火災保険の質権設定契約とは?~そのポイントと注意点
住宅ローンを利用して火災保険に加入すると「質権設定」付きの契約となることがあります。最近は減少傾向のようですが、よく分からない人も少なくありません。
■この記事で学べること
【1】火災保険の質権設定契約とは?
【2】金融機関における火災保険の質権設定の状況
【3】火災保険の質権設定の手続きと切り替え、抹消(解約)
【4】質権設定契約のちょっとした疑問Q&A
住宅ローンにおける火災保険の質権設定契約についてファイナンシャルプランナーが解説します。
この記事のもくじ
住宅ローンにおける火災保険の質権設定契約とは?
火災保険の質権設定契約とは、住宅ローンの借入金について、火災や災害などの際、火災保険の保険金を金融機関が優先して請求する権利のことです。
住宅ローン利用時にの団体信用生命保険に加入しますが主旨はこれと同じようなものです。
例えば、住宅ローンの返済中に病気で死亡した場合、本人が死亡してしまっているので残された家族は返済に困窮する可能性が高くなります。
またお金を貸した金融機関も返済してもらえなくては困ってしまいます。
団体信用生命保険に加入していれば、生命保険で住宅ローンの残債を完済することができますが、これの火災保険版と考えてください。
本人が生存していても火災や台風などで住宅ローン返済中の住まいが全焼・全壊すると、ローンの返済を残したまま次の住まいを購入したり、家賃を支払わなくてはなりません。
火災保険に加入して質権設定付きの契約とすることで、ローンの融資をした金融機関に優先して保険金が支払われる仕組みになっています。
つまりは銀行などの金融機関が融資したお金の返済について保護する意味合いです。
火災保険の質権設定は必須か?
住宅ローンの火災保険に質権設定が必須なのかというと、昔は住宅ローンを利用すると、火災保険に加入して質権設定をするのが当たり前でした。
現状はどうかというと、金融機関によって火災保険の質権設定をするケースとしないケースがあります。
融資先や融資の内容などにもよるのでしょうが、以前より数は減っています。
その地域の地銀や信金などでは、まだ質権設定することはあるようです(金融機関の考えや融資内容などにもよる)。
また火災保険は以前は最長で36年間加入することができたため、住宅ローンの返済期間に合わせて保険期間を設定、保険料を一括払いしていました。
その後の改定で火災保険の保険期間が最長10年間、さらに現在は5年に短縮されたため、更新のたびに質権設定もしなければならなくなってしまいます。
金融機関側の管理も手間がかかるようなったことなども原因の一つです。
火災保険の質権設定の手続きと切り替え、確認方法、抹消(解約)
次に火災保険の質権設定契約について、設定続きや質権の切り替えや抹消についてみていきましょう。
質権設定契約の手続き
質権設定の手続きは、火災保険の契約の際に「質権設定承認請求書」などという書類を提出することで質権を設定します。
この書類に契約者や金融機関が記入・押印して手続きします。
質権設定契約の切り替え
質権設定を切り替えるということは通常はありません。
しかし住宅ローンの借り換えなどをした場合、借り換え先の金融機関で質権設定が求められる場合には切り替えなどが必要です。
火災保険そのものは住宅ローンの融資を受けた物件に契約があるので、満期までそのままで問題ありません。
借換えなどの際には、その金融機関に火災保険の質権設定がついていることなどを説明して相談してみてください。
質権設定の確認方法
加入している火災保険に質権設定がされているかの確認方法ですが、加入先の損害保険会社あるいは金融機関に聞くのが早いでしょう。
なお、質権設定の場合、火災保険証券は金融機関が保管するため契約者にはその写しが送られます。
質権契約の抹消(解約)
火災保険の質権設定は、金融機関が融資したお金の保全の意味合いとお話しました。
そのため住宅ローンの融資を受けている人が、質権設定を勝手に抹消することはできません。
また質権設定がついている火災保険を住宅ローンを利用している金融機関の承諾なしに、解約することもできない仕組みになっています。
一方で、住宅ローンを完済すれば、火災保険に質権は必要なくなりますので、質権を抹消する手続きが必要です。一般的には住宅ローンの完済で金融機関からも質権抹消の案内があります。
質権設定契約の素朴な疑問Q&A
火災保険の質権設定付きの契約について、こんなときどうなるのという疑問をQ&A形式で解説します。
保険金額が3000万円で住宅ローン残債が2000万円なら1000万円はもらえる?
この条件であれば、住宅ローンの残債を引いた分の保険金を受け取ることができます。
実務的には個別の対応は金融機関によります。
例えば保険金を被保険者(火災保険の場合は物件の所有者)に支払い、住まいを再築してもらった上で改めてその物件に質権の設定などをするケースもあるようです。
但し、住まいの再築・再購入はしないとか返済をしないということであれば、質権設定付きの契約ですから保険金で金融機関は回収するなどの対応になるでしょう。
少額の損害でも金融機関が保険金を受け取るの?
火災保険の保険事故は、火災や自然災害などで全焼や全壊するなど規模の大きなものばかりではありません。
空き巣が侵入する際に窓ガラスを割った修理代や小火(ぼや)などで、そのまま居住し続けて住宅ローンの返済も続く場合があります。
上記の例の窓ガラスの修理代を仮に数万円とした場合、これを金融機関が受け取って住宅ローンの返済に充当するかというとそんなことはありません。
被保険者が保険金を請求して修理代金として支払うことができます。
このような場合、質権設定が付いている契約では、通常の保険金の請求書類に加えて所定の書類に金融機関の承諾印などの取り付けが必要です。
やり取りなどは損害保険会社や保険代理店が手配することが多いでしょうが、保険金請求の手続きにワンクッション入ると覚えておいてください。
ワンクッション入るということは、通常よりも保険金の支払いに少し時間がかかってしまう可能性があるということです。
質権設定付きの火災保険は金融機関から指定されるところ以外で加入できる?
金融機関が火災保険の加入先や保険会社を指定・強制することはできません。昔は暗黙の了解的なこともあったようですが、いまはそんなことはありません。
質権設定した火災保険の満期後も質権設定が必要?
住宅ローンが完済していれば、基本的にその後の質権設定は不要です。完済がまだであれば、引き続き質権設定を求められるなら引き続きその手続きが必要です。
まとめ
火災保険を取り巻く状況は、この10年くらいで大きく変わってきています。以前よろも数は減っているものの、火災保険の質権設定契約がなくなったわけではありません。
記事内で解説したように保険金の請求や各種手続きの際、質権がなければ必要のない金融機関の承諾が都度必要になるケースがあります。
そのような手続きが必要であるということを覚えておいてください。
実際に火災保険にかかる保険事故があった場合、損害が大きなものであるほどあれこれ考える余裕はなくなります。
※こちらにご登録頂くと「Mylife Money Online」の記事だけでは読めないお得なお金の情報を定期的にお届けいたします。