死後離婚/相続や遺族年金、子供の権利は?死後離婚のメリット・デメリット
「死後離婚」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。配偶者の死後にその親族との法的な関係を断ち切ることをいいます。
■この記事で学べること
【1】死後離婚とは何?
【2】死後離婚したときのメリット・デメリット
【3】死後離婚の相続・遺族年金、手続き
この記事のポイントは上記の3つです。ここを中心に死後離婚について解説します。
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この記事のもくじ
死後離婚とは何?
最初に死後離婚について、そして現在どのくらい届出が出されているか統計を確認しながら解説を進めます。
死後離婚とは?
死後離婚とは、配偶者と死別した後に義理の両親や兄弟姉妹など配偶者側の親族との関係を解消することをいいます。
死後離婚という言葉は造語です。
離婚という言葉を使っているので分かりにくいところがありますが、通常配偶者が死亡するとそれで婚姻関係は終わります。
相手がいなくなっているためわざわざ離婚することはできません。
死後離婚にも色々な理由があります。例えば、死後同じお墓に入りたくない、あるいは配偶者側の親族との関係を継続したくないなどです。
なおこの記事では、便宜上夫の死亡後に妻が死後離婚するという前提で記事を書きます。
夫が妻の死後に死後離婚するケースもありでしょうから、その場合は置き換えて読み進めてください。
死後離婚の状況
配偶者の親族との姻族関係を解消するには、「姻族関係終了届」を提出します。
法務省の戸籍統計によると2020年度の姻族関係終了届の件数は3,747件です。
2010年度は1,911件ですから、10年前からみると約2倍近く増えています(出所:法務省)
しかし2017年度は4,895件なので過去10年間ではここがピークです。
姻族関係終了届を提出している年齢層まではわかりませんが、家族と親族の関係やあり方、お墓など昔とはあきらからに変わってきています。
死後離婚のメリット・デメリット
次に死後離婚で考えられるメリット・デメリットを挙げてみます。
実際に死後離婚しようと思っても不利益などが多いようならためらうケースも多いでしょう。
メリット
- 夫の親族関係(義理の両親や兄弟姉妹など)との関係の解消。但し解消したい場合に限る
- 死後離婚しても夫の配偶者としての権利関係に大きな変更はない
メリットという表現が正しいかは別にして死後離婚を考えるケースの一番は夫の親族との関係解消でしょう。
- いびられた義理の両親の介護に関わりたくない
- 関係の悪い姑や小姑と同じお墓に入りたくない
- 夫と同じお墓に入りたくない
理由は色々あるでしょう。
もっとも義父や義母への扶養義務や介護などになると必ず発生するものでもありません。
またそうした家族関係と関係なく死後は自分の親のお墓に入りたいと考える人もいるでしょう。
いずれにしてもこうした親族との関係解消というのが一番です。配偶者の権利関係についてはこの後詳細を説明します。
デメリット
- 子供を巻き込んで親族関係が壊れる可能性
- 人によってはマイナスイメージを持たれる可能性
妻が夫の親族側との関係を絶つということですから、親族関係が悪くなることはあるでしょう。
ここに子供を巻き込む可能性があること、子供の年齢によってはよく理解されない可能性もあるでしょう。
また死後離婚というもののよく分からない人も多いので、わざわざ親族関係を絶つことによくないイメージを持つ人もいます。
そんなことは気にしないという人もいるでしょう。
但し、人間関係のトラブルというのはある意味何よりも厄介なので感情的にならずによく検討してください。
相続権や遺族年金などは死後離婚で影響がある?
夫の他界して妻が死後離婚した際、相続権は失われることはありません。
相続放棄となるのではなどと考える人もいるでしょうが、それは関係ありません。
同様に死後離婚しても遺族年金などについて、要件を満たしているのであればこちらも年金を受給することは可能です。
冒頭にお話したように死後「離婚」というので配偶者との離婚を連想しますが、死後離婚と言っても実際には離婚をしているわけではありません。
お金の事なのでその後の生活なども含めて気になるところでしょうが、相続や遺族年金を受け取る権利に大きな影響はないと考えてください。
デメリットでお話したように配偶者の親族との関係は絶つことになります。
死後離婚するが相続財産は貰う、遺族年金は貰うとなると人間関係でゴタゴタ、ドロドロすることは予想できるでしょう。
死後離婚で子供と自分の戸籍や名字はどうなる?子供に不利益は?
死後離婚を考える際に気になることの一つが子供のことでしょう。
死後離婚の手続きについてはこの後で解説しますが、まずは妻が死後離婚の手続きをした後に子供にどう影響があるかみておきましょう。
死後離婚は所定の書類(婚姻関係終了届)を妻が提出することで行います。
この書類はあくまで妻が自分のためにだすものですから、子供の戸籍や姓・名字にまで影響はありません。
その意味では子供と義父母などとの血縁関係は変わらないため、完全に夫側の親族と関係性を絶つことは難しいところです。
子供については死後離婚する前のままということなら、そんなに気にする必要もないともいえます。
後は子供の気持ちや死後離婚に関する理解の部分というところでしょう。
死後離婚を何のためにするのか、をじっくり考えて進めるようにしてください。
死後離婚の手続き
親族関係解消の手続きとして「婚姻関係終了届」を提出します。
さらに婚姻によって姓の変わった人が、配偶者との死別後に婚姻前の姓に戻すことを希望する場合には、「復氏届」も提出します。
具体的な要件はそれぞれ次のようになります。
死後離婚のための姻族関係終了届の手続き
書類の提出先 | 届出人の本籍地・所在地いずれかの市区町村役場 |
届出人 | 配偶者と死別した人 |
効力発生日 | 届出をした日 |
持参するもの | 姻族関係終了届、印鑑、死亡の事実のわかる戸(除)籍謄本 |
死後離婚後の旧姓に戻すための復氏届
書類の提出先 | 届出人の本籍地・所在地いずれかの市区町村役場 |
届出人 | 配偶者と死別した人 |
効力発生日 | 届出をした日 |
持参するもの | 復氏届、印鑑、戸籍謄本 |
なお、婚姻関係終了届、復氏届ともに提出先の窓口に用紙があります。
ちなみに婚姻関係終了届は、死亡者の親族が手続きをすることはできません。
死後離婚されたら、、
夫と死別した後、死後離婚する妻という前提で記事を書きましたが、死後離婚された側の人もいますのでこちらについても書いておきます。
死後離婚は婚姻関係終了届を提出するだけです。名字も戻すなら復氏届も提出します。
いわゆる夫婦間の一般的な離婚届のように夫婦それぞれが署名する書類ではありません。
妻の意思で行うことなので残念ながら死後離婚された側からするとどうしようもありません。
まとめ
死後離婚についてやる決断をしたのであれば、全体としてそんなに大きな影響はないというのは一つの結論です。
もっとも人間関係が一番ややっこしいわけです。
絶つべき関係として手続きするのか、死後離婚の手続きをすることで関係が絶ってしまうのかも改めて考えてみましょう。
実際に死後離婚をするならもろもろのことを熟慮して決めるようにしてください。
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