【孤独死保険】大家型・入居者型の保険の比較とポイント
孤独死保険は孤独死や孤立死での損害をカバーする保険ですが、大家型と入居者型があります。
■この記事で学べること
【1】孤独死保険とは?
【2】孤独死の損害費用と保険金支払いの統計
【3】少額短期保険・損害保険会社の孤独死保険
【4】孤独死保険は必要か不要か?
【5】保険以外の孤独死対策
孤独死保険について、孤独死・孤立死の現状から保険比較の方法、保険以外の孤独死対策についてファイナンシャルプランナーが解説します。
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この記事のもくじ
孤独死保険とは?
孤独死保険とは?
孤独死保険とは孤独死が発生した際、それに伴う汚れの損害の「原状回復費用」「残置物処理費用」「家賃損失」などを補償する保険です。
もともと少額短期保険が売り出しはじめましたが、いまは損害保険会社でも取り扱いをはじめています。
「大家型」と「入居者型」の2つのタイプがあります。
孤独死保険の2つのタイプのプランとは?
孤独死保険は、大家が加入する家主型、借主である個人の入居者が家財保険と一緒に契約する入居者型があります。
少額短期保険では家主型の取り扱いは数社、入居者型は20社以上あるようです。
損害保険会社で、大家が加入する火災保険に特約で付帯するのが一般的です。
具体的に比較すると次のような違いがあります。
<少額短期保険が取り扱う孤独死保険の例>
家主型 | 入居者型 | |
保険種類 | 費用保険
(単独保険) |
家財保険
(特約) |
保険契約者 | 家主・管理会社 | 入居者型 |
保険の対象者(被保険者) | 家主・管理会社 | 入居者型 |
補償内容の概要 | ①遺品整理費用
②原状回復費用 ③家賃損失 |
①遺品整理費用
②原状回復費用 |
掛金の設定 | 商品による
・一戸室当たりの設定 ・家賃総額で算出 |
入居時に加入する家財保険の掛金に含む |
※出所:孤独死対策サミット配布資料より筆者作成
家主型あるいは入居者型いずれの場合にも、取り扱いの保険会社によって補償内容などに違いがあるので注意してください。
入居者型の場合には、通常家賃に関する補償はありません。また補償内容が必ずしも共通しているわけではありません。
もともと大家型から始まりましたが、最近は入居者型が多くなっています。
孤独死・孤立死にかかる大家のリスク
実際のマンションやアパートの大家からすると、次のようなリスクがあります。
- 部屋の汚れや消臭などをする現状回復費
- 亡くなった人の遺品整理費用
- 孤独死があった部屋、その周囲の部屋のその後の空室リスク
不動産投資をしている人は、少なからずこうしたリスクは存在するという認識を持つことが必要です。
厳密には孤独死などが起きることで風評被害も想定されます。
先ほどの統計のとおり高齢者の割合が高めなのは事実ですが、孤独死・孤立死している人の平均年齢は60歳前後です。
必ずしも高齢者に限らないという認識は持つべきでしょう。
また高齢者だと孤独死・孤立死がありそうだから部屋を貸しにくいうのも対策面から考えても少しズレている面があるのは否めないでしょう。
孤独死保険の主な補償内容
大家のための孤独死保険の主な補償内容は次のようになっています。
- 原状回復のための費用
- 残置物処理費用
- 家賃補償
これらのリスクにそれぞれ対応した補償内容になっています。
つまり発見が遅れた場合の汚れによる清掃や消臭による現状回復、亡くなった方の残置物の処理、事故発生による家賃保証になります
注意点としてはどの孤独死保険でも上記の3つの補償が必ずあるわけではないということです。また補償される金額の上限なども違いがあります。
孤独死・孤立死の後始末や消臭の費用はいくら?
先ほどの「一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会 第七回孤独死現状レポート」から孤独死・孤立死の際にかかる後始末や消臭の費用を確認します。
併せてどのくらいの保険金が支払われているかチェックしましょう。
遺品整理にかかるような残置物処理費用、汚損や消臭にかかる原状回復費用、そして家賃補償とわけてみていきます。
同様に第8回孤独死現状レポート(2024年1月26日開催 孤独死サミットにて発表)からです。
なお、この統計は第一回から第七回の孤独死現状レポートの累積です。
残置物処理費用(遺品整理)
平均損害額 | |
237,218円 | |
最大損害額 | 最小損害額 |
1,781,595円 | 1,080円 |
平均支払保険金 | |
236,196円 | |
最大支払保険金 | 最小支払保険金 |
990,000円 | 1,080円 |
遺品整理の費用もごみ屋敷のようになっていると費用がかさみがちです。
原状回復費用
平均損害額 | |
397,158円 | |
最大損害額 | 最小損害額 |
4,546,840円 | 5,200円 |
平均支払保険金 | |
312,098円 | |
最大支払保険金 | 最小支払保険金 |
3,000,000円 | 5,200円 |
孤独死が発生して発見が遅れると最も被害が大きくなるのが、消臭や清掃、虫の駆除などです。
保険金の最大支払い額が300万円なのは支払いの上限額だということでしょう。
平均の損害額が約33万円ですが、発生の時期や発見までの期間、孤独死した人の体格なども関係します。
家賃補償費用
平均支払保険金 | |
329,401円 |
残置物処理費用は正確には遺族が行う遺品整理とは違う意味合いでしょうが、大家の立場で必要な残置物処理費用と考えてください。
孤独死では夏場で発見が遅れた場合に被害が拡大しがちです。
最後に保険以外の孤独死対策にも触れますが、発生を防ぐことが一番の対策です。
孤独死保険を取り扱う少額短期保険・損害保険会社と保険比較の方法
ここから具体的に孤独死保険と取り扱う保険会社(少額短期保険、損害保険会社)を確認しましょう。
少額短期保険
もともと孤独死保険は少額短期保険が発売し始めたものです。そのうちのいくつかを紹介します。
家主型の主な孤独死保険
順不同で主な会社を取り上げます。
入居者型の孤独死保険
入居者型については数が多いので、少額短期保険業者の一覧をリンクしておきます。
入居者型は家財保険に孤独死に関連する補償を組み込んでいます。
ポイントとして入居者型の場合、「孤独死保険」という言葉を使っていないことが結構あるのです。
修理費用の項目の中に死亡による修理費用(死亡による損害の際の清掃・消臭・修理の費用と記載されているのが該当します)や遺品整理費用などと書いてあります。
賃貸物件のアパートやマンションでは、仲介する不動産屋さんが保険も取り扱うケースが多いでしょうから、不動産屋さんに確認してみてください。
一般社団法人少額短期保険 少額短期保険業者登録一覧
損害保険会社
少額短期保険の動きを受けて損保でも孤独死にかかる補償の発売をはじめています。
少額短期保険のように2つのプランの孤独死保険というよりは、損保では大家が加入するマンション・アパート物件の火災保険に特約を付帯するものがあります。
単独の保険ではないので特約で補償を付帯しているのが一般的です。
先ほどの少額短期保険でいうところの「家主型」に該当するケースです。
但し少額短期保険の家主型の孤独死保険は単独の保険、入居者型が賃貸の家財保険につける特約でした。
損害保険会社の場合は賃貸物件の大家・オーナーが加入する火災保険に特約として現状回復費用などをカバーする孤独死の補償をつけています。
なおこの際のポイントですが、損保の場合の特約では「孤独死保険」という言葉を使っていません。
会社によって違いはありますが、火災保険の「家主費用」などの名称で補償が付帯しています。
賃貸物件の大家の人は火災保険加入の際に確認してみてください。
少額短期保険の家主型と必ずしも補償内容が一致しているわけではない点も気をつけておきましょう。
孤独死保険はどう比較する?
ここまで見たように単独の保険として契約する(つまり孤独死保険だけあればよい)、特約として火災保険などに付帯するなどの方法があります。
このあたりは好みもあるでしょう。
少額短期保険が先行して発売していること、協会を通じて孤独死に対する活動もしているので、現状は実績はこちらの方があります。
孤独死保険を選ぶ際に比較しておきたいポイントと手順は次の通りです。
- 単独の保険か、火災保険(もしくは家財保険)に特約で付帯するか
- 原状回復、残置物処理、家賃補償のうちどこまで補償されるか?
- いくらまで補償されるか(上限額がある為)?
- 掛金負担はいくらか?
こうした手順で比較・検討してみてください。その上でこの後でお話する保険以外の対策を組み合わればよりベターです。
孤独死と孤立死の違いと定義とは?
「孤独死」と「孤立死」、いずれも使われる言葉ですが、実はそれぞれについて明確な定義はありません。
地域の行政ではこれらについて記載しているケースもあるようですが、国でも孤独死について明確に定義はしていません。
一般的に孤独死が主観的、孤立死が客観的な概念という違いになりますが、亡くなった人が「孤独」だったかどうかは本人にしか分からないところです。
こうした背景もあり明確な定義がなく、国や行政などでは客観的な概念である孤立死という言葉を使っているようです。
民間の保険では「孤独死保険」「孤独死」という言い回しが使われていますので、この記事でも孤独死と孤立死を特に区別せずに、以下は孤独死保険と記載します。
なおこの後、一般社団法人日本少額短期保険 孤独死対策委員会の孤独死現状レポートの統計を取り上げます。
このレポート内での孤独死の定義は、「自宅内で死亡した事実が死後判明に至った一人暮らしの人」としています。
孤独死と孤立死の実態
孤独死・孤立死をいうと高齢者が誰にも知られずひっそりと亡くなっているというイメージが強いでしょう。
「一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会」では、会員の少額短期保険業者から孤独死に関するデータを集めて統計にしています。
これは会員の会社で賃貸住宅の家財保険の取り扱いをしているところが多いことから可能なことです。
下記の孤独死現状レポートからもう少し実態を抜粋してみます。
なお、このレポートは第1回(2015年)からの累積の数字になっています。
以下この記事の統計はここからの出所になります。
孤独死の性別・人数・平均年齢
- 男性 5,600人 死亡時の平均年齢62.1歳
- 女性 1,127人 死亡時の平均年齢61.2歳
孤独死の人数は男性が多いこと(男女比率約83%、約17%)、平均寿命に比べて意外と年齢が若いのがわかります(60歳程度4)。
80代以上の高齢者が必ずしも一番多いわけではありません。
男女ともに平均年齢約61歳と孤独死は高齢者ばかりではないのです。
高齢者に満たない孤独死は半数にのぼります。次に年齢別の内訳です。
<男女別孤独死の死亡年齢の構成比>
男性 | 女性 | |
20代 | 4.4% | 7.9% |
30代 | 6.8% | 8.9% |
40代 | 10.2% | 11.4% |
50代 | 17.8% | 15.1% |
60代 | 30.9% | 20.0% |
70代 | 21.0% | 22.1% |
80代~ | 8.9% | 14.5% |
60代、70代が多いのですが、50代・40代も少ないわけではありません。20~30歳の若年層も一定数はいます。
現役世代(~59歳)が約40%ですから、決して高齢者が多いわけではないのです。
20-30代では男性よりも女性の方が多くなっています。
こうしたことからアパートやマンションなどの大家の立場からすると、所有している物件に高齢者の有無に関わらず孤独死・孤立死のリスクはあります。
また孤独死と言っても必ずしも高齢者だけに限らないというのはここまでの統計のとおりです。
孤独死保険は必要?不要?
孤独死保険も保険ですから、必要性について考える大家もいるでしょう。
何よりもまずはリスクを認識することです。
データを見て頂いたように孤独死・孤立死は必ずしも高齢者だけに起こっているわけではありません。
その上で事故発生時にかかる費用と負担する掛金から検討してみましょう。
少額短期保険が先行しましたが、その後大手損保も入ってきたのでニーズがあると判断したのでしょう。
孤独死や孤立死というのも個人のみで対処できるわけではありませんし、地域や行政などとの何らかの連携も必要でしょう。
一人暮らしの世帯が増える中でリスク対策の一つの選択肢として知っておいてください。
孤独死対策は孤独死保険以外にもある
孤独死保険に限った話ではありませんが、保険は損害をカバーする最終的な手段です。
孤独死が起きてしまったらできることは限られます。孤独死保険は孤独死発生後の対策です。
「契約前」「入居中」「孤独死発生後」と段階を区切って孤独死対策を考えてください。
そもそも人が一番多くなくなる場所は病院です。
事故や災害、犯罪などで亡くなる人が多い中で、自宅で亡くなってしまうことは必ずしも不幸なことではありません。
しかし発見が遅れると周囲に被害が拡大していきますから、さまざまな対策を考えておく必要があるのです。
孤独死保険への加入は対策の一つではありますが、大切なことは複数の方法を繋げてなるべく孤独死を防ぎできなかったときに金銭的な備えとして孤独死保険を検討しておきましょう。
孤独死対策としての国や行政の動き
孤独死・孤立死が社会問題化していることはすでにお話しましたが、国や自治体も含めてさまざまな動きがでています。
2023年1月13日に孤独死対策サミットがオンライン開催されました(筆者も参加)。
この中で紹介された行政の取り組みの一部をご紹介します。
孤独死保険だけでなく、契約時に取り決めをしておくことも非常に重要なことです。
高齢者に限らず単身入居者を受け入れる際、賃貸物件の大家・オーナーであれば下記のことについて目を通しておくようにしてください。
孤独死保険以外の孤独死対策
この分野については色々な業者が参入していきています。
見守り確認システムなどが中心になりますが、安否確認のコールをする・使用電力・水道などから安否確認するなどさまざまなパターンがあります。
なかには孤独死保険の加入を連動させているものもあります。
また行政の取り組みのところにリンクを貼りましたが、入居時の契約で取り決めをしておくことも大切です。
こうした安否確認に加えて、行政単位での見守りそして最後に孤独死保険などの方法も検討してみてください。
コスト面も考慮しながら孤独死保険も含めて複数の孤独死対策を掛け合わせて対応することが大切です。
まとめ
【孤独死保険】大家型・入居者型の保険の比較とポイント、についていかがでしたか。
核家族化が進む中でこの問題はさらに増加していくでしょう。マンション・アパートの大家はこうしたリスクを認識することが必要です。
資産の維持・向上のために孤独死・孤立死対策の一つとして孤独死保険の加入も選択肢の一つとして考えていきましょう。
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