相続税の路線価図の見方と計算方法、路線価と一物四価・五価との違いとは?
相続税の路線価は土地の価格の一つです。路線価図にもとづいてその土地の価格を計算しますが、路線価図の見方が分からなければなりません。
土地の相続税などにおける評価額の基本中の基本で、国税庁から毎年7月に発表されます。
■この記事で学べること
【1】相続税の路線価とは?土地の価格と一物四価・一物五価
【2】路線価図の分かりやすい見方
【3】路線価の計算方法
土地を所有している場合に必須となる相続税の路線価と路線価図についてその見方や計算方法について解説します。
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この記事のもくじ
路線価・路線価図とは?
分かりやすく説明すると路線価とは?
路線価は相続税や贈与税を計算するときに適用される基準となる価格のことで、路線(道路)に面している土地(宅地という)の1平方メートルあたりの価格をいいます。
その名称の通り路線(道路)に価格がついているのです。上の画像(路線価図)に道路に数字が入っていますがこれが路線価です。
路線価はこれが定められている地域の土地等を評価する場合に使います。
但し路線価が定められていない地域もあるので、その際には市区町村の評価倍率表というものを使って計算します。
相続税の路線価図とは?
路線価を実際の地図に反映させたものが路線価図です。路線価は国税庁から毎年7月に発表されます。
路線価図から自分の知りたい土地の路線価を知ることができ、相続税や贈与税などにおける評価額を知ることができます。
なお、単純な土地の売買における価格と路線価とはまったく別なものです。
土地の売買などにはまた違う基準を使います。実は土地には異なる価格のつけ方が複数あるのです。
土地の価格のつけ方は路線価だけではない(一物四価・一物五価)
実は土地には路線価を含めた4つないし5つの価格がついています。これを一物四価または一物五価といいます。
具体的には相続税の路線価の他に実勢価格・公示価格・基準時価・路線価・固定資産税評価額があります。
土地や建物を所有している人は、固定資産税評価額は馴染みのあるでしょう。路線価図とどのように違うか個別に確認しておきましょう。
実勢価格
実勢価格は土地が市場で取り引き・売買されるときに使われる価格のことでいわゆる時価です。実際に売買する際にはこの実勢価格を使って取引されています。
土地の価格は日々変わりますので、高い土地取引もあれば安い取引もあります。
個別にはその土地の形状(例えば不形成地など)などのその取引に応じた事情によって実勢価格から離れた金額で売買されるケースもあります。
その観点から実勢価格はあくまで参考価格ということになります。
公示価格(公示地価)
公示価格(公示地価)は、地価公示法に基づいて国土交通省が毎年公表する価格で、一般の土地取引の指標とされています。
公示地価は国土交通省により公表される「標準地」の価格を指します。全国から、地域の地価水準を代表する標準地を約3万数千地点、選定します。
その選定地に対し、不動産鑑定士などが毎年1月1日時点での地価を評価したものを、土地鑑定委員会が判定し毎年3月下旬に公表します。
公示地価は「住宅」「商業」「工業」と用途ごとに分かれ、標準地の1平方メートルあたりの単価で発表されます。
公示地価は一般の土地取引の指標となります。公共用地の売買価格の算定基準にも利用されます。
また、標準地には変化がなく同じ場所を利用し公示されるため、地価の変動がわかりやすいです。
公示価格は、実勢価格の90%程度が目安とされています。
基準時価
国土利用計画法に基づいて都道府県が毎年公表するもので、各都道府県により、毎年7月1日時点の価格を9月20日頃に発表します。
基準地価は土地取引の指標で土地の価格を知りたい、売却をしたいときの参考になります。公示価格を補完する意味合いが強い価格です。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、土地に固定資産税などを課税するための基準となるものです。土地の固定資産税評価額は公示価格の70%が目安とされています。
固定資産税評価額は、市町村により3年ごとに評価の変更が行われており、固定資産税台帳に土地・家屋の課税評価を登録しています。
この登録された価格が固定資産税評価額です。
その名称のとおり固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税など不動産にかかる税金の基準として使われています。
これらに路線価を加えたものが一物五価です。
一物四価と呼ばれるときはここから基準時価を外した4つを指します。
一つのものに異なる価格が5つも付くのは土地の特殊性ならではというところでしょう。
路線価図の見方
路線価は路線(道路)に価格がついているとお話ししたました。
そのため路線価図には路線(道路)に金額が入っており、またところどころにアルファベットが記載されています。
この意味が分からないと路線価図は分かりませんので、ここでは路線価図の見方について確認していきます。
路線価図を調べたい場合は、国税庁のサイトで確認できます。
過去7年前までは上記で確認できますので、このページの上にある年次を選んで確認してください。
路線価図の見方の基本ルール
路線価図の見方の基本となる3つのルールをチェックしてみましょう。
- 路線価図に記載されている価格は千円単位、1平米あたりの金額。
- A~Gなどのアルファベットの記載は借地権割合。
- ○や□などで路線価の数字が囲まれているいるのは地区区分の違い。この違いによりその土地の補正率などが変わる。
路線価図の借家権割合
路線価図における借家権割合はアルファベットの区分によって下記のように決められています。
記号 | 借地権割合 |
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
路線価図における地区区分
地区区分の違いは下記のように路線価図に記載されています。
細かい地区区分は分からなくていいので、このように記載されていると覚えてください。
路線価図の見方の具体例
ここまでのことを踏まえて路線数について具体的に例を使ってみていきましょう。上記が路線価図のサンプルです。
路線価図を使って見方を確認
ここでは日本一路線価が高いと言われている東京都中央区銀座四丁目交差点付近を例にみてみます。赤字で①~④と番号を振ってあるところをみてください。
⑤はこの後で使います。
①30というのは平成30年という意味でどの年の路線価図かわかります。
国税庁のサイトでは過去7年分まで閲覧できます。相続の発生年によって使用する路線価図が違いますので注意してください。
少し見にくいですがその下の18008というのはページです。
④とリンクしているので確認してください。普通の地図と同じ感覚です。
②前の項目で解説した地区区分の違いが各路線価図のページの上段にあります。③同様に路線価図の借家権割合です。⑤はこの後例で使用します。
路線価図の見方の具体例
先ほどの⑤の破線部分の拡大がこの図です。さらに中央からやや左を赤い破線で囲った箇所が日本で最も路線価が高いといわれる銀座四丁目交差点付近です。
上下左右をみると同じ価額になっているところがあるのが分かるでしょう。
破線で囲った箇所の数字は「44,320A」とあります。
先ほど数字は千円単位と説明しましたので、1平方メートルあたりの路線価が44,320,000円で借地権割合が90%というようにみます。
なお、44,320Aという数字が楕円で囲まれていますが、よく見ると楕円の右側に薄く斜線が入っています。
路線価図ではこの数字を囲っている楕円などに斜線や黒塗りが入っていることがありますがその場合のルールは以下のとおりです。
- 黒塗りの場合、その地区区分は黒塗り側の路線の道路沿いのみ該当
- 斜線の場合、その地区区分は斜線側の路線には該当しない
- 白抜きの場合、その地区区分はその路線全域に該当
例の場合には、右側のところにこの地区区分は該当しないとみます。
路線価の計算方法
それではこれを踏まえた上で路線価の計算方法を具体的にみていきましょう(出典:国税庁)。
一路線に面する宅地
最初に一般的な一つの道路に土地が接しているケースの計算方法です。
■自用地(※)の価額
300,000円(路線価)×0.97(奥行距離35mに応ずる奥行価格補正率(※))= 291,000円(1平方メートル当たりの価額)
291,000円(1平方メートル当たりの価額)×700平方メートル(地積)=203,700,000円(自用地の価額)
※自用地とは自分で自由に使える利用制限のない土地(他人に権利のない土地)のことです。借地権があるなどなど自用地以外の宅地は、はじめに自用地として評価、その後に調整をして評価。
※土地の一面が道路(路線)に面しているとき、路線価に奥行の距離に応じて定められた乗率を使って評価額を算出するのが奥行価格補正率
■借地権の価額
203,700,000円(上記の自用地の価額)×70%(借地権割合)= 142,590,000円(借地権の価額)
二路線に面する宅地
実際の土地はこのように角地になっていたり、前後に路線価があったり、3方向に路線価が定められているケースなどさまざまです。
ここでは二路線に面する場合をみていきます。
■自用地の価額
300,000円(正面路線価)×0.97(奥行距離35mに応ずる奥行価格補正率)=291,000円(A)
291,000円(A)+(200,000円(側方路線価)×1.00(奥行距離20mに応ずる奥行価格補正率)×0.08(側方路線影響加算率))=307,000円(1平方メートル当たりの価額)
307,000円(1平方メートル当たりの価額)×700平方メートル (地積)=214,900,000円(自用地の価額)
■借地権の価額
214,900,000円(上記の自用地の価額)×70%(借地権割合)=150,430,000円(借地権の価額)
このように二路線に面している場合は少し計算が複雑です。
三路線の場合などでも一定のルールに基づいて路線ごとに計算したり、補正を掛けて計算していくと覚えておきましょう。
計算は複雑に見えますがルールが分かるとそうでもありません。
まとめ
このように土地には一物四価のように複数の価額設定があります。
路線価図も誰でも閲覧可能ですから見方さえ分かれば相続などする宅地の評価額を計算することも可能です。
相続で財産を遺す人、遺される人いずれの場合でも相続税などがかかりそうか土地の評価額などはこのようにみてください。
細かいことや複雑なことは専門家任せでいいでしょうが、自分である程度確認してみることも大切なことです。
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