学資保険(こども保険)の必要性と選び方~返戻率のカラクリまで解説
学資保険(こども保険)は、教育資金を貯める方法の一つです。しかしデメリットなど注意点もあります。
■この記事で学べること
【1】学資保険とは?学資保険は必要、不要?
【2】学資保険の返戻率のカラクリ
【3】選び方と加入するならいつから、学資保険が合う人
【4】保険料控除と年末調整・確定申告
学資保険の必要性から選び方、外貨建ての保険、注意点、保険料控除と年末調整~確定申告についてファイナンシャルプランナーが解説します。
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この記事のもくじ
学資保険(こども保険)とは?
学資保険(こども保険)とは?
学資保険(こども保険)は、子供の将来の教育費を形成する目的の生命保険の一種です。
貯蓄機能を持った保険で、親が契約者となり祝い金や満期保険金が支払われる仕組みになっています。
保険料(掛金)払込免除などの特約を付帯すると、万が一親が死亡した際に掛金の支払が免除され教育費の確保などができるようになっています。
生命保険ではあるものの貯蓄機能を第一優先として教育費を形成するための保険です。
昨今の低金利の影響で、貯蓄タイプの保険は学資保険も含めて魅力が低下していました。
マイナス金利が解除されたことでこれらの貯蓄型の生命保険商品の条件を変える生保がでてきています。
学資保険とこども保険の違い
大きないくくりでは、子どものための保険ですので同じようなものであると考えて結構です。
厳密には学資保険は教育費を貯める前提の保険、こども保険は子どもの保障などを中心にした考え方の保険です。
生命保険会社によって販売している商品も学資保険、こども保険と違うことがあります。
何のためにこれらの保険に加入するのか、基本的には子どもの場合は教育費をどうするかが重点になるでしょう。
以下、この記事では学資保険と記載して記事を進めます。
学資保険のメリット、デメリット
学資保険にもメリットとデメリットがあります。利用の前にチェックしておきましょう。
メリット
- 教育費を子どものための看板をかかげつつ強制的に積立できる
- 生命保険料控除の対象
- 払込免除など保障機能がある
「学資保険・こども保険」などと看板が掛かっている方が、特にお金の管理が苦手な人には強制的な積立として貯めやすい側面があります。
枠があれば生命保険料控除の対象になります(親の死亡保障などで年間8万円以上保険料を支払っていない場合)。
デメリット
- 長期間に渡り低金利で資金を固定することになる(低金利で契約の場合)
- 換金性に欠ける
- 中途解約すると元本割れの可能性
学資保険に限りませんが、貯蓄性のある生命保険は短期で中途解約すると元本割れすることがほとんどです。
長い期間続けるのが前提ですが、子供が生まれてから大学進学までの15年以上の間に金利が上昇してもっと有利な商品がでてきたときに乗り換えることはできなくなります。
金利上昇局面ではこうしたことに注意が必要です。
また何らかの事情で家計が厳しくなったときに、元本割れの状態で解約せざるをえなくなります。
外貨建ての学資保険もでてきていますが、この場合は為替リスクも発生します。こうして点を踏まえた上で利用するかどうかということです。
学資保険の返戻率とよくある勘違い、カラクリ
学資保険が教育資金を貯めることが第一目的であれば、いくらお金を預けて、いくらになって戻るかはとても重要なことです。
学資保険では、「返戻率」という言葉がよく使われます。
例えば学資保険の返戻率105%などと言われると預金などに比べると結構いいのではと思うこともあるでしょう。
学資保険を利用する際に大事なことなのでよく読んでおいてください。
学資保険の返戻率とは何か?
学資保険の返戻率とは何でしょか。例えば銀行の定期預金などは金利○%と表示していますが、返戻率というみせ方はしていません。
返戻率とは学資保険の契約で掛金を支払いますが、その総額に対して将来戻ってくる満期保険金や祝い金どれくらいの割合があるかを%で示したものです。
そのとき返戻率が100%を超えていればお金が増えているということになります。
しかしここが勘違いの元でもあります。
返戻率の勘違い
銀行預金するよりお得!などと言われることがありますが、得かどうかはよく吟味しなければなりません。
お金を運用して殖やすことを考えたとき、「収益性」「安全性」「換金性」の3つを考える必要があります。
生命保険でお金を殖やすことを考えたときに安全性は高いのが特徴ですが、収益性は今一つ、換金性(現金化しやすいか)は著しく劣ります。
一般的に貯蓄性の生命保険は一定期間を超えるまでの間、特に短期で解約すると元本割れします。
月払いの学資保険も同様です。
年平均利回りで考えた場合はそんなにすぐれているわけでもありません。
長期間に渡ってお金を貯める学資保険では、解約しない前提があっての返戻率です。
銀行の定期預金も殖えませんが、好きなとき、必要なときに解約しても通常元本割れはありません。
預け入れたお金にプラスαでどのくらい殖えるかが焦点を当ててしまいますが、特徴がそれぞれ違うのです。
学資保険の返戻率の計算
学資保険の返戻率は次のように計算します。
学資保険の返戻率(%) =満期保険金など受取るお金 ÷ 掛金を支払うお金 × 100
各社の学資保険の返戻率は2024年3月時点で102-103%前後程度、高いものなら109%くらいのものもあります(100%切るものは除く)。
学資保険の返戻率を上げるには?
学資保険の返戻率というのは、同じ生命保険会社でも設計によって変わります。
- 掛金の払込み方法
- 払込み期間
- 満期保険金等受取り時期
掛金はまとめて支払う方がお得です。
月払、半年払、年払、全期前納払、一時払などがあります。なお全期前納払は年払や月払の全保険期間分の掛金を一度にまとめて支払うことです。
一時払いと全期前納払の主な違いは次のとおりです。
- 掛金の支払総額は、一時払よりも高い
- 保険対象者(被保険者)の死亡、解約時などで未経過分の掛金が返還(一時払はなし)
月払いなどでも掛金を払込み期間を短くすると返戻率は上がります。
学資保険は返戻率だけで比較できる?
学資保険で元本割れせずに100%以上あるものは貯蓄重視の学資保険です。保険である以上は保障がありますが、あくまで貯蓄重視です。
保障を大きくしたり、特約をつければ返戻率は下がります。
また前述のように満期保険金の金額や受け取り方法・その時期、掛金の支払方法などで返戻率は変わってきますので注意してください。
目先の返戻率だけで一律に良い悪いの比較はできません。
学資保険は必要か必要でないか(入るべきか否か)
学資保険の必要性については、子供の教育費を貯める一つの手段として検討してください。
学資保険が必要ではない人
金利や投資に敏感な人ほどデメリットで記載した低金利で固定されることを気にする人が多いでしょう。
自分で有利な商品を金利動向などをみて小まめに動かしたり、投資に明るい人は必ずしも学資保険にこだわる必要はありません。
こうした人は資産配分を自分で考えられるからです。
学資保険が必要な人、合う人
なかなかお金が貯められない人、金利や投資などにあまり詳しくない人であれば、学資保険を教育費を貯める方法の一つとして検討するのもありです。
必要と言い切るのは正しくないでしょうが、このタイプの人は学資保険のようなものを利用した方が貯めやすいのは事実です。
もちろん学資保険だけで足りるかどうかの問題はありますから、他の貯蓄方法なども幅広く探る必要があります。
また保障の観点からは家計の生計維持者の死亡保障などの方が優先順位が先ですから、それを考慮しておきましょう。
学資保険そのものは生命保険会社からしても、儲かる商品ではありません。
ドアノックあるいはサービス商品的な意味合いもあるのが実際のところです。
この記事に書いてある情報を理解して、その上で必要かどうかは判断して頂ければと思います。
但し、教育費は学資保険だけで用意しなければならないわけではありません。
いくつか教育費を組み合わせて考えていくといいでしょう。
学資保険が必要ならいつからはいるべき?
学資保険に加入するならいつから加入するべき?
実際に学資保険の加入をするとした場合、いつから入るのがいいのかをみていきましょう。
- 学資保険は妊娠中からでも加入できる
- 早く加入すると月払いでは負担が軽減、また返戻率も上がる
慌てて学資保険に加入する必要はありませんが、単純に早く加入する方が積立期間を長く取れるので有利です。月払でも一時払でもです。
妊娠中でも安定した時期からは加入することができます。
出産してからでは慌ただしいというので、妊娠中に加入するケースも珍しくありません。
学資保険に早く加入する方が有利な理由
意外と気づいていない人もいますが、教育資金は使用時期が明確に決まっています。
既に子供がいる、出産予定があるならより具体的です。
子供の年齢から逆算すればいつ高校入学、いつ大学に入学するか分かりますし、その時期に教育資金が必要なのです。
学資保険に月払いで加入するなら早く加入すれば支払い期間が長くなりますから、毎月の掛金の負担を減らせます。
教育資金を貯める際に大切なことなのでよく覚えておいてほしいのですが、教育資金の準備は子供が生まれたら早くはじめるが基本です。
学資保険のおすすめの比較と選び方
学資保険の比較や選び方でチェックしておきたいポイントをお話します。各社で違いがあるので注意してください。
- 返戻率
- 満期保険金の受取り方法の選択
- プランの多様性、保険会社の健全性
何度もお伝えした返戻率が重要です。条件を色々変えてどのくらいの返戻率になるか確認してください。
そのため筆者自身は、返戻率が100%を切る学資保険に加入する必要はないと考えます。
また満期保険金等のお金を受け取れる時期の選択も重要です。
例えば子どもが18歳のときといっても、入学金などは少し早いタイミングで支払わなくてはなりません。
受取るタイミングのよく確認しておきましょう。同じ保険会社でもプランによって設計がかなり変わることも珍しくありません。
プランの多様性と積立でお金を預ける以上は、保険会社の健全性(経営破たんリスク)も気にしてください。
また最近は外貨建ての学資保険があります。国内の金利ではパフォーマンスが下がるためですが、為替リスクがあるのでよく吟味するようにしましょう。
学資保険(こども保険)に加入するなら知っておきたい裏技!?
学資保険に加入する際に是非検討しておきたいことをお話しておきましょう。具体的には契約者を誰にするかです。
学資保険は、契約者は親(夫・妻)、保険の対象となる被保険者は子供になります。
子供は変更しようがありませんが、契約者は夫でも妻でもいいのです。
掛金の払込免除(契約者が死亡したときにその後掛金を支払わなくてよい)を付帯するなら、家庭で収入が高い人が入るべきです。これが大前提です。
万が一家計を維持している人が(夫など)死亡したら、その後の掛金を支払わなくていいことは助かります。
返戻率が下がるので不要というなら、どちらが契約者でもOKです。
夫と妻が契約者が違うと何か違うことがあるのかというと、次の2つに注意してください。
- 生命保険料控除が使えるか
- 掛金はどちらが安いか
例えば夫が死亡保険に加入していて、生命保険料控除の枠をすべて使い切っているなら、妻が契約者になって生命保険料控除を使うという方法もあります。
但し妻に税金を納める収入があることが必要です。
また契約者が夫か妻で性別や年齢で掛金が変わりますが、お金を受取るときの税金の取扱いも変わります。
この点も考慮して検討してほしいと思いますが、前提としては生計維持者です。
また満期保険金を受取ったりする場合、契約者が誰で、掛金を誰が支払っているかで税金の取り扱いが異なる点に注意してください。
契約者を夫でも妻でもいいのですが、ここを理解していないと失敗します。
さらにこれに加えて生命保険料控除を誰が使うかという問題もあります。
学資保険の年末調整や確定申告などの税金は最後に解説します。
教育費を外貨保険(変額保険・変額年金)で貯めるのはありか?
ここまで見てきたように貯蓄タイプの生命保険は、マイナス金利解除で以前より条件が改善しつつありますが、まだ金利が高いわけではありません。
学資保険でも外貨建ての保険の商品がある
学資保険でも外貨建ての保険商品もでてきています。
これまでの学資保険ではお金が増えないことから外貨建ての保険を勧められるケースはあります。
繰り返しますが為替リスクがあるので、安易な契約はせずよく検討してください。
教育費を外貨建ての保険で貯めるのはありか?
これまでの学資保険ではほとんど増えない、だから外貨建ての方がよいというセールストークはあるでしょう。
覚えておいてほしいのは外貨建ての商品は保険に限らず、外国為替相場に影響を受けるということです。
教育費が必要で現金化するときに円高か円安かで有利不利が変わります。
しかし10年~15年以上先の為替相場がどうなっているか誰にも分かりません。
それを承知で利用するのであればいいでしょう。
しかし単にいまの学資保険では大して増えないからという目先の理由だけで外貨建て保険を使うのはNGです。
為替の動きがマイナスに働いたときに必ず後悔します。
教育費は使う時期が明確に決まっています。その教育費をそのときどうなっているか分からない為替相場ゆだねるのは商品としてあまり適していません。
学資保険はどこも同じではない
それではどうするのかというと、学資保険を利用する前提であれば他の学資保険と比較することです。
教育費を学資保険で貯めることの良し悪しは置いておきますが、学資保険の利用を考えているのであれば複数の学資保険と比較するべきです。
仮に加入の相談をした先に学資保険の取扱いが1社しかなく、条件が悪ければ外貨建て保険を勧めてくる可能性も高いでしょう。
面倒で手間はかかりますが、損を減らすための手間は惜しまないようにしてください。もちろん学資保険だけにこだわる必要はありません。
年末調整・確定申告と学資保険(生命保険料控除)
最後に学資保険と年末調整・確定申告など生命保険料控除について解説しておきます。
学資保険も保険料控除の対象になるため、年末調整や確定申告で手続きすることで税金の負担が軽減されます。
学資保険が年末調整・確定申告で対象となる保険料控除の種類
保険料控除には、一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の3種類があります。
学資保険が年末調整等で利用できるのは一般の生命保険料控除です。
親が定期保険や収入保障保険、終身保険などの死亡保障に加入しているケースがあるでしょうが、カテゴリーとしては同じ分類になります。
すでに生命保険料控除には、上限が決められています。
すでに死亡保障の加入があるなら、上限額に達しているかどうかによって年末調整でいくら利用できるか変わります。
学資保険が契約や受取人が妻の名義でも年末調整等で控除が使える?
例えば学資保険の名義が専業主婦の妻になっている場合を考えてみましょう。
年末調整や確定申告で保険料控除が使えないので(扶養の範囲で税金がかからないから)自分(夫)の年末調整で使えないかと考えている人もいるでしょう。
結論を言うと夫が掛金を支払っているなら、妻名義の契約でも年末調整などで夫が利用することは可能です。
但し満期保険金の受取人が妻だとその際に贈与税の扱いとなるので不利です。
この記事の目次:「7 学資保険(子供保険)に加入するなら知っておきたい裏技!?」でもお話した名義のことを思い出してください。
誰が契約して、誰が掛金を支払い、誰が満期保険金を受取るかで税金の取扱いが変わります。
目先の掛金だけでなく、お金を受取るときの税金の考慮しておいてください。
学資保険の生命保険料控除の注意点
学資保険も生命保険料控除の対象になるので、所得控除が使えてお得ですなどと言われることがあるかもしれません。
学資保険に加入しようかと考えているような人は、自分(親として)の死亡をカバーする生命保険に加入している可能性が高いと考えます。
死亡保障の生命保険も一般の生命保険料控除の対象です。掛金の額によっては枠を使い切っている可能性があります。
生命保険料控除が目当てなら改めて確認しておきましょう。
学資保険の年末調整、保険料控除申告書の書き方
学資保険は、他の死亡保障と同じ一般の生命保険料控除の取扱いであると解説しました。
ハガキで送られてくる生命保険料控除証明書に数字が2つ書いてあります。
一つは掛金を支払終えて確定した9月までの掛金の合計、もう一つは12月まで支払う見込みの掛金の合計です。
保険料控除申告書の書き方は下記の関連記事をみてください。
学資保険の契約を続けるなら年間の払込み予定の掛金を記入するかたちになります。この考え方は確定申告の場合も同じです。
まとめ
学資保険(こども保険)の必要性と選び方~返戻率のカラクリまで解説、についていかがでしたか。
繰り返しますが教育費は子どもが生まれたときに、いつかかるか確定します。
今年生まれた子どもなら15年後には中学卒業、その3年後の高校卒業、そして大学入学と時期が明確にわかります。
子どもが複数いる場合なら、教育費がかかる期間がさらに伸びます。早くから準備することで家計の負担は軽くなります。
学資保険(こども保険)が絶対ではありませんが、教育費の早めに準備を心がけてください。
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