確定申告の医療費控除は明細書の添付で領収書の提出が不要に!
「医療費控除の明細書」によって確定申告における医療費控除の手続きが大きく変更されています。これまで負担した医療費を証明するには医療費などの「領収書」が必要でした。
2018年に提出する確定申告から、領収書の添付が不要になる見直しがありました。
■この記事で学べること
【1】医療費控除の明細書があれば、確定申告で領収書が提出不要
【2】領収書の代わりに必要な医療費控除の明細書とは?
【3】医療費控除の明細書の申請用紙と記入例・書き方、エクセル版ダウンロード
【4】医療費のお知らせ(医療費通知)でさらに簡素化!領収書やレシートの原本は一切不要?
【5】医療費控除の明細書とスマホで確定申告と医療費控除の今後の動き
確定申告における「医療費控除の明細書」と領収書の不要についてポイントをまとめて解説します。
この記事のもくじ
医療費控除の明細書があれば、確定申告で領収書が提出不要
これまで医療費控除やセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の適用を受けるためには、負担した医療費の領収書の提出・添付が必要でした。
改正によって医療費控除の明細書を作成・提出することで領収書の提出は不要(保管は必要)になります。
ちなみにこの2つはいずれか選択適用になります。
医療費控除の領収書不要は2018年の確定申告から
医療費控除が見直しされたことにより、2018年(平成30年)に提出する確定申告から添付が不要になりました。
医療費をまとめなければならないことは変わりませんが、書類をまとめる手続きは大幅に簡素化されています。
毎年医療費の領収書を探してまとめるのに苦労していた人も多いでしょうが、明細書を作成すれば基本は領収書不要で大丈夫だと考えてください。
確定申告の医療費控除の明細書とは?(明細書の申請用紙、記入例)
税制上の優遇を受けるのにそれを証明するものがないのもおかしな話です。
領収書の原本を提出しない代わりに自分で明細書を作成してそれを提出します。
2018年には「医療費の明細書」という用紙でしたが、「医療費控除の明細書」に変わって多少用紙の中身が変わっています。
具体的には上にある医療費の明細書の画像見本がありますが、真ん中の列の医療費の区分のところが記入ではなくチェックすればいいようになりました。
次の国税庁のWEBサイトから医療費明細書手書きのExcelなどテンプレートがダウンロードできます。
e-taxからWEB上で行う場合はその下です。
医療費控除の明細書の申請用紙のダウンロード先
医療費控除における明細書の申請用紙のダウンロード先は下記になります。
国税庁 医療費控除の明細書(PDF)
これらを使って医療費控除の明細書を作成してください。
医療費控除の明細書、用紙の記入例・書き方
国税庁のサイトから医療費控除の明細書の記入例と書き方を添付します(出所:国税庁)。2つに分割します。
最初に氏名を記入したその真下です。次項で解説していますが、「医療費のお知らせ(医療費通知)」があればその内容を記入することで明細書の記入を省略可能です。
上の赤枠にあるように6つの内容が記載されていないと使えません。この6つの要件が読みにくければ次項で解説していますのでそこをみてください。
基本的な書き方左の1から右に流していくイメージでみてください。
①1の氏名と2の医療機関や薬局などの名称です。氏名ごと医療機関ごとなどに記載します。
例えば国税太郎さんと花子さんがいたら、太郎さんの分から医療機関ごと薬局ごとに書きます。
一つの医療機関に何度も通っていたり、いつも同じドラッグストアで医薬品を購入するでしょうから、その都度ではなく医療機関ごとの合計値を4に記入してください。
②3の医療費の区分は該当するものにチェック、入院や手術などして生命保険会社などから給付金を貰っていれば差し引きますので5に記入します。
③このように太郎さんが終わった次は花子さん、他の家族がいれば同じように記入して、表の下の合計を入れます。
④そこから左下の控除額の計算というところに矢印が伸びているのでそこに転記してください。
それから用紙について先ほどの医療費控除の明細書のダウンロード(Excel)のところで、医療費集計フォームというものがありました。
使い方・入力方法、手書きなら書き方に該当しますが、下記を参考にしてください。
国税庁 確定申告書作成コーナー よくある質問 医療費集計フォーム
上記はいわゆるQ&A形式になっています。
医療費控除の明細書で領収書のない交通費の記入、2枚になるときはどうする?
医療費控除には入通院のための公共交通機関を利用した交通費、あるいはこうした電車などの通院などが困難な場合のタクシー代などが医療費控除の対象になるケースもあります。
上記の明細書のサンプルを見ると交通費の内訳まで書ききれないかもしれません。
別途交通費にかかる明細書(日時、続柄、医療機関名、交通機関名、金額など)をエクセルなどで作って医療費などの領収書と照らし合わせられるようにしておきましょう。
家族構成や医療機関などのかかる種類や回数によって明細書が1枚で書ききれないケースもあるでしょう。その場合には2枚にしても大丈夫です。
1枚目の「ウ」の欄に1枚目の医療費の合計、2枚目にの「ウ」欄に2枚目の医療費の合計、その下の「A」欄に1枚目・2枚目の合計を記入してください。
後は2枚目の左下にある「3 控除額の計算」の欄に矢印に従って数字を転記しましょう。
医療費控除の明細書がない場合
この医療費控除の明細書がない場合の対処ですが、解説したように医療費控除の明細書は所定の用紙をダウンロードして医療費を自分でまとめて作成するものです。
つまり明細書がないというのはありません。
医療費控除の明細書がなくてどうしようと考えている人は、次の項目で解説する医療費のお知らせ(医療費通知)と明細書を混同しています。
それでは次にけんぽ組合などから送られてくる「医療費のお知らせ(医療費通知)」についてみていきまます。
医療費のお知らせ(医療費通知)で医療費の明細書記入が簡素化!?
医療費のお知らせ(医療費通知)とは?
医療費のお知らせ(医療費通知)とは、健康保険の加入者本人とその家族が健康保険証で医療機関での診療を受けた際、医療費の明細(総額・健保負担額・本人負担額等)が記載されている書類です。
加入している協会けんぽなどから郵送されてきます。
医療費のお知らせの発行目的
具体的に実際の医療費の総額や健保の負担、自費の内訳がわかります。これを発行する主な目的は次のことがあります。
- 自分や家族の健康・医療について認識を持つ、無駄な医療費を使わない
- 実際の医療費の確認(健康保険で自費は3割負担となるため実際の医療費を認識しにくい為)
- 医療費請求の確認(請求に誤りがないか)
加入している健康保険組合から送られてくる医療費のお知らせが、医療費通知に該当する場合には、医療費控除を受ける際の添付書類として利用することができます。
ここまで解説したように明細書を添付することで、領収書の提出は不要になりましたが、明細書の記入も省略できるのです(明細書の合計額を記載)。
医療費のお知らせの注意点
自分で作成する必要がなく、送られてくるもので必要書類として代用できるなら一番楽です。
但し医療費のお知らせを利用するには条件があります。具体的には次の項目が入っていることが必要です。
- 被保険者等の氏名
- 療養を受けた年月
- 療養を受けた者
- 療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
- 被保険者等が支払った医療費の額
- 保険者等の名称
これらの項目が網羅されていないときは使えませんので、その場合には領収書などをみて医療費控除の明細書を作成することになります。
他にも医療費のお知らせは、掲載されている期間に医療機関にかかっていないと表記されなかったり、項目が不足しているケースがあります。
つまり実際に負担した医療費と金額等が合致しないこともあります。
医療費のお知らせは健保組合などから発行されます。
例えば薬局やドラッグストアなどで医薬品などを購入したものまではここに載っていません。
保険外の治療などを受けた場合なども同様です。
基本すべてを網羅しているものではないという認識で、足りない部分については自分で医療費の明細書に記入しましょう。
医療費のお知らせはいつ届く?
協会けんぽや組合健保、国民健康保険、各種共済健保など加入先によって違いがあります。
協会けんぽなどは2月に事業主宛に送付(任意継続被保険者は自宅)されますが、健保によって年に数回発行しているケースもあります。
多少違いはあるでしょうが、加入先の行政や健保組合などに個別に早めに確認してください。
医療費のお知らせがない・紛失、届かないとき再発行は?
紛失などによって手元に医療費のお知らせ(医療費通知)がないケースがあります。
健保にもよるでしょうが、再発行に応じていないケースが多いようです。
前項の「医療費控除の明細書がない」というのはこの通知が来ていない、あるいは紛失したというケースでしょう。
再発行が難しいようなら明細書の作成もしくは従来通り領収書で対応ということになります。
健保によってはIDとパスワードを登録してネット上で閲覧できる仕組みにしていることもあります。これが可能なら登録しておくと翌年以降も楽でしょう。
確定申告の医療費控除の明細書で領収書の原本は全く必要ない?
医療費控除に必要だった領収書の原本の提出は不要になりましたが、明細書の添付でよくなった代わりに自分で領収書の原本の保管が必要です。
- 税務署からの求めに応じて領収書の原本の提出や提示が求められることがある
- 領収書の原本を保管する期間は5年間
医療費控除を申請するにあたって多少負担は軽くなりましたが、領収書やレシートなどの原本の保管まで不要になっているわけではありません。
医療費控除の申請した領収書などは、その年ごとに分かるように保管しておきましょう。
確定申告をすると確定申告書の控えなどもあるので、分かるように整理しておくようにしてください。
確定申告の医療費控除で領収書の原本を紛失・なくした、コピーでも大丈夫?
医療費控除で領収書の提出が不要になったものの、その保管は5年間です。
もともと医療費控除の領収書について見直しがされる前でも領収書を紛失・なくしたケースはありました。
大前提としてコピーでは代用できません。医療費控除の領収書のコピー使用は、何度も不正に領収書を使い回すことを防ぐために原則として認められていないのです。
紛失した・なくした場合には医療機関などに再発行してもらえないか確認してみてください。
クレジットカード払いをしている場合には紙のクレジットカードの明細書をわかるようにしておきましょう。
最近はクレジットカードの明細も紙で出さないケースも多いですが、WEBから印刷して紙で記録を残して誰が何に使った医療費か分かるようにしておいてください。
溜めてしまうとまず整理ができません。
どうしても医療費控除やセルフメディケーション税制のための医療費や医薬品購入の領収書・レシートをまとめるのは確定申告の直前が多くなるでしょう。
後で整理するのは本当に大変なので、せめて月ごとにファイルに入れるなり、閉じておくなりしてひとまとめにしておく習慣を「家族」でつけてください。
医療費のお知らせがあればそもそも領収書が不要です。すべて内容を網羅していないこともありますが、ある程度はこれでカバーすることができます。
医療費控除の提出期間(期限)と郵送方法、マイナンバー
医療費控除の郵送方法、例えば郵送期間はいつからいつまで、郵送先や宛名、返信用封筒、控えをどうするかなど色々疑問があるでしょう。
医療費控除の対象期間・提出期間はいつからいつまで?期限は?
医療費控除の対象になる期間は、その年の1/1から12/31までの医療費等が対象です。これについて翌年の2/16-3/15の間に確定申告します。
但しこれは確定申告の場合です。払いすぎた税金を取り戻す還付申告では、2/16以前でも可能ですし、期限については過去5年間まで遡って手続き可能です。
還付申告ならそんなに急がなくてもいいのですが、還付されるタイミングが遅くなります。
医療費控除を使っても納税する場合には3/15までに手続きが必要ですが、還付ならそれに拘る必要はありません。
医療費控除の郵送方法
医療費控除の郵送は、確定申告書と同じです。
詳細は下記の関連記事にありますが、その年の確定申告期間(通常は2/16-3/15)に所轄の財務所長宛に郵送します。
確定申告書は信書になるので使えない郵送方法がありますが、普通郵便でも大丈夫です。
もっとも送付する書類のことを考えれば書留にしておいた方が無難です。
返信用封筒は控えが必要なら同封するが基本です。医療費控除だからといって何か変わるわけではありません。
必要書類は医療費の明細書などを同封してください。
もちろん領収書は保管が必要ですが、提出は不要です。
医療費控除にマイナンバーは必要?
確定申告で医療費控除の申請にマイナンバーが必要かというと必要です。正確には確定申告にマイナンバーが必要です。
ただし提出しなかったとしても今のところペナルティはありません。
これが結論です。詳細は下記の関連記事にありますが、この状況でマイナンバーの提出をどうするかは自分で判断するということになります。
ちなみに確定申告の医療費控除の申請をする場合、代理の者がいくケースがあるでしょう。
医療費控除の申請をするくらいなので、本人が体調が悪い、高齢者などのことは珍しくありません。
いまは代理人の人も確認も必要なことがあります。
- 申告者に代わって手続きを行うよう委任されたことの確認(代理権の確認)
- 代理人の身元確認
- 申告者のマイナンバーの確認が必要
家族の代理でいく人は、持ち物の中にこれに必要なものも持参していきましょう。
医療費控除の明細書とスマホで確定申告/医療費控除の今後の動き
医療費控除の明細書とスマホで確定申告
医療費控除の明細書が使えるようになったものの、確定申告は面倒という人は少なくありません。
一方で、確定申告の電子化の手続きはかなり進められています。スマホからでも確定申告をして医療費控除の手続きをすることができるようになっています。
事前準備は必要ですが、スマホやパソコンなどから確定申告をして医療費控除の手続きをすることも検討してください。
まとめ
確定申告で医療費控除を受ける仕組みも簡素化されつつあります。医療費控除もはじめての人もいれば、毎年手続きしている人もいるでしょう。
やり方やまとめ方が変わると、最初の年は結構手間暇がかかります。
年があけてからぼちぼち、直前にそろそろ確定申告という人が多いでしょうが、確定申告の期限である3/15に近づくほど混みます。
時間を取られないように早めに対応するようにしておきましょう。
確定申告で医療費控除の手続きをした経験のある人は、手間がかかった割にあまり還付されなかったという人もいるでしょう。
考え方によりますが医療費のお知らせなどである程度年間の医療費が網羅しているなら、それ以上細かい書類や領収書などを探すことはせずそのまま提出するのも考え方です。
あまり時間が取られるようなら、働く時間を増やした方がいい、時間の無駄という考えの人もいるからです。
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