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知っておきたい相続における火災保険・地震保険の名義変更手続きの注意点

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相続が発生した際、火災保険や地震保険の契約の名義変更が必要です。

名義変更しないまま火災や自然災害などで建物が全壊したりすると保険金の支払いがスムーズにならないことがあるためです。

■この記事で学べること

【1】相続発生で火災保険は相続財産になることも

【2】火災保険の相続での名義変更

【3】名義変更に自然災害や火事で全壊・全焼したら

【4】火災共済の相続と名義変更

相続や相続税と故人名義の火災保険・地震保険の名義変更の手続きや知っておきたい注意点についてファイナンシャルプランナーが解説します。

相続発生で火災保険は相続財産になる?

相続発生で火災保険は相続財産になる?相続税の取り扱いは?

火災保険の契約に関係する人の基礎知識

火災保険(地震保険含む)では、次の契約者、被保険者(火災保険では所有者)を決めて契約します。

相続などで名義変更を考える際に大切なところなので、まずはここを理解してください。

なお、損害保険会社で契約する地震保険は火災保険に付帯して契約しますので、火災保険の名義変更手続きをすれば地震保険の手続きも済んだことになります。

以後は火災保険としか書きませんが、地震保険についても同様と考えてください。

  • 契約者:契約の当事者
  • 被保険者:火災保険の場合は物件の所有者

最初にこの両者が誰になっているか確認してください。

契約者の氏名を記入しないと火災保険の申し込みはできませんが、被保険者は特に指定しないと契約者と同一になります。

契約者と被保険者は必ずしも同一である必要はありません。

例えば妻が所有する物件なので被保険者は妻、お金は夫が支払うので契約者は夫ということでもOKです。

夫婦共有名義、親子で共有名義などの場合、被保険者の欄には共有者全員の氏名を記入します。

被保険者は必ずしも一人である必要はありません(契約者は一人だけです)。

大事なことは実際の所有者と被保険者が合っていることです。

本来物件の所有者ではない人が火災保険の被保険者になり、保険金が支払えて貰えてしまうと悪意の第三者が出てくるためです。

自分の所有物でないなら火事で燃えて保険金を貰った方がよくなってしまいます。

このように相続や贈与などで所有者が変わったなら、火災保険の被保険者も変更する必要があります。

火災保険は相続財産か?相続税の取扱いは?

亡くなった人の名義で火災保険に加入していたのであれば、原則として火災保険の契約も相続財産となります。

実際にはどのようなタイプの火災保険に、どのような契約内容で加入していたかによって扱いが変わるので、もう少し踏み込んでみていきましょう。

積み立て型の火災保険

火災保険の契約そのものに財産としての価値があるかというのがポイントです。

積み立て型の場合、契約満了まで持っていれば満期返戻金などがあるため事実上は貯蓄と変わりません。

そのためそこまで積立てられた金額の解約返戻金相当額について相続財産となります。つまり積み立て型なら相続税にも少なからず関係します。

実務的には低金利に影響もあって積み立て型の火災保険は損保ではほとんど販売されていません。

損保では過去に契約した人の現存契約があるかどうかというところです。

ちなみにJA共済が「建物更生共済 むてきプラス」という火災共済を取り扱っています。これは積立型なので契約している人は上記で解説した取り扱いとなります。

掛け捨て型の火災保険

次に掛け捨てタイプの火災保険です。例えば1年契約などで月払いなどになっていると、解約返戻金はほとんど発生しません。

掛け捨ての場合は、積み立て型に比べると相続財産としての価値がほとんどありません。

但し解約するなどして解約返戻金がでてくると話は別です。掛け捨て型で解約返戻金があるのかというと該当するケースがあります。

掛け捨て型の火災保険でも解約返戻金に注意

掛け捨て型の火災保険では、解約返戻金が常にないかというとそうでない契約があります。

具体的には払込を一時払いにしているケースです。1年契約なら一時払いにしても解約返戻金はそんなに大きくならないでしょうが、それでも解約返戻金は発生します。

特に長期契約で一括払いにしていると解約返戻金が大きくなります。

現在では、長期契約できる期間は火災保険は最長5年です。

但し、2015年9月末までは火災保険は最長36年の契約が可能でした。2022年9月末までは最長10年です。

過去に住宅購入などで住宅ローンの返済期間に合わせて火災保険に加入すると、契約期間30年、35年で保険料(掛金)は一括払いというのは珍しくありません。

掛け捨て型でも長期契約の一括払いということは将来の掛金の先払いをしているので、解約すると解約返戻金が発生するのです。

相続発生に伴う火災保険と相続財産、相続税にかかる取扱いはこのようになります。

火災保険の相続評価

火災保険の契約の相続評価の基本的な考え方をお話します。

火災保険で、保険料(掛金)を故人が負担していた場合、 相続開始の時にその火災保険を解約したとして、支払われる「解約返戻金額」によって相続評価するものとされています。

仮に相続発生の日に、火災保険を解約したときの「解約返戻金相当額」が相続財産として手続きする必要があります。

具体的な解約返戻金額は、加入先の損害保険会社に聞けば計算してくれますので確認するようにしてください。

火災保険で相続が発生した際の名義変更と必要書類

火災保険で相続が発生した際の名義変更と必要書類

相続財産としての評価や考え方は解説したとおりですが、遺産分割協議が済んで物件の所有者が変わったのであれば、火災保険の名義変更の手続きが必要です。

この変更手続きの変更理由のことを権利譲渡といいます。

名義変更の手続き方法

名義変更手続きについてですが、加入先の損害保険会社に相続発生で名義変更手続きが必要である旨を連絡をしてください。

たまに相続が関係すると保険会社に対しても注意しなければならないことがあるのではないかと気にする人がいます。

損害保険会社からすると単なる名義変更ですので、そんなに大げさなことではありません。

新たに所有者となった人を被保険者に名義変更を行うだけですので、この部分についてはそんなに気にする必要はありません。

敢えて補足すると積み立て型と掛け捨て型で必要な書類が変わります。

相続における名義変更での必要書類

積み立て型の火災保険の場合には、相続発生による名義変更には主に次の書類が必要です。

  • 被相続人の死亡が分かる書類(一般には除籍謄本)
  • 相続人本人の戸籍謄本
  • 各相続人の実印と印鑑証明
  • 遺産分割協議書
  • 火災保険契約内容変更届出書(保険会社指定の契約内容を変更する書類) など

なお、掛捨て型の火災保険であれば、一般的に一番下の火災保険契約内容変更届出書だけで済むケースもあります。

必要な書類は多少異なることがあるでしょうから、名義変更手続きをする際には契約先の損害保険会社に確認してください。

相続から名義変更前に災害や火事で全壊したら保険金は支払われる?

遺産分割協議などが遅れたり、その他個別の事情などで登記簿謄本上の所有者が名義変更できないケースがあります。

そうすると火災保険の名義変更も手続きできない状態が続きます。

災害や火事で物件が全壊・全焼するような状態になったとき、保険金の支払いはしないということはないでしょうが、スムーズに行われない可能性があります。

特に所有者が決まっていない場合には尚更です。

相続がすでに発生していて名義変更手続きに時間がかかりそうなら、事前に加入先の損害保険会社にどのようにすればいいか相談しておいてください。

事故が発生してから相談するよりも流れはスムーズです。

名義変更前に火事や災害で保険金が支払われたときの相続財産評価

ここまで相続が発生した場合、火災保険の契約は相続財産としてどうなるのか、名義変更手続きはどうするのかについてお話してきました。

但し、火災保険や地震保険では、契約そのものの相続財産価値ではなく火災保険金や地震保険金が支払われることがあります。

火事や自然災害の発生で物件が壊れてしまうと同時に、契約者・被保険者が亡くなってしまうことがあるからです。

保険金受取人は、原則として法定相続人となります。

保険金が支払われるときには遺産分割協議に基づいて手続きが行われます。

火災保険ではなく火災共済で相続が発生したら

火災保険ではなく火災共済で相続が発生したら

相続と火災保険を中心にお話してきましたが、なかには共済で火災共済の契約をしているケースもあるでしょう。

基本的な取り扱いは火災共済の場合であっても、ここまで解説した火災保険と同様です。

積み立て型だと名義変更の書類が色々でてくることはお話したとおりです。

都道府県民共済や全労済などは掛け捨てになりますが、JA共済の建物更生共済「むてきプラス」は積み立てというのは先に説明したとおりです。

まとめ

相続が発生したときに自宅や現預金などはともかく、火災保険の契約そのものは見落としがちです。

火災保険の契約で解約したら解約返戻金があるかどうかなどを基準に相続財産としての価値を考えると分かりやすいでしょう。

なお、相続と火災保険(及び地震保険)については、名義変更が必要なことと、その後「空き家」になるかどうかにも注意してください。

例えば遠方の実家で誰も住まないが、固定資産税の関係などで建物はそのままなどの場合、空き家の状態によって火災保険などを含めた保険の契約が難しくなることがあります。

空き家は比較的リスクが高いので、関連記事なども参考にして、その後どのようにしていくかも考えておいてください。

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ライター紹介 ライター一覧

平野 敦之

平野 敦之

ひらの あつし

平野FP事務所代表。(CFP ®・1級FP技能士・宅地建物取引士・2級DCプランナー・住宅ローンアドバイザー)。東京都出身。大学卒業後に証券会社、損害保険会社等で実務を経験した後1998年に独立。

・個人のライフプラン、お金の悩みやお困りごとのサポート。
・法人の経営者のお金の悩み、営業を支援。

ファイナンシャルプランナー歴20年以上。相談業務の他TVやラジオ、新聞、雑誌など直近の10年間で200回以上の取材を受ける。同業であるファイナンシャルプランナーに対しても情報提供の執筆や講演を行う。

講演・セミナー活動も大学での非常勤講師や国民生活センターや行政機関、大手企業や団体など幅広い実績を持つ。総合情報サイトAll Aboutにて2003年よりマネーガイドを務め、15年以上に渡り定期的にマネー情報の発信を実施。その他の媒体も含めてWEB上での執筆記事は600本以上。

「お金の当たり前を、当たり前に。」するために、現場の相談を中心業務と考え活動を続ける。

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