名義保険で2018年から生保の相続が変わる~生命保険の契約者変更の税金改正
名義保険は、以前より相続・贈与と同じように税金がかかるものとして、税務当局が目を光らせてきたテーマですが、2018年1月から大きく変更されています。
■この記事で学べること
【1】名義保険とは?
【2】改正された背景
【3】名義保険についての改正内容
【4】名義保険への対応について
名義保険が関係する生命保険の契約者の変更につき、税金の取扱いが変わるところ(2018年)をその経緯からポイントをFPがまとめます。
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この記事のもくじ
名義保険とは?
名義保険とは、例えば生命保険契約の名義が子であるにも関わらず、掛金を支払ってきたのが親であるような契約です。
契約上の契約者と実際の保険料負担者が異なるケースと考えてください。
お金の負担を親がしてきたにも関わらず、死亡保険金や解約返戻金が子に支払われたら、実質親から子への贈与です。
同じようなことに親が子の名義で銀行預金口座を作り、お金を入れていくことはよくありますが、これは名義預金といいます。その生命保険版と考えてください。
生命保険の契約者の当事者と税金
今回の改正の説明について、生命保険の契約の当事者についての関係が分かっていないと何のことだかさっぱり分からないと思います。
まずはここを理解してください。
生命保険の契約の当事者と税金
生命保険の契約に関係する当事者について説明します。
- 保険契約者 生命保険会社と契約をして、保険料(掛金)を支払う人
- 被保険者 生命保険の保障の対象となる人(この人に保険が掛かっている)
- 保険金受取人 保険会社から死亡保険金などを受取る人
生命保険はこれらの3者が誰になっているかで、死亡保険金の税金の取扱いが相続税・所得税・贈与税と変わります。
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 |
A | A | B | 相続税 |
A | B | A | 所得税 |
A | B | C | 贈与税 |
結婚している人なら以下のような契約形態は一般的です。保険契約者=夫 被保険者=夫 保険金受取人=妻
この場合、夫が自分で生命保険の契約をして、万が一のことがあったら死亡保険金は残された妻に渡すというものです。
生命保険契約と税金のポイント
生命保険の契約関係の税金の基本は説明しましたが、注意が必要なポイントが一つあります。
具体的には生命保険契約は、契約者≠保険料払込人のことがあります。
つまり生命保険の契約をした人が掛金を自分で支払っていないことがあります。
上記の例だと夫が妻を保険金受取人にして生命保険に加入していますが、掛金の引落口座は自分の親になっている(支払ってくれている)ような場合です。
そうすると実質的な掛金の負担者が違う以上、生命保険の税金の取扱いが変わるのです。
この記事では契約者=保険料払込人として記事を進めますのでそのつもりで読み進めてください。
名義保険にかかる生命保険の契約者変更の税金の取扱い改正の背景
生命保険の税金の関係
生命保険における税金の考え方を確認します。前提を2つだしますので、よく読んでください。
保険契約者=父 被保険者=子の生命保険だとします。
①
生命保険を契約期間の途中で契約者変更します(例えば父→子)。変更後の契約者となった子が解約返戻金などを受取ると、その解約返戻金には変更するまで父が支払っていた掛金がほとんど入っていることになります。この場合、その該当する部分は父から子への贈与になります。
②
保険契約の契約者が死亡(父)、契約者を相続人(子)に名義変更する場合、解約返戻金相当額は亡くなった父から子への相続財産とみなされます。
つまり自分でお金を支払っていない生命保険契約を引き継いでお金(保険金や解約返戻金など)を貰ったら、贈与や相続財産になりますよ、ということです。
この2つが前提ですので、まずはここを理解してください。
生命保険の契約者変更に関する改正の背景
改正の目的
改正の主な目的は上記のような契約者変更をしたケースでは、本来は贈与税や相続税の税金を支払う対象となるわけです。
しかしこうした生命保険契約を税務署が正確に把握できるようにする、言い換えれば申告漏れを防止したいということです。
もともと生命保険を解約するなどして解約返戻金が保険会社から契約者に支払われると、一定の条件を満たせば支払調書がでます。
保険会社が税務署に支払調書の提出義務のある要件
- 1回の支払金額が100万円を超える保険金、解約返戻金等を支払うケース
- 同一の人に対して年間20万円以上の年金や給付金などを支払うケース
仮にこれらの要件を満たして税務署に支払調書の提出があっても、贈与や相続財産になるかどうかの把握が難しかったのです。
これまでなぜチェックしなかったか?
それは支払調書に契約者変更、支払いをした掛金の情報の記載がないためです。
例えば契約者が親、被保険者(保障の対象者)が子の生命保険契約で、契約後、数年してから契約者を子に名義変更したとします。
保険金や解約返戻金などを受取った際、所得税(一時所得)は把握できても、情報がないために親からの贈与についてはわかりません。
同様のパターンで契約者である親が死亡、被保険者である子に名義変更してもお金の出入りはないためそもそも支払調書もでません。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、保険は子にかかっていますが、契約者である親が先に死亡するのはある意味普通です。
親がお金を払ったものを子が引き継いだら贈与や相続財産になるのですが、それをチェックすることができなかったのです。これらが改定されます。
2018年1月改正の生命保険の契約者変更等の内容
「生命保険契約等の契約者変更に係る調書の創設」、及び「生命保険金等の支払調書」の改正が2018年(平成30年)の1月1日に施行されました。
この生命保険の契約者変更等についての内容を確認していきましょう。
改正されるポイントは次の2点です。
(Ⅰ)
契約者の死亡による名義変更時は、保険会社に法定調書の作成と提出が義務付け。
保険会社等は、生命保険等の死亡による契約者変更があった場合、死亡による契約者変更情報及び解約返戻金相当額等を記載した調書を、税務署長に提出を義務付け。
(Ⅱ)
保険金の支払時に保険会社が作成提出する支払調書に、過去の契約変更履歴、払込みした掛金の情報などを記載することが義務付け。
生命保険金等の支払調書につき、保険契約の契約者変更があった場合、保険金等の支払時の契約者の払込保険料等を記載する。
このように今まで生命保険契約の契約者変更の履歴や実際に払込みした掛金の詳細などが税務署で把握できるようになります。これまであった穴は塞ぐということです。
名義保険に該当する場合、生命保険の契約者変更にどう対応する?
実際のところ一般の人がこの件について事前に情報収集することはほとんどないでしょう。
メディアで報じられるか、生命保険会社などから情報提供があった場合などというのが実際のところです。
生命保険の契約者変更の情報はこれまで以上に税務署に捕捉されるということを理解しておくことです。
名義変更にかかる契約があるかチェック
該当するものがなければ問題ありませんが、実質的な掛金の負担者によって贈与と取られるので生命保険契約を洗い出してみましょう。
事情があって名義保険の状態、その場合には贈与の対象になるけどそれは承知しているということであれば問題ありません。理解していないのが問題です。
名義保険と指摘されないために
悪意があるのは論外ですが、知識がないまま名義保険の状態になっていることもあるでしょう。悪意がなくても極力避けておきたいところです。
契約内容等も実態に合わせたものにしておきましょう。
- 贈与契約書の取り交わし、贈与した分の掛金を銀行口座でやりとりする(形を残す)
- 自分名義の通帳・印鑑は贈与された者が保管・管理
- 生命保険料控除の申告を贈与された者が行う
いずれにしてもそんなことは知らなかったというのが一番問題です。2018年の改正の施行がはじまる前後になれば、生命保険業界からも情報が出始めるでしょう。
実態にあった生命保険契約にして、拾える情報は拾っておく、定期的にでてくる情報などにもアンテナを立てておくことが必要です。
まとめ
生命保険の契約者変更の税金が改正(2018年)!相続はどうなる?、についていかがでしたか。
税制改正がされてから、少し間が空くとどうしても忘れがちになります。一般の人だとメディアなどで多く報道されないとなかなかこうしたところまでの、情報のキャッチは難しいでしょう。
何かを急いでしなければというものではありませんが、こうしたかたちに変わっていくということは承知しておきましょう。
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