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老後の年金はもらえるのか?漠然とした年金不安よりも考えること

老後の年金はもらえるのか?漠然とした年金不安よりも大事なこと
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人生100年時代と言われるなかで少子高齢化が進み、日本の年金財政も厳しい状況になっています。老後の年金がもらえるのか漠然と不安や心配な人も多いでしょう。

■この記事で学べること

【1】将来の年金はもらえるのか?

【2】年金と貯金は違う

【3】年金不安の前に考えること、すべきことがある

老後の年金不安と年金はもらえるかどうかについてお話します。

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将来の年金はもらえるのか?

将来老後の年金はもらえるのか?

将来の年金はもらえるのか?

記事タイトルの結論を先にお話すると、「公的年金からもらえるお金はこれまでよりも減る。但し、公的年金制度が破たんすることは考えにくい」です。

理由はこの後お話しますが、ことあるごとに

「将来の年金はもらえるのか?」

「年金制度は破綻する」

「掛金払った分は戻ってこない」などの話がでてきます。理由としては次のようなことがあります。

  • 昔よりも平均寿命が延びた
  • 年金を受給する高齢者の数が増え、さらに少子化
  • 財政に関する漠然とした不安

などいくつか漠然とした不安の原因はあるのでしょう。

また年金が減るといっても受給できる年金が少なくなる、受取り年齢が引き上がり結果的にもらえる総額が少なくなるなどいくつかケースが想定されます。

年金保険料をみんな支払ってないのは本当?

将来の年金を受け取るには現役時代に年金保険料(つまり掛金)を支払う必要がありますが、未納の人が多いとの話を聞くことがあるはずです。

国民年金の保険料納付率は平成23年には58.6%にまで落ちましたが、その後は少しずつ上昇しており、令和3年度は78.0%です(出典:厚生労働省)。

つまり約22%程度が未納ということになります。但し、「全体の」約22%が未納というわけではありません。

年金制度は以下の3つの属性に分かれています。

  • 第1号被保険者ひほけんしゃ(自営業、フリーランス、学生など)
  • 第2号被保険者(会社員、公務員)
  • 第3号被保険者(第2号の配偶者)

会社員や公務員の人はよく分かるでしょうが、一般的に第2号被保険者は給与が振り込まれた時点で年金も含めた社会保険料はすでに天引きされています。

これらの人に通常は未納になることはありません。つまり未納の多くは主に自営業やフリーランスなどの第1号被保険者の話です。

第2号のように厚生年金まであるわけではないので未納であっても金額そのものも違います。

第1号の未納はもちろん問題ですが、多くの人が未納だから公的年金は破綻する、だから自分も支払わないというのは安易な判断です。

厚生労働省 国民年金納付率の推移

年金には公的年金と私的年金がある

単に年金というとすべてを一つにして、区別がついていない人がいます。年金には大きく分けると2つの種類があり、公的年金と私的年金です。

  • 公的年金:自営業や学生が加入する国民年金(基礎年金)とさらに会社員が加入する厚生年金
  • 私的年金:国民年金基金や確定拠出年金(iDeCo含む)、確定給付企業年金、生命保険会社が販売する個人年金など

公的年金は社会保険ですので、そもそも加入しないという選択はありません。

年金の話をするとこれらすべてをごちゃまぜに考える人がいるのでまずはここを整理してください。

公的年金と企業年金、確定拠出年金なども含めて一緒に考えている人がいますがそれでは混乱します。

後でお話しますが、公的年金からもらえるお金は「老後の」年金だけではありません。

公的年金は払い損は本当か?

多くの人が考えることですが、将来の年金が払い損になる、支払った掛金が減るという話がよく飛び交っています。

具体的にみてみましょう。

  • 国民年金(老齢基礎年金ろうれいきそねんきん

国民年金の保険料は、現在月々16,520円です(2023年度)。加入者はきちんと保険料を支払うと20歳から60歳までの40年(480月)支払います。

16,520円×480月=7,929,600円(負担した保険料の合計)…①

795,000円(年間受け取ることのできる年金額 令和5年度)

65歳から受け取りを開始して85歳まで生きるとした場合(20年間)

795,000円×20年間=15,900,000円…②

②-①
15,900,000円-7,929,600円=7,970,400円(差額)

実際には保険料を満額かけていない人もいるでしょうし、保険料も一定ではなく変わっています。

また年間受け取る受給額も一定ではありませんからあくまで現時点での仮の試算です。

給付される年金額も削られるかもしれませんが、逆にこの試算の85歳よりさらに長生きになれば受け取る金額の総額も増えます。

会社員や公務員の場合にはここにさらに厚生年金(老齢厚生年金ろうれいこうせいねんきん)などがあります。

厚生年金の場合には、その人の報酬によって金額が変わります。

また厚生年金保険料は労使折半になっています。つまり会社と本人が半々で負担しているのです。

公的年金制度は、世代間扶養という老後世代の人を現役世代の人が支える仕組みになっていますが、税金も投入されていますから破綻というのは考えにくいのです。

加えて年金資産はそのままではなく運用して増やしています。

市場動向があるので増えたり減ったりしますが、2000年に入ってから100兆円近く累積では増えています。

参考 年金積立金管理運用独立行政法人 最新の運用状況 

もちろん破綻しなくても減額されたら、メリットが少なくなると考える人はいるでしょう。

公的年金は早く死亡したら年金給付は打ち切りあるいは支払いになりません。

これは制度の根幹のところですが、高齢の人でも死亡したら国民年金(老齢基礎年金)はもらえません。

極端な話65歳から給付される予定の年金は64歳で死亡したらもらえません(繰上げ受給等は除く)。

これはいまの高齢者も同じです。これを払い損と考えるか、長生きしてお金がない方が困ると考えるかはあるでしょう。

実際に早く死亡してしまった人の分は、年金の原資に回り制度の維持にも繋がっているのです。

社会保障制度と預貯金・投資を一緒にしない

社会保障制度と預貯金・投資を一緒にしない

社会保障制度とは?

多くの人が勘違いしていますが、公的年金制度は社会保障制度の一つです。

自分でお金を貯める預貯金などとは根本的な考え方や制度の仕組みが違います。

社会保障制度は、例えば「病気」「ケガ」「出産」「障害」「死亡」「老化」「失業」などが原因で、自分で生活が厳しくなったり、自立した生活が維持できなくなる人がいます。

これは誰にでも起こりえることで、自分の努力だけでは何とかなるものではありません。

筆者はもちろんすべての国民にあり得ることです。

そうした状況の人について、社会の中でお互いに支え合いかたちで必要な生活の保障するのが社会保障制度の仕組みです。

【社会保障制度の全体像】

公的年金は社会保障、預金とは違う

社会全体でお互いを支え合う制度ですから、預貯金や投資などでお金を貯めたり殖やすことと同列に考えること自体がそもそも違うのです。

病気になって病院にいけば多くの人は3割負担で済みますが、これも社会保障の中の公的医療保険制度です。

しかし健康保険制度について損得勘定が語られることはあまりなく、病気になった人だけ得をしているとはいいません。

他の制度についても同様です。

年金というお金の収支が他の制度に比べて一見計算しやすくみえることも関係しているのでしょう。

公的年金は将来の年金だけではない

年金の話をすると将来、つまり老後にもらう年金の話だけがなぜか議論になります。

この老後にもらう年金のことを老齢年金といい、年老いたときにもらう年金ということです。

実際に公的年金は老齢年金の他にも「遺族年金」や「障害年金」もあります。記事の上の方で国民年金(老齢基礎年金ろうれいきそねんきん)と書きました。

国民年金は正式には次の3つがあります。

  • 老齢基礎年金ろうれいきそねんきん
  • 遺族基礎年金いぞくきそねんきん
  • 障害基礎年金しょうがいきそねんきん

ちなみに厚生年金も上記同様に3つあります。下の2つは老後は関係なく、該当する状態になったら現役時代でも受け取ることのできる年金です。

若くして事故で障害を負うことになったらその後の生活が大変です。

公的年金は社会保障の一つといいましたが、これらのことなどはまさにそうです。

公的年金の破綻リスクについて

政府は将来の公的年金の財政見通し(財政検証)を公表しており、5年に一度実際される公的年金の検査のようなものと考えてください。

前回は2014年(平成26年)に出されているので、2019年(令和元年)8月27日に5年ぶりに公表されました。

おおむね100年先までにわたる将来の保険料収入や年金給付費の見通しなど、長期の公的年金財政の収支バランスの検証将来の公的年金を受け取る水準を示すものです。

厚生労働省 将来の公的年金の財政見通し(財政検証)

政府のいうことなど信じられないと言ってしまえば何の参考にもなりませんが、こうした公表の内容やそれに対する識者の意見など確認するようにしてください。

この2019年(令和元年)8月27日の財政検証について、筆者も当日現地にいって公表内容や議論を傍聴してきました。

現地で話を傍聴した上で、このときの報道の仕方については少々違和感を感じていることはお伝えしたいと思います。

またこの状況を踏まえて、今後年金制度をどうしていくのか建設的な議論を期待します。

漠然とした年金不安の前に考えること、することがある

漠然とした年金不安の前に考えること、することがある

会社員の人などは定年が60歳から65歳などに変わっています。企業によってはさらに延長、あるいは定年廃止というところもでてきました。

また現在でも年金は繰り下げ受給することで年間に受け取る年金額を増やす選択ができます。

公的年金を繰り下げ受給する最長は現在70歳ですが、今後75歳に改定されます。これは強制ではなくあくまで本人の選択です。

ま年金保険料は支払えるけど損しそうだから払わないと思っても公的年金への加入は義務です。

未納が続いた場合の強制徴収も年々条件が厳しくなっており、最終的には財産の差押えがあります。

そのため未納率も少しずつ上がっています。

制度についておかしいところには必要な声は挙げるべきですがすることはしておきましょう。

無関心と無知が漠然とした不安を増幅させる

お金のことに無関心であったり、ニュースやその他の情報の断片的な部分に振り回され過ぎるとかえって無知になり、それが分かることを難しくします。

よくわからないことは誰でも漠然とした不安を生み、場合によってはそれが増幅します。

ニュースやネットの情報であればその根拠や内容などをきちんと精査するようにしてください。

年金不安を煽ったセールストークも多いですね。公的年金は破綻するから●●投資をしましょうなどはよくあることです。

投資そのものは資産を殖やす手段としてした方がいいとは考えますが年金不安などとは別の話です。

年金に対する漠然とした不安やあきらめの前に

景気のいい時代や収入が右肩上がりの時代は良かったなどと言う前にすべきことがあります。

そもそも将来どうなるか分からないのはいつの時代でも同じです。

80年代から90年代に10年預金に預ければ約2倍にまでなった時代、25~30年先に金利がゼロになると予想した人はいないでしょう。

以前定年は60歳のとき、これから年金の受給は65歳になるから、この間の5年はつなぎの年金での自助努力が必要などと言われていた時代がありました。

ところがすでに65歳まで働きましょうという流れになっています。

いまの20代の人が年金をもらうことが見えてくる30年先はもっと変わっているでしょう。

何か有効な手立てがなければ人口減少は進んでいきます。

但し、人口構成比率の高い団塊の世代の人はこのとき100歳です。

若い人が少なくなっていく傾向に変わりはないでしょうが高齢者もずっと年金をもらい続けるわけではありません。

平均寿命がさらに延びているか、多くの人が亡くなっているかは分かりません。

実際に投資などでリスクでも取らない限り、自力で今の国民年金の受給と同様に増やすのはなかなか困難です。

老後の生活の軸が公的年金だったものが、少しずつ変わってきています。

確定拠出年金(企業型、iDeCo)や各種NISAなどがはじまっているのはその一つです。

NISAについては2024年から大幅に拡充されて改定されます。

自分でお金を稼ぐ方法、殖やす知識と経験をどんどんつけていってください。若い人ほどその時間はあります。

老後の自分の生活を支える基礎を作るのは誰でもなく現役時代の自分自身です。老後の自分の選択を狭める判断を現役時代の今しないようにしてください。

まとめ

将来の公的年金の破綻はともかく年金が減額(年金額が減る、年金が貰える年齢が上がる、保険料が増えるなど)されることは間違いないでしょう。

社会保障制度である以上、入る入らないという話ではありませんし、漠然と不安がっていてもきりがありません。

自分の健康寿命を延ばし、現役のときに稼ぐ力を身につけておくことを意識してください。

長生きしないから別にいいという人がいますが、医療技術も進んでいるなかで病気≠死亡では必ずしもないのです。

漠然と不安に思うよりいますべきこと、しておいた方がいいことに注力してください。若い人ほどその時間があるのです。

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ライター紹介 ライター一覧

平野 敦之

平野 敦之

ひらの あつし

平野FP事務所代表。(CFP ®・1級FP技能士・宅地建物取引士・2級DCプランナー・住宅ローンアドバイザー)。東京都出身。大学卒業後に証券会社、損害保険会社等で実務を経験した後1998年に独立。

・個人のライフプラン、お金の悩みやお困りごとのサポート。
・法人の経営者のお金の悩み、営業を支援。

ファイナンシャルプランナー歴20年以上。相談業務の他TVやラジオ、新聞、雑誌など直近の10年間で200回以上の取材を受ける。同業であるファイナンシャルプランナーに対しても情報提供の執筆や講演を行う。

講演・セミナー活動も大学での非常勤講師や国民生活センターや行政機関、大手企業や団体など幅広い実績を持つ。総合情報サイトAll Aboutにて2003年よりマネーガイドを務め、15年以上に渡り定期的にマネー情報の発信を実施。その他の媒体も含めてWEB上での執筆記事は600本以上。

「お金の当たり前を、当たり前に。」するために、現場の相談を中心業務と考え活動を続ける。

【著書】いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)http://amzn.to/2csBEsM
    
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