少額短期保険の種類一覧とメリット・デメリット、知ってお得なミニ保険
少額短期保険は、生命保険や損害保険、共済とは別の制度で「少額」で「短期」の保険、ちょっとニッチな分野の保険を取扱い注目を浴びています。
■この記事で学べること
【1】少額短期保険(ミニ保険・ニッチ保険)とは、メリット・デメリット
【2】制度内容と仕組み・保険会社との違い
【3】少額短期保険の種類・一覧(生命保険・損害保険分野)
【4】ニッチな保険、お得な活用方法
意外と身近にあるけど知らない少額短期保険(ミニ保険、ニッチ保険)の特徴や種類の一覧、メリット・デメリットを踏まえたお得な使い方について取り上げます。
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この記事のもくじ
少額短期保険(ミニ保険)とは?メリット・デメリット
少額短期保険(ミニ保険)とは?発足の背景
少額短期保険(略称:少短)とは、契約金額が「少額」で契約期間が「短期」(生命保険などは保険期間1年、損害保険の分野は2年)以内の保険の引受のみを行う保険です。
一定の事業規模の制限がありますので、それを超えると保険会社にならなければならないなどのルールもあります。
業界内では略して「少短」と言われますが、既存の生命保険や損害保険より小規模なことから「ミニ保険」などと呼ばれることもあります。
毎年3月2日は、ミ(3)ニ(2)保険の日です。
また既存の保険会社では取り扱わない商品を取り扱う少短業者もあるため、メディアなどでは「ニッチ保険」などと取り上げられることもあります。
【参考】 一般社団法人日本少額短期保険協会
少額短期保険はなぜあまり知られていない?
メディアで取り上げられることも増えましたが、生損保の保険会社や共済と違い小規模で運営している少額短期保険も珍しくありません。
なかには大手企業が出資しているケースもありますが、大々的にTV広告を使うことが少ないことも関係しているでしょう。
社員数20名くらいで運営していることもあるので、知らない人が聞くと大丈夫なのかという人もいます。
しかしこの規模だからこその少額短期保険業者なのです。
保険会社のように派手な広告宣伝はできませんが地道に活動していますし、商品の販売についても規模が小さいからこそ販売件数や売上としての損益分岐点も違います。
少額短期保険(ミニ保険)のメリット、デメリット
少額短期保険のメリット、デメリットは次のとおりです。
メリット
- 既存の生損保にない商品がよく開発・販売される
- 保険料は掛捨タイプなので一般的に割安なものが多い
デメリット
- 広告宣伝などを行わないため、知名度が低くあまり知られていない
- 支払った保険料は保険料控除の対象外
一般の生命保険料控除、介護医療保険料控除、地震保険料控除といった各種の保険料控除の対象にならないため、年末調整や確定申告の際に控除として使えるものがありません。
また少額短期保険のデメリットに保険契約者保護機構の対象でないことを挙げている情報を見ることがあります。
この次の項目で少額短期保険の契約者保護の仕組みと生損保との違いを解説していますので参考にしてください。
少額短期保険の制度内容と仕組み
少額短期保険は生保医療など第1、第3分野の保険については保険期間1年、損保などの第2分野の保険は保険期間が2年までとなります。
契約できる保険金額(契約金額)にも保険の種類ごとに制限があります。具体的は次の表のように決められています。
①死亡保険 | 300万円以下 |
②医療保険(傷害疾病保険) | 80万円以下 |
③疾病等を原因とする重度障害保険 | 300万円以下 |
④傷害を原因とする特定重度障害保険 | 600万円 |
⑤傷害死亡保険 | 傷害死亡保険は300万円以下 (調整規定付き傷害死亡保険600万円以下) |
⑥損害保険 | 1000万円以下 |
⑦低発生率保険 | 1000万円以下 |
*傷害を原因とする特定重度障害保険の保険金額
死亡保険、傷害死亡保険または重度障害保険が同時に契約している場合、特定重度障害保険の支払額から死亡保険、傷害死亡保険または重度障害保険の支払額を減額されるものに限定
*低発生率保険
低発生率保険は、損害保険の中で特に保険事故の発生率が低いと見込まれるもので、個人の日常生活に伴う損害賠償責任を対象する保険(自動車の運行に関わるものは除く)
上記の制限から保険商品として取扱いができない保険は以下の種類です。
- 高額の死亡保障の付帯した生命保険
- 終身タイプの死亡保険、医療保険、がん保険、介護保険
- 保険期間長期の火災保険
- 制限を超える保険金額の火災保険(持ち家の建物の火災保険など)
- 自動車保険 など
自動車保険など対人賠償無制限などになると保険金額の上限が超えてしまいます。
また火災保険で建物を目的にすると保険金額が不足するため建物の損害を補償する火災保険も取扱いがありません。
少額短期保険への規制と保険会社との主な違い
少額短期保険は保険会社と同様にさまざまな規制を受けています。具体的な内容のいくつかを保険会社との比較でみていきましょう。
少額短期保険と生命保険・損害保険との主な違い
少額短期保険業者 | 保険会社 | |
参入規制 | 財務局による登録制 | 金融庁による免許制 |
最低資本金 | 1,000万円 | 10億円 |
設立準備金制度 | あり | あり |
生損保兼営 | 生損保兼営可 | 生損保経営不可 |
小規模事業者規制 | 年間収受保険料 50億円以下 | なし |
資産運用 | 預貯金(外貨建を除く)国債・地方債等に限定 | 原則自由 |
外部監査 | 資本金3億円以上 | 全社 |
ディスクロージャー制度 | あり | あり |
募集人登録制度 | あり | あり |
契約者保護機構 | なし(*) | あり |
クーリングオフ | あり | あり |
保険料控除制度 | 対象外 | 対象 |
*少額短期保険には契約者保護について供託制度有り |
契約者側からみた実務面での保険会社との違いで一番大きいのは保険料控除の対象にならないことです。
これは生命保険、医療保険、地震費用保険などを取り扱う少額短期保険業で共通のことです。
また生命保険契約者保護機構あるいは損害保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
代わりに供託金制度が設けられており、所定のルールに基づいて毎年供託金を積み増していかなければなりません。
少額短期保険の場合は、これが契約者保護の制度になります。
また少額短期保険業者は小規模の企業体で運営しているケースも珍しくありません。
ちなみに少額短期保険業者といっても保険業法のもとで保険を取扱いますので、既存の保険会社ほどでないにしても規制は厳しいです。
2008年に無認可共済が制度廃止になった際、少額短期保険業に移行できずに廃業した業者はたくさんいます。
少額短期保険の契約者保護の仕組み
少額短期保険は生命保険契約者保護機構・損害保険契約者保護機構の対象にはなっていません。
これを話すと心配に思う人がいますが、代わりに業務開始時に1000万円、毎決算時に一定の供託金を段階的に積み増して法務局に預けることが義務づけられています。
万が一の際にはこの供託金から保護される仕組みになっています。
生損保との違いの表でも書きましたが、「少額」「短期」という金額の上限設定や終身などの長期契約の禁止、運用の規制(普通預金と国債のみ)などもあります。
積立保険などはありませんから、規模や運用面なども含めて生損保とは契約者保護のあり方が全く違います。
他にも預かった保険料の資産運用方法(株式などはNG)、保険金額の制限などで経営の安定化を図っています。つまり保護の仕組みが生損保とは異なります。
少額短期保険の話をすると規模を気にする人がいますが、こうしたことを通じて契約者の保護が図られています。
なお、保険会社との違いの表に少額短期保険は年間収受保険料が50億円以下とあります。
超えるとどうなるかというと保険会社(生損保)になる仕組みになっています。
少額短期保険会社の一覧と主な取り扱い保険の種類
少額短期保険会社の一覧
少額短期保険は2024年1月11日現在121業者が登録しています。どんな業者があるかは下記の「少額短期保険会社の一覧」をみてください。
知名度が低いと言いましたが、一部の業者は社名を見ると分かりますが実は大手の企業もかなり参入しています。
ここにきて結構数が増えてきました。
筆者は保険業法の改正から少額短期保険の制度発足時からみています。
特に最近は保険業界(生損保)という同業種、引受け保険の関連業種、及び異業種も含めて大手がかなり参入をはじめています。
少額短期保険業者(ミニ保険)が取り扱う主な保険種類
少額短期保険では一社で生損保の取扱いも可能ですが、取扱いの保険は実にさまざまですが主なものは下記になります。
- 生命保険、医療保険、介護保険等
- 賃貸物件の家財の火災保険
- ペット保険
- その他の費用保険など
一番多いのは生保分野では医療保険などで、損保分野では賃貸用の家財の火災保険です。
ペット保険について、損保が取扱っているところもありますがその大半は少額短期保険業者です。
その他の費用保険というのは非常に幅が広くさまざまな種類の保険があります。
一つのカテゴリーにはくくれませんが、なかにはニッチな保険を一つ扱っているだけという会社もあります。
下記に少額短期保険協会が少短の種類や少短業者の一覧をガイドブックにしていますので参考にしてください。下のリンクは少短協会のWEBに記載のものです。
【一般社団法事少額短期保険協会】
少額短期保険ならではのニッチな保険商品
少額短期保険には、これまで商品化されていない保険商品もあります。すべては掲載できませんが、いくつかの種類を取り上げてみましょう(順不同)。
ニッチな保険の例
- 地震保険とは別の単独で加入できる唯一の地震保障の保険
- 痴漢冤罪コール付き弁護士費用保険
- 実年齢ではなく、健康年齢で保険料を算出する保険
- 不妊治療中の方でも加入できる医療保険
- 孤独死保険
- 山岳遭難の救助必要に特化した保険
- 購入したチケットのキャンセル代を補償
- 糖尿病患者専用の保険
- がん治療のための免疫保険
- 知的障がい、発達障がい、ダウン症、てんかんの人も加入できる保険
- メディカル系の専門職業の賠償責任保険、感染症保険
- スマホ保険・オンデマンド保険
- 熱中症お見舞い保険
- あんしんタイヤ保険 など
これらは一例で既存の保険会社で売り出し始めたものもあります。こんな保険はないのかと思ったら色々調べてみてください。
少額短期保険で取り扱いの状況をみて既存の生損保で取り扱いをはじめたケースもあります。
なぜニッチな保険が多い?
筆者自身、仕事で少額短期保険の経営者の方とお話することがありますが、既存の保険ではカバーできない隙間をカバーする、ないなら作る感覚をお持ちの方が多いです。
毎年3月2日(ミニ)はミニ保険の日として、少額短期保険協会が主催してイベントを実施しています。
このイベントの中に一般の人からの公募で「おもしろミニ保険大賞コンテスト」というものがあります。
こんな保険があったらいいなというものです。
痴漢免罪の際に弁護士に相談する費用を補償する保険や飼い主が亡くなりペットが残された場合、その後の生活に保険金を充当する保険などはここから実用化されたアイディアです。
契約できる金額に上限を設けられていますが、その分これまで保険でカバーできなかった横の隙間を埋める商品を工夫しています。
少額短期保険(ミニ保険)のお得な使い方と活用
少額短期保険は制度自体に制限もあるので、何でもかんでもいいわけでもありません。
仕組みや特徴を知ってうまく活用することがお得な使い方につながります。主なポイントを次に説明します。
少額短期保険しかない保険を利用
少額短期保険には、既存の生損保や共済で取扱いをしていないような保険を販売しているところもあります。
あまりメディアで報道されないことがあるのは残念ですが、こんな保険ないのかと思ったら少額短期保険協会のWEBサイトなどから該当する保険がないか探してみましょう。
必要な期間のみ安い保険に加入する、上乗せする
保険期間が終身の保険はありませんから、生命保険や医療保険でも1年間の掛け捨てタイプでの契約になります。
その分割安なものも多いので、本当に保障が必要な期間のみ加入する、あるいは必要な期間だけ既存の保険の上乗せで加入するなどが主な使い方です。
もちろん生命保険や医療保険、賃貸家財の保険などスタンダードは保険の取り扱いもあるので、既存の生損保との比較して検討することもあるでしょう。
少額短期保険の課題
最後に少額短期保険の課題についても触れておきます。
2022年に3つの少額短期保険が金融庁から行政処分を受けました。うち1社は少額短期保険の免許の取り消しを受けています。
行政処分を受けた少短業者は過去にもありますが、こうした事態を受けて金融庁も動いています。
金融庁 「保険会社向けの総合的な監督指針(別冊)(少額短期保険業者向けの監督指針)」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について
2023年1月に上記のように少短業者に対する監督指針の一部改正の動きがでています。
長く地道に活動している少短業者がある一方、行政処分や業績が振るわない業者、資本関係が変わる業者など状況は様々です。
120社近いの業者がありますが、数が増える一方で業者選びも重要な視点になってきます。
まとめ
保険業法の改正から20年弱が経ちましたが、まだまだ一般の人には知られていません。
少額短期保険の経営者の方々からお話を聞いたことがありますが、こういう保険があったらいいのに、なければ新しく作る発想があります。
少額短期保険にはスタンダードな保険も多いので、色々探して比較・検討してください。
既存の生命保険・損害保険会社、共済、そして少額短期保険(ミニ保険)という選択肢があることを覚えておきましょう。
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