人一人別々に自転車保険に入った方が補償がよくなるときもあります。
逆に家族の人数が多ければ家族型を利用すると割安でしょう。
自転車保険の家族型は、「本人」、「配偶者」、「その他の親族」で構成されます。その他の親族は人数に制限がないので、同居している両親や子供、兄弟姉妹も対象になります。
加入者からすると子供や高齢の親などがいれば気になるでしょうが、まずは家族構成や人数などから自転車保険の家族型が安いか、補償が十分かなどを確認しましょう。
損保各社の自転車保険にかかる対応
損害保険各社も自転車の事故のニーズを拾い上げて対応をはじめています。
主に交通傷害を補償する自転車のプランは各社販売しています。
自転車保険の加入方法
保険代理店はもちろんですが、スマホ・ネットやコンビニなどでも加入できるように裾野を広げています。
スマホ、コンビニなら比較的加入も気楽です。
補償の変化、商品構成
賠償だけなら火災保険や自動車保険の特約でも可能とお話しました。
保険会社によっては自動車保険に個人賠償責任保険だけでなく傷害保険も付帯して自転車の補償を広げているところもあります。
自動車保険の人身傷害で対応できるようにしておくと便利
すでにごく一部の損保ですが、自動車保険に付帯する「人身傷害保険」に「交通乗用具事故」の特約を付帯できるところがあります。
もらい事故で自分や家族がケガをして、相手が逃げた、損害賠償に応じない場合、人身傷害のこの補償で医療費はもちろん休業損害、慰謝料などが実際の損害ベースで補償されます。
筆者の把握できている範囲で数社のみの取扱いですが対応しています。
興味がある人は下記関連記事の目次項目の3をみてください。
自転車保険のランキングやおすすめ、安いものを比較するツボ
自転車保険を検討するときに多くの人が見るであろう、自転車保険ランキングやおすすめ、掛金(保険料)の安さを見るための比較や選び方のポイントを解説します。
自転車保険の補償内容で比較
ケガ(傷害保険の補償)
ケガの補償の場合には、通院給付金に着目してください。傷害保険の通院の補償は、通院だけでも対象で免責などの設定もないので使い勝手のよい補償でした。
ところが数年前から通院給付金の収支が悪く保険料がアップしたり、補償対象になる通院給付の日数が減らされてきています。
自転車保険で安いと思うものは、たいてい通院の補償がないかあってもわずかです。
もともと傷害保険の通院日数の限度額は事故の日から180日を限度に実際の通院を90日まで補償していました。
いまは30日限度にしているところも珍しくありません。
傷害保険は、「死亡・後遺障害」「入院」「通院」それぞれの補償で料率が別々に設定されています。
通院の保険料率は入院の数倍高いと思ってください。
自転車保険で通院の補償がない、あっても通院1,000円程度に設定されているのは、保険料率が高く、掛金が安い、お得だなと感じるプランを作るのが難しいためです。
個人的には予算が許すなら通院補償はあった方がいいだろうと考えます。
但し、通院に日額1,000円の補償があった場合、限度30日なら3万円です。これなら絶対に必要とも言えないでしょう。
また、なかには後遺障害の補償に制限(ここも通院同様収支が悪かった)をかけているケースがあります。
後遺障害にも段階がありますが、比較的軽いものは対象にしないなどです。通院同様注意してください。
相手への賠償(個人賠償責任保険の補償)
個人賠償責任保険についてはすでにお話しましたが、この補償だけでよければ月々100~200円もだせば特約で億円単位の補償を付帯することができます。
自動車保険に付帯するなら無制限です。賠償額1,000万円でも1億円でも月々数十円の違いです。
この補償については安さよりも、補償を重視してください。ここをケチると大きな事故の際に面倒なことになるかもしれません。
自転車保険の示談交渉サービス
個人賠償責任保険では、各社大きな違いはありません。また最近は示談交渉サービスが付帯のものが中心になりつつあります。
当たり前に思うかもしれませんが、もともと個人賠償責任保険は示談交渉サービスがないものがほとんどでした。
最近は付帯されているものが当たり前になってきましたが念のため確認しておきましょう。
当事者同士で話をするのは結構しんどいものです。現在の火災保険や自動車保険への付帯であれば、たいていはこのサービスは付帯されています。
自転車保険の安さや掛金(保険料)
自転車保険の傷害部分の補償については、通院補償があるとないとでは保険料は大違いです。
傷害の補償まで必要か、通院まで必要か、その保険料はいくらか、というところを基準に考えてみましょう。
加入対象者が家庭内で多いなら傷害部分は家族型にするとお得です。
通院部分の補償は保険料が高いのでをそれを考慮してください。
兵庫県などは県独自の「ひょうごけんみん自転車保険」があります。
これは生粋な自転車保険のようですが、通院補償はさすがに付帯できないようです。兵庫県の方は割安なので検討するのもありでしょう。
自転車保険のランキングやおすすめというのは、基本は掛金の安さからお得感がある(と感じるように作っている)ものが多いです。
傷害保険の現状はお話したとおりですが、保険料率自体は損保会社ごとに大きく違うものではありません。後は予算がどのくらいか、補償が見合うかで判断してください。
まとめ
必要以上に心配する必要はありませんが、現在加入の保険で自転車事故の補償がカバーできているケースもあります。
自転車保険の加入率も約6割ほどとそこそこの加入率があります。国が推進しているので加入率は上がってくるでしょう。
自転車保険のランキングやおすすめ、安い商品を探すにしてもチェックしておきたいポイントがあります。
まずは自転車にのるのは誰か(自分、配偶者、子供、家族全員)、現状の他の保険の内容をよく確認してから、必要な補償をチェックして自転車保険を検討してみましょう。
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