【雑損控除】確定申告での計算方法と必要書類のポイント5選<2024>
雑損控除は地震や台風などの自然災害や盗難等で損害があった際、その年の所得から所定の金額が控除できる制度です。
■この記事で学べること
【1】雑損控除とは?
【2】雑損控除の計算方法、必要書類
【3】確定申告と年末調整、雑損控除
【4】間違えやすい雑損控除のポイント
【5】住民税と雑損控除
自分の資産に損害があったときに利用する雑損控除2024年(令和6年)についてポイント5選でまとめます。
この記事のもくじ
雑損控除とは?
最初に雑損控除の基礎知識について確認していきましょう。
雑損控除とは?
雑損控除は、自分の資産(自宅や家財、車など)に火災や地震、その他台風などの自然災害・盗難等で損害を受けた際に適用することのできる所得控除の一つです。
所得控除は生命保険料控除や医療費控除などが該当しますが、位置づけはこれらと同様になります。
但し、雑損控除を優先して適用します。
会社員の人などは年末調整で雑損控除の手続きができませんので、確定申告で雑損控除の手続きする必要があります。
雑損控除が適用されるための要件について、対象資産や損害の原因は次のようになります。
対象になる人や資産
損害を受けた資産の所有者が次のいずれかが対象です。
- 本人(納税者)
- 本人と同一生計の配偶者やその他の親族でその年の総所得金額等が48万円以下の者(令和元年分以前は38万円以下)。
- 棚卸資産若しくは事業用固定資産等または生活に通常必要でない資産に該当しない資産
一般的には建物(及び車庫などの付属施設)や家財、自動車などが主なものになります。
その他親族で所得金額48万円以下というのは、その人の扶養の範囲に入っている人です。
仮に所得が48万円を超えているなら、その人が(親族等)、自分で雑損控除を適用するということになります。
ちなみに生活に通常必要でない資産というのは、例えば不動産関係だと別荘などの娯楽や保養の要素があるものが該当します。
趣味という点ではゴルフ会員権なども同様です。
他にも家財に関連するものは貴金属や書画、骨董など1個又は1組の価額が30万円超のものなどをいいますので、雑損控除には含まれません。
対象となる損害の原因
資産に損害があればすべて雑損控除の対象になるわけではありません。具体的には次の原因によるものが対象です。
- 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
- 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
- 害虫などの生物による異常な災害
- 盗難
- 横領
このように見ると火災保険や地震保険で対象となる自然災害や事故(火災・ガス爆発)、盗難などが対象になっていると覚えておくといいでしょう。
近年は台風や豪雨などによる風災や水害なども多いですがいずれも対象になります。
なお盗難の他に横領も対象になりますが、詐欺や恐喝では雑損控除の適用は不可です。
雑損控除と災害減免法の違いといずれかの選択
所得が1,000万円以下の人が資産に損害を受けた場合、雑損控除の他に「災害減免法」という選択肢があります。
災害等によって住宅などに損害があり、その損害額(保険金などにより補てんされる金額を除く)が時価の2分の1以上の場合に適用されます。
具体的な軽減額は次の表のようになります。
(災害減免法)所得金額の合計額 軽減又は免除される所得税の額
所得金額の合計額 | 軽減又は免除される所得税の額 |
500万円以下 | 所得税の額の全額 |
500万円を超750万円以下 | 所得税の額の2分の1 |
750万円を超1000万円以下 | 所得税の額の4分の1 |
※災害減免法では盗難や横領は対象になりません。
- その人の所得の金額
- 所得は1,000万円以下かどうか
- 損害の原因と損害額(時価の50%以上か否か)
- 両方条件を満たしている場合、有利な方を選択
確定申告のときには雑損控除と災害減免法のどちらを選ぶかは上記の流れで考えていくといいでしょう。
雑損控除の計算方法と繰越、必要書類、証明書は?
次に雑損控除の計算方法と必要書類・添付書類等について確認していきましょう。
雑損控除の計算方法
雑損控除は次の計算式を使います。この2つのうちいずれか多い方の金額を雑損控除に利用します。
- (差引損失額)-(総所得金額等)×10%
- (差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
※ 差引損失額=損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出の金額-保険金などにより補てんされる金額
差引損失額はこのように損害の金額に保険(火災保険・地震保険等)でプラスになる分は差引して計算します。
※ 災害関連支出の金額とは、災害により損害のでた住宅などの取壊しや除去するための支出金額などをいいます。
ちょっと計算関係は分かりにくいかもしれませんが、被害があった資産の時価(マイナス)から受け取った保険金などの金額(プラス)を差し引きします。
この金額が所得の10%超、あるいは災害関連の支出が5万円を超えれば対象となるようなイメージです。
雑損控除の計算例と書き方
雑損控除の書き方と申告書の書き方については国税庁のサイトがわかりやすいのでここを参考にしてください。
所属税の計算の流れの雑損控除の部分になります。
雑損控除の損失の繰越と年数
損失額が大きくてその年の所得金額から引ききれない場合、その残りを翌年以後も繰り越して所得金額から控除できます。
原則、雑損控除の繰り越し控除は3年間が限度です。
また所得控除は生命保険料控除などを含めて14種類ありますが、その中でも雑損控除は他の所得控除より先に控除するルールです。
雑損控除で控除しきれずに繰越する場合、確定申告書の第4表の損失の申告書が必要になります。
税務署に持ち込みならそこで教えてくれますし、郵送やe-taxなどの場合には自分で作成が必要です。
雑損控除の必要書類・添付書類(領収書等)
確定申告の雑損控除に必要な書類を確認しておきましょう。
確定申告書などの基本的な書類がある前提で雑損控除に必要なものを挙げておきます。
- 災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収書
- その災害を証明する書類(罹災証明、盗難届など)
確定申告と年末調整、雑損控除
雑損控除を適用する為には、確定申告が必須になります。会社員や公務員など普段は年末調整で納税や還付が済んでいる人も同様です。
医療費控除や住宅ローン控除(初年度)などと同様です。雑損控除以外に他にどのような控除が利用できるかも合せてチェックしてください。
間違えやすい雑損控除の対象とは?
雑損控除の対象か否かについてもう少し捕捉しておきます。原則は最初解説した内容の損害原因です。
シロアリ
対象となる損害の原因の3番目に「害虫などの生物による異常な災害」というものがありました。実はここにシロアリの駆除費用が入ります。
車やバイクの盗難、車上荒らし、車庫
自動車やバイクなども対象になりますが、判断基準は「通常の社会生活を営むのに必要とされる資産」であるかということです。
国税不服審判所の裁決事例集には、オートバイ(400cc)の盗難になる損失控除の対象にならないとした事例があります。
内容をみると購入から盗難までの間でほとんど使用されていないことなどから否認されたようです。
実態に合わせて判断されると考えておいてください。
通常利用する生活に必要な資産なら、車両盗難や車上荒らしなどによる修理費なども雑損控除の対象です。
車両そのものと違いますが、車庫やカーポートでも強風や大雪、雹、地震などで損害があった場合、雑損控除の計算で所定の金額になればこちらも含まれます。
家財・現金盗難
家財などの場合は冒頭に解説したように1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・書画、骨董などは対象になりません。
現金なども対象になりますが、盗難の場合には警察の届出がどうなっているかが重要です。
何が、どれだけ、盗難にあったのかきちんと届け出ておきましょう。届出なども必要です。
住民税の雑損控除での取扱い
雑損控除については、住民税にも影響します。所得税と同じような計算で税金を計算しますが、税率などが所得税とは違うのでその部分で差異はあります。
所得税の確定申告で雑損控除を行うと、税務署から地域の行政にデータがまわるのでこちらで何かするということはありません。
それが反映されたかたちで住民税が計算されます。
雑損控除の期限
わざわざ雑損控除をするということは、還付申告(お金が戻される)ということでしょう。還付申告の提出期限は5年間まで遡って行うことが可能です。
原則はその年の所得に関する所得控除は翌年の確定申告でやるようにしてください。
なお、すでに解説したように2019年以前で還付申告をする際には総所得金額38万円が基準となるので注意してください。
まとめ
雑損控除の利用を考えるということは、何かの被害を受けたということでもあります。
特に地震災害の場合、地震保険では必ずしも被害額の全額が補償されるわけではありません。
また確定申告をするとなると、被害にあったタイミング次第で数か月から1年近く手続きが先になります。
頻繁にあることではないので忘れがちですが、地震や台風、水害などの自然災害が増えていますから、雑損控除のような税制措置を忘れずに利用してください。
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