予定納税とは?所得税・法人税・消費税の関係と減額申請から還付まで解説
予定納税は前年に一定以上の納税がある場合、予め前払いで仮に納税することを言います。
■この記事で学べること
【1】予定納税とは?
【2】予定納税と法人税・所得税・消費税の関係
【3】予定納税基準額の計算方法、減額申請制度
【4】予定納税とクレジットカード払い、還付金
【5】予定納税と延滞税、納税資金の管理
これらを踏まえて個人や法人に関係ある予定納税とは?についてのあれこれをまとめます。
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この記事のもくじ
予定納税・予定納税基準額とは?
予定納税とは(個人・所得税)
予定納税は所得税の一部を確定申告よりも前の時期に前払いで納付する制度です。
具体的には毎年5/15現在、前年の分の所得金額や税金などをもとにして計算した金額が15万円以上であるときに該当します。
この金額を「予定納税基準額」と言います。
確定申告のときにその年の所得税を支払うのはそれなりに大変なのでそれを考慮する、国からすれば前年このくらいあったから、今年も同じくらいはあるだろうという意味合いもあります。
これらを含めて前年をベースに概算で先払いで納税するわけです。
もちろん確定申告の時に差額がでますから税金が不足していれば支払う必要がありますし多すぎれば還付されます。
予定納税額がわからない場合
確定申告の際、予定納税額がわからないというケースがあるでしょう。
その場合、例年6月頃に税務署から送付される予定納税額通知書に予定納税額が記載されています。
なお、e-Taxを利用している場合、e-Taxログイン後にあるメッセージボックスの申告のお知らせを見てください。
申告のお知らせは、予定納税額等の申告書の作成に必要な情報を通知してくれるものです。
予定納税とは(法人税・消費税)
法人税・消費税の場合には予定納税とは言いません。これらの場合は「中間申告」といいます。
ですので予定納税とは別に考えてください。
法人税
法人税は、事業年度が6ヶ月を超える場合に原則事業年度開始の日以後6ヵ月を経過した日から2ヶ月以内に中間申告が必要です(確定した法人税が20万円以下のなら不要)。
- 中間申告には以下の2つの方法があります。
- 前年度税額の半額を申告
6ヶ月の期間を1事業年度として仮決算を行い期限までに中間申告
法人の場合には、顧問税理士などに相談してください。
消費税
消費税の場合にも中間申告の方法は2つあります。
- 直前の課税期間の確定消費税の税額による中間申告(48万円以下は不要)
- 仮決算に基づく中間申告
15万円以上になるかの予定納税基準額の計算方法
それでは予定納税基準額というのはどのように計算するか確認しておきましょう。
本来の規定を書くと表現が細かいので簡略的に記載します。
- 前年分の所得金額で、山林所得、退職所得等の分離課税の所得及び譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得といった所得金額を除外
- 災害減免法(災害等で被災したときの税の減免制度)の適用は受けていない
所得税の金額から源泉徴収を控除して計算した金額とこの金額の復興特別所得税額の合計が予定納税基準額です。
シンプルに考えるなら、これらが15万円以上なら予定納税に該当します。
予定納税の時期はいつからいつまで?
予定納税の時期は2回に分かれていて、それぞれ次の時期に予定納税基準額の1/3を納めます。
- 07月01日から07月31日まで(第1期)
- 11月01日から11月30日まで(第2期)
仮に予定納税の対象となった場合、予定納税する金額が税務署長よりその年の6月15日までに書面で通知されます。
毎年予定納税している人にはいつものことですが、はじめての人には、所得税の確定申告を終えて数ヶ月後には通知される流れになります。
資金繰りの関係もあるでしょうからこの全体の流れは覚えておいてください。
減額申請制度と予定納税
予定納税の減額申請とは?
減額申請とは予定納税に該当している人が、業績不振や廃業・休業などの理由で予定納税基準額に満たないと見込まれる際に予定納税額の減額をする手続きです。
業績不振で資金繰りが厳しいときに、前年の所得分で税金の先払いを求められても困ります。
個別の状況に応じる制度なわけです。
減額申請の内容と要件
- 06/30の現況による申告納税見積額が予定納税額の計算の基礎となった予定納税基準額に満たないと見込まれる:第1期分および第2期分の減額
- 10/31の現況による申告納税見積額が既に受けている減額の承認に係る申告納税見積額に満たないと見込まれる:第2期分の減額
誰でも予定納税の減額申請ができるわけではありません。主な要件は挙げてみます。
- 廃業や休業、失業をした
- 業況不振などで、本年分の所得が前年分の所得よりも明らかに少なくなると見込まれる
- 災害や盗難、横領により事業用資産や山林に損害を受けた
その他、雑損控除や医療費控除、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、寄附金控除など各種控除制度が新たに対象になったり、金額が増額した場合には予定納税額の減額申請ができるケースがあります。
減額申請の提出時期と方法
2つある予定納税にかかる減額申請の時期は次のとおりです。
- 第1期分及び第2期分の減額申請:7/1から7/15までに提出。
- 第2期分のみの減額申請及び特別農業所得者の減額申請:11/1から11/15までに提出
手続き方法については申請書を作成して、所轄の税務署に持参または郵送にて提出します。
申請書の他の添付書類については申告納税見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類を1部の提出が必要です。
平成30年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書 ←記入方法も一緒にあります。
予定納税とクレジットカード払い
納税とクレジットカード払い
所得税や法人税、消費税、相続税などの国税についてこれまで振替納税(簡単にいうと指定銀行口座での決済)だったものが、クレジットカード払いが可能になっています。
気をつけておくことは振替納税と違い一度登録すればOKというわけにはいかないので都度手続きが必要だということです。
納税をクレジットカード払いすると本当にお得?
クレジットカード払いできることで、大きなメリットは後払いできるということでしょう。
決済だけ期日までに確実に行う必要がありますが、それをしておけば後はカード指定の日付で決済になります。
カードを使うということは、ポイントを当てにしている人も多いでしょうが気をつけておくことがあります。
具体的にはクレジットカード払いすることでの決済手数料ですが、次のようにコストがかかります。
- 納付税額1円~10,000円 決済手数料83円
- 納付税額10,001円~20,000円 決済手数料167円
- 納付税額20,001円~30,000円 決済手数料250円
- 納付税額30,001円~40,000円 決済手数料334円
- 納付税額40,001円~50,000円 決済手数料418円
※以降、10,000円を超えるごとに決済手数料が加算
このことから0.83%と単純に勘違いしている人もいるようですが、納付税額に「幅」があるので必ずしも0.83%ではありません。
これはその幅の一番高い納付税額の場合です。
例えば30,000円なら250円で0.83%ですが、同じ250円でも納付税額が20,001円なら1.249%になります。
税額が2万円とか5万円ちょうどになることの方が少ないので、0.83%のコストとだけ覚えておくと損をします。
クレジットカードのポイントを気にしている人は還元率をみているでしょうが、実際の納付税額とカードの還元率を見て判断してください。
予定納税の還付
予定納税は前年の納税にもとづいてのものですから、あくまで仮で予定して行うものです。
これを確定申告で精算するかたちになりますから、払いすぎているものがあれば当然還付されます。
所得が増えているかどうかも関係してきますが、新たに控除できるものが増えたものがあれば還付される可能性が高くなります。
通常の確定申告同様に確定申告の期限ぎりぎりにいくと還付の時期も遅くなります。
還付が4月にかかると2ヶ月後には次の予定納税の通知がくる時期ですのでうまくまわしてください。
予定納税しない場合の延滞税と資金管理
予定納税は、覚えていないといきなり来るので事業をしている人は資金繰りなどで困ることもあります。
誰に限らず予定していなかったお金の支払いがでたら支払いが厳しいですのは当然です。
予定納税をしないと延滞税が取られる
予定と言っても納税です。先払いしているものに延滞税が取られるのは何となく納得いきませんが、手続きしないと延滞税がかかりますから注意してください。
予定納税のための資金管理
最も困るのがはじめて予定納税をするときでしょう。確定申告終わって数ヶ月後に予定納税がやってきます。
一度済ませてしまえば翌年以降は何となくわかりますが、状況によっては減額申請も考えてください。
延滞税などはペナルティがないと誰もこんな面倒くさいことはしないでしょうから仕方がないというところでしょうか。
遅かれ早かれ支払うものですからさっさと済ませてしまいましょう。
まとめ
予定納税とは?所得税・法人税・消費税の関係と減額申請から還付まで解説、についていかがでしたか。
- 予定納税は、前年の分の所得金額や税金などをもとにして計算した金額が15万円以上が対象
- 予定納税の時期は7月と11月
- 法人税や消費税の中間申告と区別する
- 予定納税しないと延滞税がかかる。資金繰りにも注意
これらのポイントを押さえておきましょう。
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