【患者申出療養制度】混合診療解禁!?日本の医療と医療保険はどうなる?
患者申出療養制度が2016年4月から新たにスタートしました。さまざまな医療を迅速に受けられるようにすることを目的に新設されました。
■この記事で学べること
【1】患者申出療養制度が新設された背景
【2】患者申出療養制度とは?
【3】メリットとデメリット
【4】かかりつけ医の役割と患者申出療養
【5】患者申出療養制度との実績と医療保険
新たな制度創設はメリット・デメリットそれぞれありますが、医療の変化は医療保険そのものにも大きな影響を及ぼします。
患者申出療養制度の新設と今後の医療保険について考えます。
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この記事のもくじ
「患者申出療養制度」新設に至った背景
混合診療とは?
混合診療についてよく分からない人も多いでしょうから、ここから説明していきましょう。
日本で医療を受ける際、公的保険が適用される保険診療と自己負担となる自由診療(保険適用外)があります。
保険が適用されれば通常窓口負担は3割ですが、自由診療の場合は全額自費になります。
このように医療には、公的保険適用のものと適用外のものがありますが、これを組み合せて一緒に行うものを混合診療といいます。
しかし安全性や有効性、公平性の観点などから混合診療は原則禁止されています。
そのため混合診療を行う場合には、本来保険適用が認められている治療法まで全額自費になります。
保険外併用療養費制度とは?
混合診療が原則禁止されているため保険適用が認められていない治療を行う場合、本来保険適用が認められている治療法も自費となり費用負担が大きくなる問題がありました。
同時に費用面から治療を断念しなければならないことも問題でした。
保険外併用療養が認められているもの
保険診療との併用が認められている療養は次の3つです。
- 評価療養
- 患者申出療養
- 選定療養
評価療養と患者申出療養は、保険導入のための評価を行うものです。選定療養は保険導入を前提としていません。
評価療養
評価療養には具体的には次のようなものがあります。
- 先進医療
- 医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療
- 薬事法承認後で保険収載前の医薬品、医療機器、再生医療等製品の使用
- 薬価基準収載医薬品の適応外使用
- 保険適用医療機器、再生医療等製品の適応外使用
聞き慣れない言葉が多いですが、一番上にある先進医療は民間の医療保険でも保障される特約が広がってきたので聞いたことがある人もいるでしょう。
次に選定療養には以下のものがあります。
- 特別の療養環境(差額ベッド)
- 歯科の金合金等
- 金属床総義歯
- 予約診療
- 時間外診療
- 大病院の初診
- 大病院の再診
- 小児う蝕の指導管理
- 180日以上の入院
- 制限回数を超える医療行為
こちらも差額ベッド、大病院の初診、時間外診療などは比較的イメージしやすいところでしょうか。
保険外併用療養の課題
保険外併用療養にも例えば、先進医療は、全国的にも治療を受けられる医療機関の数が少ない、保険外診療の申請~承認まで数ヶ月の時間が必要などいくつか問題も指摘されています。
医療技術は日々進歩して、患者ニーズも多様化しています。
現状ではこれに対応することができないので、例外的に一部の物に関して混合診療を認めるというのが保険外併用療養の基本的な考え方です。
患者申出療養制度とは?
患者申出療養制度とは?
混合診療におけるこうした背景をもとに、保険外併用療養費制度の問題を解消するために新設されたものが「患者申出療養費制度」です。
主旨としては現行の制度で必ずしも患者のニーズに答えられないケースでの救済を目的に保険外併用療養費制度の中に新たな仕組みとして作られたわけです。
日本では、「保険適用が認められている治療法」と「保険適用が認められていない治療法」を一緒に行う混合診療は原則禁止とされてきました。
先進医療など一部例外はあったものの、医療技術の進歩とともに患者のニーズが高まりつつあるさまざまな医療を迅速に受けられるようにすることを目的に新設されました。
患者申出療養制度を実施する申請のフロー
具体的に申請から治療を受けるまでの流れは次のようになります。先進的な医療ですので、前例がないケースとあるケースで2つのフローがあります。
少し読みにくいかもしれませんが、それぞれの一番したの矢印にあるようにないケースでは原則6週間で審査、あるケースでは原則2週間で審査となります。
患者申出療養制度のメリット・デメリット
新たな制度がスタートしましたが、当然に推進派・反対派の人がいます。制度ですからメリット・デメリットがありますのでこれを確認しておきましょう。
患者申出療養費制度のメリット
- 治療の選択肢が増える
- 医療技術・医療品の質の向上
- 医療関係産業(製薬会社等)の競争力強化
患者申出療養費制度のデメリット
- 保険適用外の治療の拡大に伴う患者負担増
- 健康被害や医療事故の増加懸念
- 収入の差が受診できる医療の差につながる不公平感
- 公的医療費などのコスト増
メリットとデメリットを受けて
治療に対する選択肢が広がる反面、保険適用されない治療が増えると患者負担の増加が予想されます。
またお金のある人、ない人で受けられる医療に差がでてくるためこうした不公平感も指摘されています。
インターネット上で容易に情報が収集できるようになりましたが、安全性の根拠のない治療などを患者が安易に選択してしまうリスクや健康被害考えられます。
治療の選択肢は増えますが、自分でそれを選ぶ確かな目も求められるということです。
かかりつけ医の役割と患者申出療養制度
患者申出療養費制度は、患者の申出を受けたかかりつけ医のアドバイスが起点になります。
そのため街のかかりつけ医に求められる役割も大きくなります。
2016年4月に公的医療に関わるいくつかも改正がありました。その中に大病院への紹介状なしの初診料徴収があります。
大きな病院だからできること、街のお医者さんだからできること、それぞれ役割が違いますのでこれを分ける目的があります。
患者申出療養費制度にも関わってくることですので覚えておいてください。
患者申出療養制度の実績と民間の医療保険
患者申出療養制度の実績
厚生労働省の患者申出療養の実績報告によると、主な実績は次のようになっています。
- 患者申出療養技術数:8種類
- 患者申出療養機関数:23施設
- 1件あたりの患者申出療養費用:6,355,139円
出所:厚生労働省 令和3年6月30日時点で実施されていた患者申出療養の実績報告について
患者申出療養と民間の医療保険
各生命保険会社等が発売している民間の医療保険には、患者申出療養の費用を負担するものがでています。
対応する限度額や保険期間が定められているケースがあるので内容を吟味する必要はありますが、こうした費用に不安や心配があるなら検討してみるといでしょう。
まとめ
【患者申出療養制度】混合診療解禁!?日本の医療と医療保険はどうなる?、についていかがでしたか?
医療制度自体がとても分かりにくくなっていますが、自身の健康に関わることなので大切なことです。
患者側からすると、仮に先進の治療が開発されても保険適用外であれば負担が増加します。
こうしたことを防ぐために日本の医療制度では、皆が公平に医療を受けられるようにする前提で混合診療が原則禁止されてきました。
日本の公的保険の根本である国民皆保険制度は、誰もが公平に等しく、安全で質の高い医療が受けられる制度です。これを維持できるか大きな狭間にきています。
患者申出療養費がスタートしたことでこれから色々な動きがでてきますので注視してください。
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