【店舗休業保険】お店の休業保険の基本と新型コロナウイルス
店舗休業保険は、事故や自然災害などで店が休業する事になった場合、その休業期間中の粗利益を補償する保険です。
店舗を借りていたり、所有していると建物や商品、設備什器などに火災保険をつけますが、これらのものが補償されるだけでは休業となった店の損失はカバーできません。
■この記事で学べること
【1】店舗休業保険とは?
【2】新型コロナウィルス感染症が原因の休業は対象?
【3】店舗休業保険の対象にならない事例とお店の補償の考え方
飲食店や小売店などいわゆるお店で加入する店舗休業保険についての基本をファイナンシャルプランナーが解説します。
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この記事のもくじ
店舗休業保険とは?
店舗休業保険とは?
店舗休業保険とは、事故や自然災害などで店が休業する事になった場合、その休業期間中の「粗利益」を補償する保険です。
火災保険では保険の対象となっている建物や商品、設備什器などについて契約した金額を上限に補償します。
そのため保険金を使って建物の修理や設備什器などの再購入費用にすることができます。しかしその間お店が休業することがありますので売上がありません。
個人事業主、自営業などには大変な状況です。
事業の維持にはコストがかかるので火災保険だけではお店のリスクを完全にはカバーできないことがあるのです。これを補償するのが店舗休業保険です。
単体の保険や火災保険にセットして加入したりします。事業用の保険には、火災保険にその事業固有の損害賠償をカバーする保険やこうした休業損失をセットにしている保険もあります。
店舗休業保険の補償範囲
一般的な火災保険で補償する内容を原因として、例えば下記のようなことが原因で損害が発生してお店が休業したときに補償します。
- 火災
- 落雷
- 破裂・爆発
- 風災・雹災・雪災
- 物体の落下・衝突・飛来
- 水濡れ
- 騒じょう、労働争議などの暴行破壊
- 盗難
- 隣接物件の事故
- 公共施設等の事故
- 食中毒、特定の感染症
下の3つを除いてほとんどは一般的な火災保険で補償します。つまり対象となっている建物などの修理を火災保険で、休業による粗利益を店舗休業保険でカバーするわけです。
店舗休業保険の保険金額の計算方法
店舗休業保険ではお店の粗利益を保障します。補償する保険金額の計算方法は1日あたりの粗利益の額以下で次のように設定します。
1日あたりの粗利益額=年間粗利益額 ÷ 年間営業(操業)日数
※粗利益=売上-商品仕入高・原材料費
このような方法で1日あたりの粗利益からいくらまで補償するかの(保険金額)の設定をします。
新型コロナウィルス感染症が原因の休業は対象?
店舗休業保険は新型コロナウイルス感染症の対象か?
日本では2020年から広まった新型コロナウイルスですが、店舗休業保険では残念ながら対象になっていません。
店舗休業保険の補償範囲のところの一番下に特定の感染症という項目がありました。
特定感染症とは、「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」に規定されている特定の疾病を指します。
新型コロナウイルスはここに含まれていません。つまり対象にならなかったわけですが、状況が変わってきました。
店舗休業保険や休業補償特約の新型コロナウイルスについて改定の動き
【2020年4月25日追記】
新型コロナウイルスは、上記のように感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律において「指定感染症」とされています。
店舗休業保険など特約を含めて休業関連の補償は、感染症を限定列挙しています。
将来、保険の補償対象となる一類から三類感染症のいずれかに指定される見通しのことや補償の要望などもあることから改定を進めています。
2020年4月24日にメガ損保3社がそれぞれリリースを出しています(随時内容が更新されているので小まめに確認してください。2021年になってからも更新されています)。
休業関連の補償については、三井住友海上のリリースに比較的詳細が掲載されています。
来店客や従業員が新型コロナウイルスになって休業した場合、一時金を支払うものです。現在契約があるものについては2020年2月1日に遡及して適用することを検討しています。
なお、既契約について追加保険料はないようです。
まだ確定ではなく金融庁とも最終調整しているようですが、該当する保険に加入している人は動向をチェックしてください。
【2021年5月27日追記】
店舗休業保険や事業用の火災保険に付帯する休業補償について、新型コロナウィルスを補償するかたちで改定等が実施されました。
参考までに大手3社のリンクは下記のとおりです。それぞれ補償や商品改定、企業向けの商品のところをみてください。
2021年になってから改定している損保もあります。
三井住友海上 新型コロナウイルス感染症に関するご案内
損保ジャパン 新型コロナウイルス感染症に関する商品・特別措置等のご案内
東京海上日動 新型コロナウイルス感染症に関する情報
新型コロナウイルス感染症に罹患した人(従業員や来店客など)が店舗や施設にいたことなどによって、病原体に汚染されて休業するかたちなどになった場合が対象です。
誤解されがちなところですが、いわゆる休業要請などによる休業や自主的な休業は対象にしていないので注意してください。
店舗休業保険の対象にならない事例とお店の補償の考え方
新型コロナウイルスに加えて保険金支払いの対象にならないいくつかの例やお店の補償についてみておきましょう。
店舗休業保険の対象外となる主な事由
店舗休業保険では主に次のようなものは対象外です。
- 故意または重大な過失
- 店舗休業保険における主な支払い事由の事故における紛失・盗難
- 万引きによる被害
- 地震または噴火、これらによる津波 など
火災などの時に保険の対象物を盗難されたり、万引きなどには適用されません。
記事の冒頭に災害という言葉を使いましたが、いわゆる地震保険で補償される「地震または噴火これらによる津波」は適用される災害から除外されます。
お店の補償の考え方
店舗といっても業種・業態によってさまざまなリスクがあります。
- 物の損害(建物や商品、設備什器など)
- 第三者に対する損害賠償
- 休業補償や従業員の補償 など
例えば飲食店なら食中毒などもリスクですし、飲食物の提供時に来店客にこぼして服を汚すということもあります。
休業損失もその一つです。
この記事では店舗休業保険を取り上げましたが、単純に休業補償というと自営業なら本人が病気になって働けないことも休業損失です。
人の身体にかかる部分と火災などの事故などにより物理的に休業になるケースがあります。
いずれにしてもその店舗のリスクを洗い出して必要なものをカバーしておくことが大切なのです。
まとめ
新型コロナウィルスによる営業自粛要請によって、休業補償というものにスポットがあたるかたちになりました。
店舗休業補償に限らず店舗にとって必要な補償をチェックして、肝心なときに役に立たないことのない保険設計をしてください。
保険だけでなく資金繰りなどであれば関連記事にある経営セーフティ共済なども検討してみてください。
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