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新旧・生命保険料控除(確定申告・年末調整)の上限と計算のポイント

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生命保険料控除は、改正によって2012年1月以降の保険契約かどうかで、新旧の生命保険料控除の上限額や計算が異なります。

■この記事で学べること

【1】生命保険料控除とは?

【2】新生命保険料控除と旧生命保険料控除

【3】新旧控除が混在の場合の上限と計算

【4】確定申告や年末調整の生命保険料控除証明書の見方や再発行

【5】生命保険料控除の改正動向

契約者本人だけでなく、配偶者や子供などの生命保険(共済含む)に加入する人に関係する生命保険料控除上限や計算方法、注意点について(2023年-2024年の年末調整・確定申告)解説します。

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この記事のもくじ

生命保険料控除とは?(種類や対象商品、対象者、要件)

生命保険料控除とは?(種類や対象商品、対象者、要件)2023年(令和5年)~2024年(令和6年)

生命保険料控除とは、わかりやすく言うと契約している生命保険等の保険料負担に応じて、一定金額がその年の所得から差し引かれる所得控除の一つです。

生命保険料が控除(所得から差し引かれる)されることで所得が下がるため、結果として所得税、住民税の負担が軽減されるので税制上有利になります。

年末調整や確定申告で申請します。

生命保険料控除の改正があり、新旧の生命保険料控除が両方とも存在しています。生命保険料控除は全部で次の3種類があります。

  • 一般の生命保険料控除
  • 介護医療保険料控除
  • 個人年金保険料控除

一般生命保険料控除

死亡や生存にかかる生命保険(定期保険や収入保障保険、終身保険など)や共済の契約などが対象です。

介護医療保険料控除

病気などにより保険金が支払われる保険のうち、医療費の支払事由について、保険金等が支払われる保険契約(医療保険やがん保険など)、共済契約が対象です。

なお少額短期保険についての医療保険等の契約は介護医療保険料控除の対象ではありませんので注意してください。

個人年金保険料控除

年金(退職年金を除く)を受け取る保険契約等の契約では個人年金保険の契約が該当します。但し下記の要件を満たしていることが必要です。

  • 年金の受取人は、保険料もしくは掛金の払込みをする者、又はその配偶者となっている契約。
  • 保険料等(掛金)は、年金の支払を受けるまでに10年以上の期間にわたって定期に支払う契約。
  • 年金の支払は、年金受取人の年齢が原則として満60歳になってから支払うとされている10年以上の定期又は終身の年金。

生命保険料控除は新制度では3種類、改定前の旧制度では2種類です。

2012年1月以降、新旧2つの一般の生命保険料控除

新生命保険料控除、旧生命保険料控除2023年(令和5年)~2024年(令和6年)

契約期間が長期にわたり生命保険等の契約では、改正があっても改正前の契約はそのときのルールで所得控除の上限や計算方法が決められます。

また改正後に新たに保険契約に加入すると新旧の制度が混在するかたちになるため分かりにくくなります。

具体的にみてみましょう。

新生命保険料控除の上限と計算、所得税・住民税(2012年1月1日以降の契約)

2012年(平成24年)1月1日以降に契約した保険契約等による生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の控除の上限と計算は、それぞれ次の表の通りになります。

所得税
年間の支払い保険料等 保険料控除額
20,000円以下 支払保険料等全額
20,000円超40,000円以下 支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超80,000円以下 支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円
個人住民税
年間の支払い保険料等 保険料控除額
12,000円以下 支払保険料等全額
12,000円超32,000円以下 支払保険料等×1/2+6,000円
32,000円超56,000円以下 支払保険料等×1/4+14,000円
56,000円超 一律28,000円

一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除を3つで所得税は最高12万円(1控除あたり最高4万円)です。

住民税は最高7万円(1控除あたり最高2.8万円)所得控除されます。

旧生命保険料控除の上限と計算、所得税・住民税(2011年12月31日以前の契約)

2011年(平成24年)12月31日以前に契約した保険契約等による生命保険料、個人年金保険料の控除の上限と計算は、それぞれ次の表の通りになります。

所得税
年間の支払い保険料等 保険料控除額
25,000円以下 支払保険料等全額
25,000円超50,000円以下 支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超100,000円以下 支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超 一律50,000円
個人住民税
年間の支払い保険料等 保険料控除額
15,000円以下 支払保険料等全額
15,000円超40,000円以下 支払保険料等×1/2+7,500円
40,000円超70,000円以下 支払保険料等×1/4+17,500円
70,000円超 一律35,000円

一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の2つで所得税は最高10万円、住民税は最高7万円が所得控除されます。

なお旧制度では医療保険など第三分野の契約は一般生命保険料控除の対象です。

なお、更新タイプの定期保険などで、例えば10年で契約が終了してそのまま自動更新する生命保険があります。

この場合更新前の契約が旧制度であっても更新後の契約が2012年(平成24年)1月1日以降なら、新制度に変わりますので注意してください。

※生命保険料控除の対象となる保険料(共済掛金)等とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額のことです。

新旧の生命保険料控除が混在しているときの上限と計算(所得税・住民税)

新旧の生命保険料控除の上限と計算(所得税・住民税)2023年(令和5年)~2024年(令和6年)

新旧の契約が混在している場合は次のように計算します。

新(あるいは旧)生命保険料または新(あるいは旧)個人年金保険料は、生命保険料・個人年金保険料のそれぞれにつき、次のいずれかを選択して上限となる計算をします。

適用する生命保険料控除 保険料控除額
新契約のみ生命保険料控除を適用 新制度で計算した控除額
旧契約のみ生命保険料控除を適用 旧制度で計算した控除額
新旧の生命保険料控除を適用 新旧制度で計算した控除額の合計(※4万円限度)

混在している場合も含めて合計額が12万円を超えているときには、生命保険料控除額は所得税12万円が上限です。

新旧の生命保険料控除を比較すると下記のようになります。

  • 新生命保険料控除 3種類(1控除あたり最高4万円)あり上限額は12万円
  • 旧生命保険料控除 2種類(1控除あたり最高5万円)あり上限額は10万円

新旧の保険契約の両方がある場合、次の3つの選択肢があります。

  • 新契約にかかる控除額
  • 旧契約にかかる控除額
  • 新契約にかかる控除額+旧契約にかかる控除額

いずれの場合も、すべてを合算したトータルの控除限度額は、所得税が12万円、住民税が7万円です。

ポイントとして以下を目安にしておくといいでしょう。

  • 旧契約の保険料が年間6万円超 : 旧契約にかかる控除額を選択(控除額の上限は5万円)
  • 旧契約の保険料が年間6万円以下: 新契約にかかる控除額+旧契約にかかる控除額を選択(控除額の上限は4万円)。

医療保険など第三分野の保険が増えてきたこともあり、上限額が決まっている生命保険料控除では、必ずしも控除仕切れないケースがでてきます。

新たに介護医療保険料控除を作って全体の枠を増やしているのです。

生命保険料控除で住民税の計算は所得税と違うのか?

生命保険料控除の計算において住民税の場合でも基本的な考え方は所得税と変わりません。

  • 旧制度適用契約の控除額の合計のみで控除
  • 新制度適用契約の控除額の合計のみで控除
  • 旧制度適用契約と新制度適用契約の控除額の合計で控除

先ほどと同じ手順ですが、覚えておきたいことが一つあります。それは各控除の総額の上限です。所得税の場合、旧制度で上限額は10万円、新制度で12万円でした。

ところが住民税の場合、新制度でも旧制度でも上限額は7万円のままですので間違えないようにしてください。

契約者≠保険料支払者(保険料負担者・口座名義人)のときの生命保険料控除

2023年(令和5年)~2024年(令和6年)契約者と保険料支払者(保険料負担者・口座名義人)が違う場合、生命保険料控除は?

死亡保険の生命保険契約には、「保険契約者」「被保険者(保険の対象になっている人)」「保険金受取人」を指定して契約します。

生命保険料控除で複雑になるのは、保険契約者が必ずしも保険料支払者(保険料負担者・口座名義人)と同一になっていないことがあることです。

保険料負担者が契約者本人ではなく、契約者からみて夫や妻、親(父母)、子(契約者が高齢なケース)などのときがあります。

具体的には銀行口座名義人がこれらの人になることで、契約者と異なるケースがあります。

まずは生命保険料控除対象の要件を確認しましょう。

本人以外の配偶者や家族の契約でも生命保険料控除の対象?

生命保険料控除の具体的な要件としては、この控除を使う対象者からの関係ですべての保険金、給付金等の受取人が本人又はその配偶者、その他の親族である生命保険契約であることです。

生命保険は一般的に本人や配偶者、子供、親子間もしくは兄弟姉妹との間の契約です。

そう考えるとたいていの契約は生命保険料控除に関係あるのです。

問題は「誰が保険料を支払っているか」です。

扶養されている配偶者の生命保険料の口座名義人(支払者)が夫のケース

生命保険料控除の対象は、該当する生命保険契約において、保険料の払込みをする者又はその配偶者その他の親族とするものなどを指します。

つまり早い話が契約者について指定はされていないのです。

そのためこのケースであれば保険料を負担している夫の生命保険料控除にすることができます。

妻は夫に扶養されていて税金を支払っていないのであれば、生命保険料控除で所得税・住民税が有利になりませんから、夫が使った方がいいわけです。

参考 国税庁 妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除

契約者≠保険料支払者(保険料負担者・口座名義人)の場合の注意点

当記事は生命保険料控除の話ですから、保険料負担にかかる税金の話です。

但し特に死亡保険の場合、契約者・被保険者(保険の対象者)・保険金受取人が誰になっているかで死亡保険金、つまり保険会社からお金を受け取るときの税金の取り扱いも変わります。

相続税の取り扱いになれば課税されることは少なくなりますが、所得税扱いになれば税制が違ってきます。

贈与税の扱いになる契約形態ならちょっと問題です。

これらを理解していて、契約者と異なるもの(夫や妻など配偶者、親、子など)を口座名義人にしているならいいのですが、そうでない場合は今一度確認しておいてください。

保険料を負担している本人またはその家族が保険金の受取人になっている保険契約ならOKです。

本人またはその家族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)が対象です。

確定申告や年末調整に必要な書類や用紙(生命保険料控除申告書、保険料控除証明書)

確定申告・年末調整と生命保険料控除2023年(令和5年)~2024年(令和6年)

生命保険料控除は会社員や公務員なら多くの人は年末調整、自営業なら確定申告になります。必要書類は生命保険料控除証明書です。

保険契約ごとに別々に葉書で郵送されてきます。毎年10月上旬くらいの時期になります。

年末調整や確定申告では下記の書類に保険料控除証明書を添付して手続きします。

  • 年末調整 平成○年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書
  • 確定申告 平成○年分の確定申告書AもしくはB

生命保険料控除証明書の見方や再発行、電子交付

生命保険料控除証明書の見方は?再発行できる?電子交付2023年(令和5年)~2024年(令和6年)

生命保険料控除は、毎年必ず郵送されてきますが、紛失した場合には再発行してもらうことが可能です。

契約している保険会社等(生保・損保・共済)に連絡すればすぐに郵送してくれます。

生命保険料控除の見方(証明額と申告額)

生命保険料控除証明書の見方ですが、通常は金額が2つ記入されています。

10月に郵送されてきますので、一つは9月までに支払った証明額です。

もう一つは残り3ヶ月つまり1年間保険料を支払った場合の申告額です。

証明額と申告額が記載されていますが、生命保険料控除として記載するのは申告額を使います。

生命保険を解約した場合の生命保険料控除の取り扱い

生命保険の契約を年の途中で解約した場合であっても、解約まで支払った保険料は生命保険料控除の対象になります。

その分は忘れないように申告してください。

生命保険料控除の電子交付

ハガキで郵送が当たり前だった保険料控除証明書も電子交付ができるようになってきています。

保険会社も自社のHP上で案内をしていますが、QRコードで読み取ったものを印刷したり、使い勝手が広がってきています。

今後は保険料控除証明書も電子化が進むと、ハガキでの郵送は減ってくるかもしれません。

「加入先の保険会社名+電子的控除証明書等」などで検索してみてください。詳細は下記の記事を参考に。

生命保険料控除と生命保険、医療保険の見直し・加入

生命保険料控除 2023年(令和5年)~2024年(令和6年)

ここまで見てきたように生命保険、介護・医療保険、個人年金保険の加入時期によって保険料控除の金額が違います。

新しい生命保険料控除では種類を増やして一つ当たりの控除額を減らしました。

総合的には多くの種類を加入することで保険料控除できる金額が多くなります。

しかし個人年金保険などは低金利に影響もあり、長期間低利で固定する商品にあまり魅力がありません。保険料控除についてはこうした点も覚えておきましょう。

既存の保険を見直して新たに加入する場合には保険料控除も変わってくることを考慮して行うようにしてください。

生命保険料控除の今後の改正の動向

生命保険料控除の改正の動向

令和6年度税制改正大綱にて、生命保険料控除の改正について触れられています。

2012年1月1日以降の保険契約(この記事で言う新契約)について、拡充するものです。

具体的には、一般の生命保険料控除の限度額を23歳未満の扶養親族がある場合、現在の4万円から6万円となっています。

介護医療保険料控除および個人年金保険料控除は4万円のまま、3つの合計12万円限度ということも同じです。

令和7年度税制改正大綱で決定するようなので、まだ先になりますが該当する扶養親族がいる場合には家計に影響します。

まとめ

生命保険や共済契約は加入者が多いので、関係ある人が多いのが特徴です。

保険に加入する際に、生命保険料控除のことまで考えていないと思いますが、契約の加入時期によって生命保険料控除の控除額の上限や計算が変わります。

契約者や保険料負担者が誰かというところにも注意して必要があれば変更しましょう。

生命保険料控除の制度を理解して払いすぎた税金を有利なかたちで取り戻しましょう。

記事内でも追記・解説した電子的控除証明書の動向にも注目してください。

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ライター紹介 ライター一覧

平野 敦之

平野 敦之

ひらの あつし

平野FP事務所代表。(CFP ®・1級FP技能士・宅地建物取引士・2級DCプランナー・住宅ローンアドバイザー)。東京都出身。大学卒業後に証券会社、損害保険会社等で実務を経験した後1998年に独立。

・個人のライフプラン、お金の悩みやお困りごとのサポート。
・法人の経営者のお金の悩み、営業を支援。

ファイナンシャルプランナー歴20年以上。相談業務の他TVやラジオ、新聞、雑誌など直近の10年間で200回以上の取材を受ける。同業であるファイナンシャルプランナーに対しても情報提供の執筆や講演を行う。

講演・セミナー活動も大学での非常勤講師や国民生活センターや行政機関、大手企業や団体など幅広い実績を持つ。総合情報サイトAll Aboutにて2003年よりマネーガイドを務め、15年以上に渡り定期的にマネー情報の発信を実施。その他の媒体も含めてWEB上での執筆記事は600本以上。

「お金の当たり前を、当たり前に。」するために、現場の相談を中心業務と考え活動を続ける。

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